プラスチックのリサイクル
プラスチックのリサイクルは、「サーマルリサイクル」「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」に分類されます。日本の廃プラスチック総排出量は850万トン(2019年)であり、85%がリサイクルされています。
サーマルリサイクルは、廃プラスチックの焼却による発生する熱エネルギーを回収して再利用する仕組みです。プラスチックは高い発熱量を有することから、エネルギー源として優れています。尚、欧米ではリサイクルの概念に燃焼を含めないため、サーマルリサイクルはリサイクルとして捉えていません。
マテリアルリサイクルでは、廃プラスチックを溶融・成形することで再利用します。しかし、プラスチックは同じ種類のものを回収しないとリサイクルしづらいという根本的な問題をあります。PETボトルは同じ材質で回収できるため、リサイクル技術が最も進んでおり、リサイクル率は86%に達します。
※PETボトルリサイクル推進協議会.「統計データ」,参考_2023.3.9.
https://www.petbottle-rec.gr.jp/data/calculate.html
回収されたPETボトル等の廃プラスチックの一部は、過去には中国やASEAN諸国に輸出されていましたが、2017年以降中国の廃プラスチック輸入禁止や、バーゼル条約の改定などの汚染廃プラスチックの輸出規制により、最近は輸出量が減少しています。
輸出できない廃プラスチックが行き場を失い、国内に滞積して引き取り・焼却処理の価格は上昇しています。
ケミカルリサイクルとは
ケミカルリサイクルでは、廃プラスチックを化学的に分解し、再び材料として利用します。実用化されているPETのケミカルリサイクルでは、エチレングリコールを加えて粗ビスヒドロキシエチルテレフタレートを回収し、精製を経て、溶融重合によりPETに再生します。いったん化学的に分解して再重合することで使用時の汚れ等が完全に除去されます。現在、PETのリサイクルはマテリアルリサイクルのほうが多いですが、今後、ケミカルリサイクルが増加すると予想されます。
廃プラスチックの「ガス化」によるケミカルリサイクルも実用化されています。600~800℃での一段目低温ガス化、1300~1500℃での二段目高温ガス化により合成ガスが製造できます。
昭和電工のプラントでは、廃プラスチックを195トン/日処理でき「アンモニア」を175トン/日製造しています。アネロテック(アメリカ)は、バイオマスの熱分解・触媒反応により「ベンゼン」「トルエン」「キシレン」(BTX)を効率よく製造する技術を開発し、BTX中のパラキシレンをテレフタル酸に変換することで、バイオマス由来のPETが得られます。この触媒技術はプラスチックに適用でき、オレフィン類が生成するため、様々なプラスチックの再生が可能です。
ケミカルリサイクルの新潮流
近年ケミカルリサイクルの新潮流として、「マスバランス方式」を導入したプラスチックリサイクルの製造が注目されています。マスバランス方式は製品の製造プロセスにおいて、ある特性の原料とそうでない原料が混合される場合に、ある特性の原料の投入量に応じて生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法を指します。紙製品、パーム油、電力等でも既に適用されています。
化学業界では、プラスチック製造にマスバランス方式を適用して、バイオマスプラスチックやリサイクルプラスチックが生産されつつあります。
廃プラスチックの熱分解による油化は、1970年代後半から開発が行われ技術としては確立されましたが、多くのエネルギーを必要とし、製造時に発火や爆発のリスクがあることから事業化は容易ではありません。しかし最近では、油化とクラッキングを組合わせたケミカルリサイクル技術の取組みが海外で活発に行われています。この方式では、クローズドループで混合廃プラスチックをケミカルリサイクルできます。
この技術が発展し、広範囲に事業化できれば、プラスチックの完全資源循環が構築できる可能性があります。不足する部分はバイオマス資源からのプラスチック原料の生産で補い、プラスチックの製造を全て再生可能エネルギーでまかなうことで、石油等の化石資源の使用をゼロにすることが可能になります。
画像提供:宇山教授
大阪大学 宇山教授と考える
「プラスチックのこれまでとこれから」全6編+番外編
profile
