ここまで進んだ植物由来生分解性樹脂「ポリ乳酸」
(※本稿以降で生分解性を活用した資源循環出口戦略の記事掲載予定あり)

1997年、カーギルダウ社(穀物大手カーギル社と化学大手ダウ・ケミカル社の合弁会社、現在はネイチャーワークス社が事業継続)により、とうもろこし由来の100%植物原料を用いたポリマーとして「ポリ乳酸(PLA)」の生産が開始されました。
当初PLAは、成形しづらく、形になっても性能が伴わないなど、市場への普及には難しい素材でしたが、近年、成形性や性能の大きな改善が図られ、今後のバイオマス素材としての期待が再び大いに高まっています。


European Bioplastics e.V.「Bioplastics market data」,出典_2023.12.12 https://www.european-bioplastics.org/market/



植物由来の添加剤で品質と機能性をアップデート

PLAの市場浸透の大きな障害となっていたのが、「耐熱変形温度」が低いことと、「耐衝撃性」が劣り、硬くて脆いことでした。
近年、わずかな植物由来の添加剤を効果的に使うことで改善することができるようになりました。PLAが石油由来のプラスチックに代わる素材として大いに見直されています。

画像提供:協和株式会社


主な特徴
①高透明性と柔軟性の付与
②短い成形サイクルでの耐熱性と耐衝撃性の付与

高透明性と柔軟性を実現したポリ乳酸

飲料用ハードカップ製品では、射出成形で「透明性」と「割れにくさ」を有する「薄肉成形品」とする必要があります。
本課題に対して、PLAに「植物由来の添加剤」を最適に使いこなすことで、最薄部「0.7mm」でガラス並みの「高透明性」と、カップとして必要な「割れにくさ」を達成しました。具体的には、石油樹脂の代表であるポリスチレン(PS)製カップよりも割れにくく、安全性を高めたカップ容器とすることができました。

本PLA改質製品の組成構成の一例を示すと、以下のようになります。
ポリ乳酸:96%、植物由来添加剤:4%
(植物度:98%、生分解性度:99% ※当社調べ)

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本PLA製品は、サッポロビール(株)様の黒ラベル用カップに採用され、音楽フェスなどのイベントにおいて、ビール提供用カップとして活用されています。
https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000015188/

成形サイクル短縮と耐熱性・耐衝撃性の付与

PLAは結晶性樹脂であり、成形サイクルを短縮するためには「結晶化速度」を高める必要があり、また、耐熱温度を高めるには「結晶化度」を高める必要があります。
本課題に対しても、適切な「植物由来の添加剤」使いこなすことで、大幅な改善を達成することができました。
本PLA改質製品の組成構成の一例を示すと、以下のようになります。

ポリ乳酸:92%、植物由来添加剤 :8%
(植物度:96%、生分解性度:95% ※当社調べ)

本PLA改質製品の「結晶化速度」は「従来PLAの5~10倍」であり、格段に速い成形サイクルを実現することができました。そして、PLA樹脂として達成可能な理論結晶化度に100%近い値を実現できており、具体的には90℃の耐熱変形温度を、柔軟性を損なうことなく実現することができることから、耐熱カトラリー用途としてイベントなどで活用されています。

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ポリ乳酸成形品への今後の期待

PLAを改質することで、射出成形のみならず、ブロー成形、インフレーション成形、押出成形、真空成形、発泡成形など様々な成形方法で製品化を行えるようになりました。

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改質による「流動性」の改善にも大きな効果があり、PLAで困難であったダイレクトブロー成形も可能となりました。得られたダイレクトブロー容器は、シーダーウッド、サイプレス、サンダルウッド等の天然精油などから生まれた100%植物由来の洗濯洗剤の容器として採用されています。

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https://echapper.com/products/laundry-liquid


近年、特に欧州では、各国政府の厳しい規制と使い捨てプラスチックの禁止により、ポリ乳酸に注目が集まっており、PLAの需要がさらに高まっています。PLAの市場は、今後グローバルに成長するものと予測されています。

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原田淳一

<所属>協和株式会社 機能性材料推進部
<専門分野>バイオプラスチック、バイオ素材コンパウンド、高機能性プラスチック、各種成形
高機能性プラスチック素材の製品採用開発に長年従事した経験を活かし、2015年からバイオプラスチックの市場展開を始め現在に至る。