工業生産の隆盛と成形機の進化

射出成形は、溶融させたプラスチックを高圧で金型へ射出し、金型を冷却してプラスチックを固化し、成形品をつくる方法で、プラスチックで製品や部品をつくる場合に、最も多く用いられています。100年以上の歴史があり、工業生産の隆盛とともに機械としての性能は進化していき、油圧駆動式アクチュエータやコンピュータによる制御を導入した「油圧式射出成形機」が普及していきました。その後、さまざまな製品の高性能化や小型化が一層進み、内部に搭載される大量のプラスチック部品にも高精度、薄肉小型軽量の要求が強まってくると、油圧機では動作面での安定性や応答性に限界が出てきました。こうした要求や課題に対し、電動サーボモータ駆動式の 「電動射出成形機」の開発は進められていき、現在では小型~中型の射出成形機は、電動機が主流となっています。

油圧から電動へ、驚きの省エネ効果

電動射出成形機は、精密動作の制御に適しているとともに、エネルギー効率が良いことも特徴です。住友重機械工業社の算出によると、同じクラス(型締:350トン)の油圧機と最新の電動機を比較すると、電動式の年間消費電力は約1/4であるというデータがあります※。つまり、油圧から電動に切り替えることで省エネとなり、CO2の排出(環境負荷)を削減する効果があるのです。 そもそも油圧式と電動式とでは、駆動系とコンポーネントの違いから消費電力に差があるのですが、住友重機械工業では、成形現場の生産性向上を追求し続け、型締力の低減、樹脂充填圧力の低減が可能な電動機を開発し、その結果、油圧機比約1/4にまで削減することができました。
※住友重機械工業にて本測定に用いた成形機と設定条件下での結果となります。

住友重機械工業.「20220519_オンラインセミナーVol1_カーボンニュートラルの実現へ_講演資料.pdf],出典_2023.2.20

生産性を限りなく高める「Zero-molding」

生産数量を上げるため、サイクルタイムを短縮すると品質が低下したり、品質維持のため、金型をメンテナンスするために機械を停止せざるを得なかったり、生産性向上には反動をともなうことが多々あります。現場では工夫し、時に無理を生じさせつつ、日々の反動に対処しています。 住友重機械工業の電動射出成形機には、現場で常に発生する、不良(Defects)、無駄(Loss)、面倒(Faults)の、3つの不安定要素をゼロに近づけて生産性を限りなく高める「Zero-molding」という生産プロセスが具現化されています。以下に特徴的な3つの機能をご紹介します。

①MCM(Minimum Clamping Molding)
金型が全面タッチした時の最小型締力を検出し、これにキャビティの投影面積と型内圧から算出される必要型締力を加え、最小限の型締力で成形する型締システム
②FFC(Flow Front Control)
V-P切替前後の射出速度と圧力を高応答でコントロールすることで、フローフロントを制御し樹脂の粘弾性を利用して、低圧で樹脂を完全充填する射出システム
③SPS(Simple Process Setting)
操作画面のボタン配置をオペレータの作業の流れに対応させ、頻繁な画面切替を省略することで、ミスやモレのないオペレーションを実現するインターフェイス

樹脂充填が安定し、パーティング面からのガス抜けも良くなり、金型メンテも軽減すれば、反動なく生産性を向上させることができます。また必要型締力が下がり、使用成形機のサイズダウンができれば、消費電力をさらに抑えることにもつながります。

住友重機械工業.「射出成形機」,出典_2023.2.20.
https://www.shi.co.jp/products/machinery/injection/index.html

さまざまなサステナ成形アプローチ

住友重機械工業の電動射出成形機には、今回ご紹介した以外にも、樹脂ヤケの発生抑制(不良低減)・ヒーター設定温度の低減(省エネ)につながるスクリュー・シリンダーや、工程時間短縮・プラスチック廃棄量削減につながる自動パージ機能など、多様なソリューションがあります。
これらは個別のソリューションとしても十分効果的ですが、成形を行なう際に必須となる金型や付帯設備などにおけるサステナブルソリューションとの掛け合わせにより、更に相乗的に効果を発揮していきます。
plaplatでは、射出成形をサステナブルにするさまざまなソリューションや、それを活用した取り組みをご紹介していきたいと思います。

記事制作協力:住友重機械工業㈱