DUALAM開発のワケ
多くの食品パッケージは、2層以上のフィルムによって構成されていますが、それらのフィルムの貼り合わせを可能にしているのがラミネート加工です。ラミネートの方法には以下の4つがあります。
・溶剤型ラミネート(ドライラミネート)
・無溶剤型ラミネート(ノンソルベントラミネート)
・水性ラミネート
・押出ラミネート
このうち、世界でより普及しているのが溶剤型と無溶剤型ラミネートです。特に無溶剤型ラミネートは、環境対応性や安全性の高さから、近年シェアを拡大し続けている方法です。その一方、溶剤型と比べて加工性や効率性では劣っているため、これまでは主に軽包装などの限られた用途への使用に留まっており、高物性が求められるフィルム構成には使いづらいという課題がありました。
具体的な問題点としては、接着強度の弱さ、粘度安定性の低さ、ラミネート後のパッケージに外観不良が発生しやすいなどといった点が挙げられます。これらの課題を解決するためDICは、新しい接着剤および新しい塗工方式の開発に取り組みました。そのようにして生まれたのが「DUALAM」なのです。
新しい塗工方式:分別塗工方式の採用
従来の無溶剤型接着剤では、A剤のイソシアネートとB剤のポリオールを予め混合し、その後表基材のフィルムに塗工するという方法が取られています。この方法だと、A剤とB剤が混ざることによる硬化反応が始まってから、フィルムに接着剤を塗工する形になります。
一方、DUALAMの分別塗工方式では、表基材・裏基材それぞれのフィルムにA剤・B剤を別々で塗工します。この方法を採ることで、ラミネートと同時に接着剤硬化反応をスタートさせられて、粘度の安定性を考慮する必要がなくなったため、速硬化を可能とする接着剤設計が実現しました。
画像提供:DIC株式会社
分別塗工方式によるメリット
前述した分別塗工方式は、無溶剤型接着剤の課題を解決し、多くのメリットをもたらします。
第一に、初期凝集力の弱さの克服です。従来の無溶剤型接着剤では、初期接着力の弱さによって、パッケージの外観不良や製品ロスの大量発生といった問題を引き起こしていました。それに対して、貼り合わせのタイミングで速硬化がスタートするDUALAMは、接着剤の初期凝集力を大幅に向上させ、ラミネート工程での安定性をもたらすことができるようになりました。この初期凝集力の高さは、3層以上のフィルム構成でのラミネートも可能にするため、無溶剤型接着剤の使用範囲拡大にもつながります。
第二のメリットは粘度安定性の高さです。従来の混合塗工方式では、ラミネート前からA剤とB剤の硬化反応が始まってしまうため、接着剤の粘度が高くなってしまいます。粘度の高さはラミネート後に発生する多くの外観不良問題の原因の一つであり、無溶剤型接着剤の大きな課題となっていました。A剤とB剤を別々に塗る分別塗工方式では、この問題を解決し、各種外観不良やそれに伴う生産ロスを防止することができるようになります。
画像提供:DIC株式会社
第三のメリットは、エージング時間の短縮化です。速硬化を可能にしたDUALAMは、ラミネート後の接着剤硬化反応を進めるためのプロセス「エージング」にも利点をもたらします。従来は専用のエージングルームにて40℃・48時間程度を必要としていましたが、DUALAMの場合、25℃環境下かつ24時間でのエージングを可能としました。これによりフィルムへの負荷が軽減されるため、カールなどの問題が発生しづらくなります。さらに、エージングにかかるエネルギーやコストの削減も期待できます。
画像提供:DIC株式会社
DUALAMまとめと今後の展開について
以上のように、新しい塗工方式を採用した接着剤DUALAMは、これまで無溶剤型接着剤使用において生じていた課題を解決し、ラミネート加工に新しい可能性を提供しています。そして、食品包装用接着剤市場の無溶剤型への移行を推し進め、サステナビリティの実現に貢献していきます。現在DUALAMは国内のみならず中国、タイといったアジア地域に導入が進んでおり、今後は環境規制の厳格なヨーロッパやアメリカにも市場を拡大、グローバルに展開を進めていく予定です。
また以前のコラムでご紹介した株式会社カナオカ様令和工場もDUALAMを使用した分別塗工型ノンソルラミネート機を導入しています。
DUALAMにご関心をお持ちの方はぜひご連絡ください。