石油由来エンプラを真に代替し得る、
総合ポリアミドメーカーが展開するバイオマスプラスチック群

よく耳にする「バイオマス」とは、CO2を吸収して生育する植物などの「生物由来資源」のことです。脱炭素社会の実現に向けて、昨今ではさまざまな方法でバイオマスの利活用が進められていますが、実はエンプラの中には、初めからバイオマスを原料にして開発され、古くから工業用途で使用されている素材があります。

昔からある、ヒマシ油由来のポリアミド

「PA(ポリアミド)」は、原料の組み合わせにより多くの種類があり、耐熱性・機械的性質に優れるエンプラです。代表格である PA6・PA66 は、自動車部品や電気・電子機器の部品から、食品包装フィルムや繊維にまで幅広い用途で使用されており、エンプラの中でも特に生産量が多い素材です。

そのポリアミドの中で、今のように環境保全の観点で石油由来資源の代替としてバイオマスを用いるのではなく、その樹脂をつくるのに最適な原料としてバイオマスが見出され、開発されたのが「PA610」「PA11」などの、「ヒマシ油」を原料とするポリアミド樹脂です。
「ヒマシ油」は、トウゴマという1年生植物の種子から採れる油脂で、紀元前から利用されていたという記述が残っており、かのクレオパトラも美容オイルとして愛用していたそうです。
工業用途としても、機械油やエンジンオイルとして使われてきた歴史があり、ヒマシ油を化学合成してプラスチックを得ようとする開発が行なわれたというのも頷けます。

エムスケミーの「グリーンライン」

スイスに本社があり、日本にも1977年から拠点を置く「エムスケミー・ジャパン株式会社(以下、エムス)」は、グローバルプラスチックサプライヤとしては珍しく、ポリアミドを専門としてします。
エムスが製造・販売しているポリアミド(PA)は、
・PA6、PA66、PA6/66(共重合)
・PA12、PA610、PA612、PA1010
・PA6T、PA6I、PA10T/X
・非晶性PA
と多岐にわたります。

そのエムスでは、ヒマシ油を出発原料として開発・製造されてきたものから、技術開発により石油由来原料をバイオマスに置き換えたものまで、幅広いグレードラインナップを揃え、一連のバイオマスPA製品群を「グリーンライン」と呼び、グローバル展開しています。

グリーンライン製品ラインナップ
画像提供:エムスケミー・ジャパン(株)



尚、どれだけバイオマス原料を使用しているのか、という所謂バイオマス度について、エムスのグリーンラインでは、投下原料中のバイオマス分の重量比率などではなく、「ポリマー中の炭素における植物由来炭素の割合」と定義しており、ASTM D 6866-08 の測定規格に基づいた試験結果を公表しています。

石油由来エンプラを代替し得る「グリーンライン」

このコラムの見出しで「石油由来エンプラを真に代替し得る」と書きましたが、グリーンラインの製品群がもつ優れた物性は、従来石油由来エンプラあるいはスーパーエンプラが使用されてきた用途の要求物性を満たすことができ、置き換えが可能です。

例として「グリボリー HT3」は、石油由来のテレフタル酸とヒマシ油由来のデカンジアミンからなるPA10T/Xをベースとした、バイオ由来成分最大48%の材料で、優れた耐熱性と寸法安定性をもち、低吸水で耐加水分解性に優れています。
こちらのグリボリー HT3には、摺動性・耐摩耗性を向上させたグレードや、ガラス繊維強化、難燃剤を配合したV0グレードもあり、他の石油由来の半芳香族PAを代替可能です。また以下の用途例のように、金属部品を樹脂化する際にも適した材料となります。

グリボリー HT3 用途例
画像提供:エムスケミー・ジャパン(株)



また、「グリルアミド 1S」は、ヒマシ油由来のセバシン酸と、同じくヒマシ油由来のデカンジアミンからなるバイオ由来成分最大99%のPA1010です。PA12と同等の柔軟性や極めて低い吸水率をもち、成形条件幅も広い(成形し易い)ため、押出成形用途に向く他、ガラス繊維強化することにより、高いレベルで剛性と靭性のバランスがとれ、寸法安定性にも優れるため、射出成形用途にも適しています。

グリルアミド 1S 用途例
画像提供:エムスケミー・ジャパン(株)

「グリーンライン」がもたらすCO2削減効果

以下は、グリルアミド 1Sシリーズ と石油由来の半芳香族ポリアミドの、CO2-バランスの比較データです。
どちらもエムスの製品のため、自社のバックデータを用いて同じ条件でLCA算定を行なった結果、ガラス繊維を含まない非強化グレードの比較では▲77%、ガラス繊維50%配合グレードの比較では▲63% という差が出ています。

画像提供:エムスケミー・ジャパン(株)



エムスでは、グリボリーHT3や、今回ご紹介できなかった「グリルアミド 2S(PA610)」、「グリルアミド BTR(非晶性PA)」においても同様のデータを取得しており、お客様のニーズに応じた材料提案、テクニカルサポートが可能です。
ご検討中の製品に合う、最適なプラスチックをお探しでしたら、是非一度ご相談ください。

記事制作協力:エムスケミー・ジャパン株式会社

お問い合わせ

profile

plaplat編集部

化学品専門商社:長瀬産業グループのメンバーを中心に構成。
専門領域であるプラスチックを基軸に、サステナビリティを実現するためのソリューションと、業界を横断した情報を展開する。