人手不足を解決する、
金型交換の自動化・省力化 後編

前回のコラムの通り、プラスチック成形工場で手間と時間のかかっている金型交換の自動化・省略化は、労働環境改善や人手不足解消に有効な打ち手となります。
今回は金型交換装置を用いた横段取りの、具体的な効果を紹介します。まだ前回コラムを読まれてない方はこちらからご覧ください。
人手不足を解決する、金型交換の自動化・省力化 前編

横段取りの具体的な効果について

1つ目の効果は、段取り時間の短縮・工数削減です。
以下は金型交換の作業時間と総工数の一例を示した表で、上から外段取り、真ん中が内取り、下が外段取りと内段取りの合計となっており、表の左側が金型交換装置の導入前、右側が導入後を示しています。
こちらの例の通り、金型交換装置の導入によって、成形機の停止時間は30分から11分へと約1/3に減少し、総工数は68分から32分へと約半減させるなどの大きな効果があります。

画像提供:ニチエツ㈱


2つ目の効果は、現場の働きやすさ向上です。
先ほどと同じ表によれば、金型交換装置導入前の外段取り時間は16分、成形機を止めてから行なう内段取りの時間は52分となっておりますが、金型交換装置導入後は、外段取り時間が21分と、若干増えているものの、内段取りは11分と大幅に減少しています。
内段取りは機械が止まってからしかできないため、機械の都合に合わせた作業で、外段取りは機械の状況に影響されない、人の都合に合わせた作業と言えます。
金型交換装置導入によって、内段取りの時間が減るので、人の働きやすさに大きく寄与します。

画像提供:ニチエツ㈱


ここまでの稼働率改善と働きやすさ向上について、より効果をイメージしていただくため、簡単なタイムチャートを使ってご説明いたします。
例えば金型交換装置の導入前、このA3号機という成形機で、朝8時から夜8時までの間に、部品A・部品B・部品Cを生産したいとします。
この時、部品Aの生産の後、すぐに段取りをして部品Bを量産し、そしてすぐに段取りをして部品Cを量産するというのが理想です。しかし、これは現実的ではありません。
なぜなら人員は限られていて、多数の仕事があり、成形機はこれだけではなく、休憩時間も必要だからです。あくまで一例ですが、部品Aを成形後、しばらくしてから昼前に金型を下ろし、昼過ぎに部品Bの金型を載せて生産した、しかし時間内に部品Cの量産は間に合わず、夜間のシフトに先送りした、というような状況が多々発生しているかと思います。

このような場合、稼働率は58%程度と低く、対して金型交換装置を導入すれば、部品Aの量産の後、すぐに内段取りをして、Bを打つことが可能となります。これは作業の大部分を占める外段取りを事前に行なうことができるからです。
続いてCの外段取りも事前に行なっておくことで、Cの量産もほどなく始めることができ、稼働率90%達成も不可能ではありません。
この部品Bの外段取りは、例えば8時の時間帯が忙しければ、別の時間帯でもよく、Cの外段取りも、13時台が忙しければ、別の時間帯に実施しても構いません。
この例から金型交換装置を導入すれば、非常に働きやすく、極めて高い稼働率を実現できることがイメージいただけると思います。

画像提供:ニチエツ㈱


効果の3つ目は、小ロット生産への対応です。
金型交換の工数が減ると、人員を増やすことなく段取り回数の増加が可能となり、例えば段取り替え回数を倍に増やしながら、稼働率を20%向上させ、在庫量を40%削減するといった生産計画を組むことが可能となります。
この小ロット生産は非常に効果が大きいので、メリット・デメリットについて、簡単にご説明いたします。

メリットは先ほど説明した在庫・在庫スペースの削減です。ダイレクト生産に必要だった大量の箱や、大量の樹脂材料を用意する必要がなくなることから、梱包資材削減・材料在庫削減が可能となります。
またフレキシブルな生産により納期が短縮され、在庫の滞留も減って品質向上にも有効です。結果キャッシュフロー改善や、顧客満足度向上、受注拡大につながります。

デメリットとしては、一般的には稼働率や材料効率の悪化が挙げられますが、金型交換装置を導入すれば稼働率は向上します。
材料効率悪化は起こり得ますが、極端な小ロット生産をしない限り、大きな問題にはならず、不良削減や捨てショット削減などの改善活動で十分カバーできる範囲となります。
このように小ロット生産は、QCDや工場環境、キャッシュフロー、顧客満足の改善に非常に有効です。

画像提供:ニチエツ㈱


効果の4つ目は、改善加速と立ち合い期間短縮です。
皆様の工場では、量産と並行して新型立ち上げや、改善活動のためのトライをされていると思いますが、トライの時間がなかなか取れない、あるいはトライの結果、寸法が外れていてテストのために何度も金型を乗せ降ろしして、本当に苦労した、というようなご経験があると思います。
ですが金型交換装置を導入して、金型交換装置用に金型をセットし、外段取りさえしておけば、30分などといった隙間時間でも、金型を交換してトライすることが可能です。
またトライ後、寸法測定などをしている間に、すぐに直前の金型の量産を再開し、測定後必要であれば台車上に退避させていた金型のテストを再開する、などが可能となるため、改善加速と、立ち上げ期間短縮に大きな効果を発揮します。

効果の5つ目は、段取り後不具合の予防です。
これはクレーンを使った縦段取りによって、固定型と稼働型の位置ずれが発生することが問題の主要因になっている場合があります。
横段取りはこのようなズレが発生しにくいため、品質安定と金型長寿命化が期待できます。

効果のまとめ

ここまでご紹介した5つの効果をまとめさせて頂きます。
金型交換装置を導入いただくことで、稼働率向上、働きやすさの改善、小ロット化の推進、改善活動の加速、品質向上が可能になります。
もちろん金型交換装置を導入すれば、全て解決という単純な話ではありませんが、生産だけで手一杯の現場の負担を減らし、改善を進めていく工数を作り出せることはとても有意義だと考えます。

生産計画に入っていない時間にも生産が行なえるようになってくるため、生産余力が向上・視える化され、営業と現場の信頼関係強化にもつながります。
また、工場に投資をして現場をより良くしていこうという経営の意志は、経営と現場の信頼関係強化にもつながります。これらの全ては顧客満足・現場の働きがい向上、離職率の低下につながり、さらに改善の好循環が得られます。このように金型交換装置は、生産と改善を止めず、働きやすく高収益な成形工場づくりに貢献します。

画像提供:ニチエツ㈱


省人化の為に効果的な改善を

人手不足が続く今、成形工場には効果的な改善が必要です。現場では特に金型交換関連に工数が多く掛かっています。
段取り改善は金型交換工数削減だけでなく、生産性向上や、働きやすい環境づくり、品質向上、小ロット化、改善活動の加速にも有効です。
ニチエツ㈱は、成形工場出身者が大半で、成形や現場への理解が深い会社です。金型交換装置や、その他の工場省人化に関して、ご質問やご要望等がありましたら、お気軽にお問合せください。

記事制作協力:ニチエツ㈱

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化学品専門商社:長瀬産業グループのメンバーを中心に構成。
専門領域であるプラスチックを基軸に、サステナビリティを実現するためのソリューションと、業界を横断した情報を展開する。