工場省エネ重要ポイント
~ドレン発生の仕組み・コンプレッサシステム管理~

これまでのコラムで工場省エネについて、計5回に渡り取り上げてきましたが、今回はコンプレッサを運転する際に避けられない「ドレン」の仕組みと、その他の抑えておくべき重要なポイントを紹介したいと思います。

圧力露点と大気圧露点について

コンプレッサを運転する際にドレン(水分)はなぜ発生するのでしょうか?それには圧力露点と大気圧露点を考える必要があります。前回のコラムで紹介した通り、空気に含まれている水分は温度によって異なりますが、コンプレッサは空気と一緒に水分も吸込んでおり、圧縮したままの状態(油冷式スクリュコンプレッサ:70~90℃位)で生産ラインに送るとドレンによる弊害(製品不良・生産設備機器損傷など)を引き起こす事となり、大多数の生産工場では、コンプレッサを出た後にドライヤを設置(コンプレッサと一体型も)され、圧縮空気を冷却する事によりドレンを強制的に排出して後工程に送っております。
国内で流通している一般的な冷凍式ドライヤの圧力露点は10℃です。圧力露点10℃とは、圧縮された空気を10℃まで冷やすということです。この10℃まで冷やす事によりドレンが発生します。ドライヤの中で10℃まで強制的に冷やし、そのままの温度で送ってしまうと配管内外で結露が生じ、配管の腐食や、末端機器での故障を招きますので、実際にはコンプレッサから入ってくる暖かい空気と熱交換させ温度を上げて、圧縮空気を送っています。
仮に0.69MPaまで圧縮された空気を10℃に冷やした場合、大気圧露点は-17℃になります。これは10℃の圧縮された空気の中には、大気圧状態で言うと-17℃と同じ水分量を含んでいるという意味になります。

画像提供:コベルコ・コンプレッサ㈱

飽和水蒸気量表について

温度によって空気に含むことが出来る水分量は決まっており、温度が下がることでその空気に含むことが出来る水分量は減少します。こちらの表は大気圧何度の空気の中に、どの程度の水分量が含まれているのかを表しています。

画像提供:コベルコ・コンプレッサ㈱


前のグラフで出ていた大気圧-17℃では1.16g/㎥となっており、これは湿度100%の空気1㎥あたり1.16gの水分量を含んでいるということを意味します。圧縮空気の特性としてドライヤを出た後に、道中で10℃以下にならない限り、空気の中に1.16gの水分は保たれたままになりますが、特に寒冷地でレシーバタンクが外に置いてあったりした場合、冬場に10℃以下になる可能性があり、そうなると空気の中に保たれていた水分が過飽和となり、ドレンとして出てしまいます。
ドライヤで冷却された時はドレンとして排水が出来ますが、ドライヤの後工程で冷却されると配管が結露したり、末端機器に水分が送り込まれたりしてしまい大問題になるので注意が必要です。

それではいったいどれくらいドレンが出るのか計算してみたいと思います。
75kWのコンプレッサを温度30℃・湿度70%の環境で稼働し、ドライヤで10℃に冷却した際のドレンの量を見てみます。
上の表から30℃の時の水分量30.3gに、湿度の0.7を掛け、ドライヤで冷却される10℃の時の水分量である1.16を引きます。あとはコンプレッサの能力と運転時間を掛けるとドレンの量が計算されます。
(30.3 x 0.7 -1.16) x 12.3㎥/min x 60 x 12Hr/day ≒ 177,600g(cc)/day
<コンプレッサ:12.3㎥/min、0.69MPa、吸込空気:温度30℃・湿度70%、出口:冷凍式ドライヤにて10℃(圧力下)冷却>
これはドラム缶1本弱に相当する量になります。これほどの量のドレンが発生するので、もし工場稼働前にドライヤが動いていないなどの不具合があった場合には、コンプレッサを稼働してはなりません。

その他の重要ポイント

①ライン圧力制御について
例えばA号機と、B号機(インバータ機)2台で運用しており、レシーバタンクで決められた圧力を保持しないと、先の工程で圧力的に問題が起きるという場合、A号機はコンプレッサとレシーバタンクの間のフィルタの目詰まりなどの差圧を最初から最大で見込んで設定していることが多いです。仮にレシーバタンクの圧力を0.59MPaで保つ必要がある場合、最大圧損の0.09MPaを見込み、A号機を0.68MPaで運転するということになります。この場合、レシーバタンクで保つ必要がある圧力0.59MPaという情報をB号機(インバータ機)に入力すると、B号機(インバータ機)は自動的に現在圧損0.05MPaプラスの0.64MPaで運転することが可能です。運転圧が低いほど省エネになるので、これも重要なポイントとなります。

画像提供:コベルコ・コンプレッサ㈱


②コンプレッサ室内換気について
次にコンプレッサ室の換気について見てみたいと思います。吸排気が十分でなかった場合、モータが焼損したり、ドアが開き難いといった問題が起きることがあります。
この現象は、排気量に対して空気取り入れ口面積が狭すぎる為に起こっており、室内が負圧になり過ぎないように空気取り入れ口面積はコンプレッサ室内の流速を2m/sec以下となるように設計する必要があります。12㎥/minのコンプレッサを運転しており、仮に150㎥/minの換気量の場合、1.35㎡の空気取り入れ口面積を設ける必要があります。詳しくはこちらの計算式をご覧ください。

画像提供:コベルコ・コンプレッサ㈱


③騒音・振動規制法
7.5kW以上のコンプレッサは騒音・振動規制法の対象で、設置する際には、30日前までに市区町村に届け出しなければなりません。この法律ですが、2022年12月から規制緩和の動きがあり、2023年4月より環境省の型式指定を受けたスクリュコンプレッサであれば振動規制法の届出は不要となりました。(騒音規制法には引き続き該当します。)

IoTクラウドサービス

コンプレッサも今やIoTクラウドの時代になっており、コベルコ・コンプレッサ様ではIoTサービスの提供もしています。コンプレッサがネットに繋がる環境にあれば、スマートフォン、パソコン上で常に稼働状況を監視することが出来ます。万が一トラブルなどがあれば、メールでの通知も可能ですし、データも蓄積されているので、日報・月報の作成も容易になります。IoTクラウドサービスはお客様のご了解をもとに結ばせて頂いているサービスで、お客様からご了解を頂ければコベルコ・コンプレッサ様でもコンプレッサの稼働を確認することも可能となります。それにより従来ではトラブルが発生した際に、電話での受付を行い、現地に向かった際に部品が足りないということもありましたが、クラウドサービスにより、事前にデータが確認出来ますので、適切な部品の用意などを迅速に行うことが出来ます。またグラフなどでデータの見える化が出来ることで、最適な運転方法を検討ができ、省エネ化を実現することも出来ます。

画像提供:コベルコ・コンプレッサ㈱


工場の電力の約25%を消費しているコンプレッサの運転方法を見直すことは工場省エネを実現する上で非常に重要です。
今回までで計6回に渡り、コンプレッサの省エネ化について、紹介してきましたが、全てを実践するには時間もかかりますので、まずは現状把握から始めては如何でしょうか?
コベルコ・コンプレッサ様では、コンプレッサの稼働状況測定・診断を含む省エネコンサルティングを展開されており、これまでに累計9,500件以上の測定・診断の実績があります。
ご興味ありましたら、お気軽にお問合せください。

記事制作協力:コベルコ・コンプレッサ㈱

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