PCR材の原資
PCR材を生産するには、使用済の製品を市場から回収する必要があります。
日本においては「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法、1998年12月施行)」によりエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目の回収が義務付けられています。 これら4品目の再商品化率(商品に材料として再投入された比率)は2021年度において70%以上という極めて高い実績を誇っています。
自動車は「使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法、2003年1月施行)」で廃車手続きを法制化していますが、引取、解体実績は公開されているものの、材料リサイクルの実績については情報がありません。
電子レンジや炊飯器、掃除機、ノートパソコン、カメラなどを対象とする「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法、2013年4月施行)」が制定され、2018年度には120,000トンもの製品が回収されていますが、再資源化の内訳は59.7%が金属類であり、熱回収されたプラスチックが23.7%、再資源化されたプラスチックはわずか3.9%でした。
オフィス利用の複写機・複合機については、(一社)ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)が、9か所の交換センターと34か所の回収デポを全国に配置し、加盟団体が回収するシステムを構築しています。
画像提供:P.M.アドバイザー
PCR材の製造工程
PCR材は市場で使われ、廃棄された製品が材料ソース(原資)になっています。
プラスチックは包装材や一般家庭用品、一般家電、事務機製品、自動車などさまざまな分野で利用され、また使われている材質も多種多様です。
一方リサイクルの視点では、これら多種多様なプラスチック材料が混在したままでは品質の良いリサイクルプラスチックに生まれ変わらせることは困難です。
市場から製品を回収する場合、この多種多様なプラスチックの回収、材質ごとの分類・分別、異物除去などが不可欠です。
表は、特許 4,365,984号(USP 6,864,294 B2)明細書に記載されている、リサイクル材処理に関わる工程を整理したものです。 この特許が出願された1999年当時は、手解体の際に同時に材質選別を行なうことが主流でした。
現在では、例えばパナソニック様が発表されている「近赤外分光法」を用いた選別機のように、複数の材質が混在したプラスチック群を適切に選別する方法も開発されており、材質選別・分類の迅速化と高精度化が進んでいます。
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PCR材の品質管理
PCR材として人気のPC(ポリカーボネート)ですが、従来はCD・DVDなどのDISKと、ガロンボトル(水ボトル)が原資として利用されてきました。近年はDISKの消費、回収量が減少しており、自動車のヘッドランプを原資として取り扱う事例が増えています。
DISKにしろヘッドランプにしろ、製品には表面コーティングが施されており、PCR材として利用するには、このコーティングの除去が重要になってきます。
特許 4,365,984号(USP 6,864,294 B2)明細書には、ABS樹脂部品にPSラベルを貼付しリサイクルした場合に、アイゾット衝撃値が38.1%減少し、MFRは10.0%増加したとの記載があります。
すなわち経年により分子鎖が短くなることによって流動性が増し、異物が混入することにより分子のつながりが分断され衝撃に弱くなることがわかっています。
廃材の入手にあっては、引張特性や曲げ特性よりも、MFR(流動性)、衝撃強さの規定が最も重要になります。
また、PCのコーティングを除去するにはアルカリ処理を行なうのが一般的です。廃材がPCである場合に廃材の品質を保つためには、処理工程にアルカリ処理が含まれていること、およびアルカリ処理液を除去するための純水処理が含まれていることの確認が重要になります。
世界の主なPCR材に関する規格
廃材の受け入れ基準については当該2者間の契約で管理項目を策定しますが、処理工程の管理について、現在では第三者認証による運用が広まってきています。
リサイクル材に関する第三者認証としては、「UL2809」「R2」「GRS」などがあります。次のコラムからはこれら第三者認証について、認証団体、認証基準などを一つずつ解説していきます。