BASFが生み出したPBAT「ecoflex®

本項では、生分解性プラスチックのPBATについて、BASFの「ecoflex®」(エコフレックス®を用いて概略を紹介したいと思います。
BASFのPBATである「エコフレックス®」は、1998年にBASFのポリエステル技術を応用して開発された生分解性機能を持つ「脂肪族/芳香族コポリエステル」です。
アジピン酸、テレフタル酸および1.4-ブタンジオールを主体としており、生分解性・機械的強度・加工性のバランスを最適化しているため、エコフレックス®認証を受けた生分解性樹脂であり、特定の環境下ではしっかり分解される性能を持ちながら、実用的な物性強度を持つというユニークな樹脂なのです。

エコフレックス®の特徴

画像提供:BASFジャパン㈱

生分解性以外のエコフレックス®の特徴を大きく分類すると、以下の3つが挙げられます。

【物性強度】
柔軟で強靭な物性を持っており、フィルムにした場合の引裂き強度や破断強度が大きい。
【耐加水分解性】
加工前の予備乾燥工程を必要としない。また製品仕様や使用条件にもよるが、最終製品を比較的長期間使用することが可能。
【加工性】
LDPEなどの汎用樹脂と同じ成形加工機械を用いることができる。また成形時の耐熱安定性があるので加工中における加水分解の恐れが少ない。延展性にも優れているため薄肉フィルムへの加工も得意としている。

また、エコフレックス®他の生分解性プラスチックとのブレンド適性に優れていて、他の生分解性プラスチックを改質する機能にも長けています。
これらのことから、エコフレックス®は「生分解性の柔軟性フィルム」においては欠かせない材料となっています。

理にかなった用途事例

日本市場におけるエコフレックス®の代表的な用途は「農業用のマルチフィルム」です。
「マルチフィルム」は、畑の表面に張ることで、主に土中の地温・湿度の保持、雑草の防除などが目的の農業資材です。その多くはポリエチレン製なので、使用後に回収し、産廃処理する必要がありますが、日本では農家の高齢化が深刻化し人手不足の中、使用後のマルチフィルムの剥ぎ取り作業は非常に重労働となっています。また近年、廃プラの受入れ先が減っていることから、産廃処理費用の負担も増加しています。

これが生分解性のマルチフィルムであれば、時間の経過とともに劣化が進むので、使用後に耕運機で土中へ鋤き込むことができ、その後フィルムは土中で分解され、手作業による回収作業が不要となります。また、廃棄処理費も削減されます。

一方で、生分解性マルチフィルムを張る際に、強度不足により破れてしまったり、作物が育つ前に分解してしまったら元も子もないのですが、エコフレックス®を用いることでフィルムに十分な強度を持たせることができます。このようなことからマルチフィルムは、エコフレックス®の特徴と生分解機能が最大限に活かされた、とても理にかなった用途であると言えます。

画像提供:BASFジャパン㈱

今後の展望

日本市場におけるマルチフィルム以外の用途として「コンポスト袋」があります。
日本では生ごみの多くが焼却処理されている中、一部の自治体では生ごみを分別・回収して、堆肥化(コンポスト)処理することにより再資源化を進めています。その際に生分解性の回収袋が使用することで、生ごみの回収・運搬が衛生的になり、処理前に破袋する工程が不要になるほか、袋自体がごみにならないという利点があります。
生分解性コンポスト袋は、マルチフィルムの事例と同様に、作業効率を向上させ、廃棄物の削減につながる用途であり、生ごみの再資源化促進に貢献することができます。

問題は、日本ではこのような堆肥化施設が少ないために再資源化の処理能力が低いことです。今後、全国で堆肥化施設および回収システムが整備されれば、生分解性コンポスト袋も広がりを見せる可能性があります。

各地の自治体が循環型社会の制度設計を進め、廃棄物の循環利用を検討している中、堆肥化施設の導入が進んでいくことを期待したいと思います。

画像提供:BASFジャパン㈱