公開日:2024/01/25

最終更新日:2024/01/23

新たな資源循環創出に貢献する
「高度マテリアルリサイクル研究会」

「難処理プラスチックリサイクル及び農林水産物残渣処理の課題解決」を掲げ、2022年10月に発足した「高度マテリアルリサイクル研究会」(通称:AMRIA)は、現在、21の企業・団体が一体となって、具体的な資源循環の仕組み構築と社会実装を目指した活動を行っています。発足から約1年が経過し、徐々にではありますが様々な成果が出てきています。

企業の工程内廃材を対象とした第1分科会

まず、難処理プラスチック処理分野においては、第1分科会として、企業の工場から排出される包装材料系の産業廃棄物を、マテリアルリサイクルに活用するアプローチから議論をスタートさせました。
研究会発足から約1年が経過し、その多くがサーマルリサイクルされてきたマルチレイヤーフィルムなどの複合素材に関して、高品位マテリアルリサイクル化出来る目途が立ちつつあります。

自治体からの関心度も高く、工業資材や農業資材、物流資材などへの展開も視野に入れ、実証フェーズに突入しました。この取り組みの一部は、環境省「令和5年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 脱炭素型循環経済システム構築促進事業(うち、プラスチック等資源循環システム構築実証事業)に採択されています。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

地域の課題解決を目指す第2分科会

社会全体に目を向けると、人口の都市集中が加速し、地方産業の衰退が顕著となっています。一方でサステナブルを意識したリサイクル製品を作るには、地域ごとで完結させてゆかねばなりません。
近年欧州では環境や社会、人に配慮したエシカル商品が注目されており、日本でもZ世代(1990年代半ば以降~2010年代初期に生まれた世代)を中心に、持続可能な製品に対する意識が醸成されつつあります。

そこで本研究会の第2分科会では「廃材を宝財に」をモットーに、各地域や企業が一体となり付加価値を生む循環の形を模索しました。
その成果の一つが千葉県の落花生殻を用いたプロジェクトです。県内企業の協力によって実現した世界初の折り畳み式スケートボードには、数万円の値がつけられ2024年に販売開始となる見込みです。
千葉県八街市近郊では落花生の栽培が盛んですが、殻はほとんど再利用法がありません。落花生の皮むきは、障がい者・高齢者への就業支援として実施されていることも多く、『落花生の殻を有効利用できないか』という地元企業の声が、環境負荷の低い新素材を探していた地元千葉県のスケートボードのスタートアップの耳に入り、プロジェクトがスタートしました。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

未来を切り拓く「MF式混合溶融機」について

このプロジェクトにおいて、大きな役割を果たしたのは、株式会社放電精密加工研究所が保有する混合溶融機技術です。様々な成型にも耐えられる、異なる材料同士の溶融混練を実現させたことで、廃材の用途展開性が一気に拡大しました。
この装置は、ヒーター等の熱源を使わず、羽根車が高速回転するケーシングの中で物質と物質を衝突させ、物質を微粉化すると共に、内部に水蒸気を発生させることで高温高圧状態を作り出し、異なる材料を瞬時に混合溶融します。瞬間的に加熱することで、熱履歴による物性の低下が抑制され、各種の成型方法に適したリサイクルプラスチックを製造できます。また、プラスチックとバイオマス材や無機物などの材料を混合溶融することで、新たな素材を作ることも可能です。

<装置の主な特長>
・ 多種多様な異なる融点の樹脂材料同士の混合融合が可能
・ バイオマス高充填のバイオマスコンポジット材の製造が可能
・ ヒーターを使わず短時間で混合融合する為、材料が劣化しにくい
・ 溶融時の添加剤は水のみ。高温高圧下の低酸素状態で混合溶融が可能

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

産官学が一体となり社会課題解決を推進

資源循環において、一つの企業や団体だけで解決できる課題は決して多くありません。
産官学が一体となり、あらゆる角度から知見を集約し、日本全体の取組として世に示してゆかねばならないと考えます。しかし、企業や大学、自治体には各々の立場があり、同じ方向を向いて活動することは容易ではありません。
そこで科学技術に関する知見を持ち、地方自治体や大学との結びつきが強い公益法人である全日本科学技術協会(通称:JAREC)を発起人のひとりとして、公正中立な立場で主導する体制で高度マテリアルリサイクル研究会は発足しました。

地域単位での産官学連携のスキームを構築しながら、全国に存在する難処理プラスチック処理および農林水産物由来の廃棄物問題を解決し、そこで生活する人々が誇りを持てる資源循環の仕組みづくりを目指します。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

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齋藤 太郎

<所属>公益財団法人全日本科学技術協会 理事 事業統括部長
<専門分野>産官学連携支援、イノベーション創発活動支援
大手住宅設備メーカーなどを経て現職。高度マテリアルリサイクル研究会の発足に携わり、現在も発起人の一人として活動。