マグネシウムを射出成形するメリット

金属であるマグネシウムでも射出成形ができることをご存じでしょうか?マグネシウムは動物や植物の生命活動を支える必須元素のひとつであり、海水中にも含まれる身近な物質です。サプリメントや胃薬の原料、アルミの添加剤等様々なことに使われていますが、今回は、構造材としての「マグネシウム合金」と、その射出成形についてご紹介します。

マグネシウムを使うメリットって?

多くのメリットがありますが、最近特に注目されているのは、鉄と同程度の強度を保ちつつ軽量化できることです。

たとえば、電気自動車は搭載する電子機器やバッテリーの重量の都合上、全体が重くなりがちですが、比重が1.7g/cm3で、鉄(比重7.9g/cm3)の約1/4であるマグネシウムを構造材などに使い、更にそれを精密成形して部品点数や溶接の工程を減らすことで、軽量化が図れます。

他には、電子機器から発せられる電磁波を遮断する電磁波シールド性、機器内部の熱を効率的に外へ逃がせる放熱特性、また振動を吸収する特長もあります。
他にも、素材としてのリサイクルが可能であり、リサイクル時の使用エネルギー量が、新材生産の4%程度に抑えられるなどの特長もあります。

実用金属中最軽量です

実用金属中最大の振動吸収性を有します

比強度、比剛性に優れています

日本マグネシウム協会 Webサイトより引用

マグネシウムの射出成形とは?

日本製鋼所のマグネシウム射出成形機では、「THIXOMOLDING®(チクソモールディング)」という工法を採用しています。
チクソモールディングでは、インゴットを削ってペレット状にしたマグネシウムをホッパから投入し、シリンダ内で加熱して半溶融状態にした上で、大気に触れることなく金型内に射出します。材料がペレット状であり、かつホッパから投入する点は、かなりプラスチック成形に近いと言えます。

マグネシウムの成形方法としては「ダイカスト」がよく知られていますが、こちらはインゴットを溶解炉で完全に溶融してから金型内に射出します。
溶解炉内の溶湯(溶けた材料)が発火するのを防止するために防燃ガスを使う必要がありますが、欧州諸国ではこのガスが使用禁止となり、代替ガスも有害である等の理由で、この工法の使用が難しくなりつつあります。
また、作業環境も劣悪になりやすいことから、徐々にチクソモールディング機への切り替えが進みつつあります。

チクソモールディング機 構造図/画像提供:(株)日本製鋼所

プラスチックの射出成形機との違いは?

☑ 基本的な構造は、プラスチック用射出成形機と同じです。ただし、プラスチック用の射出成形機とマグネシウム用の射出成形機は兼用できません。

☑ プラスチック用射出成形機は材料を200~300℃弱で加熱しますが、マグネシウム射出成形機は600℃程度で加熱するため、金型やスクリュ・シリンダの素材が異なります。日本製鋼所では、この高温領域に耐えうるスクリュ・シリンダを社内で開発、製造しています。

☑ 同じサイズの成形品をプラスチック用射出成形機、マグネシウム用射出成形機で成形しようとする場合、マグネシウム成形機の方がマシンサイズは大きくなります。これは、マグネシウムを成形する際の射出速度と射出圧力が高く、より型締力を必要とするためです。

JLM3000-MGⅡeL
(型締力3,000トン)

このような材料を投入します

画像提供:(株)日本製鋼所

どんなものが成形できるの?

プラスチックの射出成形と重複する部分もありますが、マグネシウムの射出成形品には、「比剛性・比強度の面で優秀」「優れた寸法安定性」「電磁波遮蔽性」「放熱性」「振動吸収性」といった多数のメリットがあることから、少しずつ採用が広がっています。

以下は型締めトン数別の、マグネシウムの射出成形事例です。
・ 280t機 :デジタルカメラ筐体、ドローン用部品、車載ディスプレイ筐体等。 概ね手のひらサイズのもの。
・ 650t機 :ノートPC筐体、自動車部品、バイク部品等。
・ 850t機 :自動車部品、バイク部品、ECUケースの場合は2個取りでの成形が可能。
・1300t機:自動車部品のうち、長手で800mm程度の車載ディスプレイ筐体、HUD筐体等比較的大きなもの。
・3000t機:自動車部品のうち、Pillar to Pillar Displayと呼ばれる、1500mm程度の車載ディスプレイ筐体。
 ※ECU :Electronic Control Unit(エレクトロニックコントロールユニット)
 ※HUD:Head-Up Display(ヘッドアップディスプレイ)

量産実績がある製品群(280t~650t機)

HUD 筐体 (1300t機)

ディスプレイ 筐体 (1300t機)

画像提供:(株)日本製鋼所


新たに金属部品の製造を検討しているという方は、是非一度、マグネシウムの射出成形をご検討されてみてはいかがでしょうか?
お気軽にお問い合わせください。
※THIXOMOLDINGは株式会社日本製鋼所の登録商標です。

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  1. 1. 全電動射出成形機の進化
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  4. 4. 射出成形機のIoT ~『遠隔操作』と『見える化』~
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鎌田 祐実子

<所属>(株)日本製鋼所 成形機事業部 営業部 DM営業グループ
<専門分野>マグネシウム射出成形機、中空成形機
国内及び海外市場におけるマグネシウム射出成形機、中空成形機、周辺機器及びシステムの販売を行っております。