公開日:2023/07/31

最終更新日:2023/07/31

「樹脂判別ハンディセンサー」を実現させた技術

2023年3月に発売を開始したリコーの樹脂判別ハンディセンサー「RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150」は、小型で軽量、無線接続にて、誰でも簡単にその場で樹脂の判別が行なうことができます。今回は樹脂判別ハンディセンサーの技術紹介をさせて頂きます。

「樹脂判別ハンディセンサー」の概要

樹脂判別の原理は、近赤外線を用いた反射型の分光方式です。センサーから近赤外線を照射し、樹脂サンプル内部からの拡散反射光を取得することで、樹脂の判別を行ないます。
センサーは近赤外線を照射するハロゲンランプ、樹脂からの拡散反射光のスペクトルを取得するための分光ユニット、それらを駆動する制御回路、スマートデバイスとの通信を行う通信回路等を含む基板、バッテリー等から構成されています。

画像提供:株式会社リコー

センサーのサイズは長さ154mm、高さ75mm、幅50mm、重量は約285gで片手で使用できるハンディサイズを実現しました。センサーはスマートフォンとBluetoothで無線接続して使用し、樹脂判別の処理は専用のスマホアプリで行ないます。

画像提供:株式会社リコー

「樹脂判別ハンディセンサー」の特長

樹脂サンプルをセンサーに接触させ、測定ボタンを押すと近赤外線が照射され、樹脂からの拡散反射光のスペクトルを取得します。取得したスペクトルデータは、スマートフォンへ転送されて専用アプリでスペクトル処理を実施し、登録されている基準樹脂データとマッチングし、判別を行ないます。
判別時間は約2秒、判別結果はアプリ画面に表示されるとともに音声でも出力されます。結果表示は樹脂の判別結果だけでなく、取得したスペクトルデータも表示されます。

画像提供:株式会社リコー

初期登録されている基準樹脂データはPP、PE、PVC、PS、PET、ABS、PC、PA、PMMA、POM、PBT、PETG、PLAの13樹脂で、ユーザー登録機能で樹脂の追加が可能となっています。また、本センサーは混合樹脂の比率算出が可能で、例えばPP/PEの混合樹脂に対して±10%以内の精度で混合比率を算出することができます。※弊社のPP、PE基準樹脂にて評価
その他にサンプルの写真を判別結果と紐づけして保存したり、データをエクスポートしてパソコンで分析することも可能です。一方、近赤外分光方式では、黒色の樹脂やアルミ蒸着付きフィルム等は判別ができません。

リコー独自の「分光ユニット」

分光ユニットは主に、入射スリット・凹面回折格子・MEMSミラー・出射スリット・InGaAs単素子PDから構成されています。
一般的な小型の近赤外線分光器は、凹面回折格子とInGaAsアレイセンサを組み合わせた構成が多いですが、本センサーの特徴は「MEMSミラー」を用いて、アレイセンサではなく「InGaAs単素子PD」で分光スペクトルを取得可能にしたことです。これにより高価なInGaAsアレイセンサを使用する必要がなくなり、大幅な低コスト化・小型化を可能にします。MEMSミラーと凹面回折格子は、弊社の画像機器や車載機器向けに培った技術を応用展開して実現しました。

画像提供:株式会社リコー

樹脂サンプルからの拡散反射光は、入射スリットから凹面回折格子へ導かれて分光され、分光された光はMEMSミラーで反射されるとともに出射スリット上で走査されます。図中のλ1、λ2、λ3は波長の違いを表しており、MEMSミラーの角度によって出射スリットを通過する波長が異なるため、MEMSミラーを走査させながらInGaAs単素子PDの出力信号を時系列で取得することにより、樹脂の分光スペクトルデータを得ることができます。

「樹脂判別ハンディセンサー」の効果

MEMSミラーと凹面回折格子を使ったリコー独自の分光技術により、小型・軽量・低価格な樹脂判別ハンディセンサーを実現しました。このセンサーを使えば、これまで熟練者にしかできなかった廃プラの分別が誰でも簡単にできるようになります。※黒いものなど判別できないものもあります
多くのお客様に、このセンサーをお試しいただいて樹脂判別を実施することにより、廃プラリサイクル率の向上、焼却処分される廃プラの削減、廃プラ処理費用の削減、CO2排出量の削減、樹脂の外部分析委託費用の削減など、さまざまな効果が確認できています。またセンサーを使った海洋プラごみの分別など、子供の教育用途への引き合いも非常に多くなっています。
次回は樹脂判別ハンディセンサーの効果的な活用事例などを紹介させていただきます。

プラスチックリサイクルの課題解決に言及した前回の記事も是非ご覧ください。
『誰でも、その場で、プラスチックを分類、「樹脂判別ハンディセンサー」が見通す、資源循環型社会の未来像』

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野口 英剛(のぐち ひでたか)

株式会社リコー 環境・エネルギー事業センター
循環型ソリューション開発室
開発3グループ グループリーダー

https://industry.ricoh.com/handy-plastic-sensor