プラスチック包装容器の問題
世界中でプラスチックは年間約4億トン生産されており、そのうちの約40%が、包装・容器製品に使用されていると言われています。
プラスチックの包装容器は、軽くて丈夫で水や油にも強く、柔軟性や透明性の選択幅も広く、さまざまな用途に使用されています。私たち自身の生活を思い浮かべると、食料品のほとんどはプラスチック包装容器に入っていて、プラごみを「捨てない」日は無いのではないでしょうか?
冒頭で触れたプラスチック問題は、大量にプラスチック製品がつくられ、わたしたちが生活の中で消費し、廃棄することで起こっています。使用されている量を考えると、今のままプラスチック包装容器を使い続けることは難しいと言えます。
そのため、リサイクル・生分解・バイオマス資源の利用といったアプローチもあるのですが、石油由来プラスチックの使用量を減らすこと(「減プラ」)も解決策の一つとなります。
問題解決のための技術・製品開発
化学品専門商社:長瀬産業グループのナガセプラスチックス㈱は、1975年の創業以来、プラスチック成形材料(ペレット)及びプラスチック包装材料(フィルム・シート・加工品)を取り扱ってきましたが、プラスチック問題を解決する技術・製品の開発の場として、2023年1月26日に大阪市大正区に「環境ソリューション開発センター(ESDC)」をオープンしました。
ESDCでは、プラスチック成形材料の ①製造における環境負荷低減、②減プラを可能にするフィラー高濃度配合 などの技術開発とともに、包装材料に関するノウハウと材料技術を融合した「環境配慮型包材」の開発を行なっています。
「減プラ食品トレイ」開発事例

ESDCで開発された「減プラ食品トレイ」の中から、今回は以下の2点をご紹介します。
①高耐熱PLAトレイ:バイオマスプラであるPLAによる減プラ
コンビニ、スーパーなどで、環境配慮型素材である「PLA(ポリ乳酸)」で作られた食品包装容器を見かけるようになりました。
サラダなどを入れているPLAのトレイは透明性がありますが、耐熱性が低いため電子レンジ加熱には不適です。電子レンジに対応した耐熱PLAトレイもありますが、耐衝撃性をもう少し上げたいところです。
ESDCでは、PLAの耐衝撃性と耐熱性を改良したコンパウンド材料を開発し、その材料を用いたPLAシートを開発しました。結晶化速度も制御したこちらのシートでは、真空成型性も向上することができ、量産性・物性・環境対応が両立したトレイの製造が可能となりました。
②-1 バイオマス炭カルPPトレイ:卵の殻から作られた炭カルフィラーの高濃度配合による減プラ
②-2 炭カル+発泡PPトレイ:炭酸カルシウムフィラー高配合+発泡による減プラ
PP(ポリプロピレン)は、強度・耐薬耐油・耐熱性に優れていることから、電子レンジ調理する食品のトレイに多く使用されています。
PPにフィラーを配合することで、プラスチック使用量の削減に繋がりますが、より高い濃度で配合するには量産性・分散性の両面で課題があります。
ESDCは、独自のフィラー高濃度配合・高分散技術により、その課題を克服し、更に独自のシート加工・設計ノウハウにより、「減プラ」のみならず、「バイオマス」「軽量化」の環境対応要素を取り入れた食品トレイ用PPシートを開発しました。
サステナと実用性を両立させる技術開発
社会や産業がサステナブルへと向かう中、これから新たに生まれてくる製品は、ライフサイクルを通した環境負荷を如何に少なくするか、という課題のもと開発がなされていきます。
一方で、従来からある価値基準が低くなるわけではなく、環境配慮型素材を使用したからといって、製品の安全性が損なわれたり、品質や生産性が低下しては、サステナブルとは言えません。
ある一つの環境配慮型新製品において、素材と加工の開発が一箇所で、一つの環境価値に向かって一気通貫で行なえるとすると、効率的なトライアンドエラーによる製品開発が実現できるのではないでしょうか?
ESDCは、お客様と最適な素材・加工をつなぐ、技術共創の場となることを目指しています。