環境対応から見たプラスチック

環境問題が深刻化する現代社会において、環境に配慮した解決策として注目されているのが、「バイオプラスチック」(以下バイオプラ)です。
バイオプラには「生分解性」と「非生分解性」の2種類があります。
生分解性バイオプラは、自然界の微生物によって二酸化炭素や水などの無害な物質に分解されます。一方、非生分解性バイオプラは、自然界で分解されず長期残留するため、環境に悪影響を与える可能性があるものの、通常のプラスチックに比べて化石資源を使用しない又は使用量が少ないため、温室効果ガスの排出量を削減することが可能です。
プラスチック製品の多くは使い捨てであり、バイオプラを使用した場合でも同様になってしまうことから、すべての問題を解決するわけではありませんが、課題解決できる手段の1つとして、生分解性バイオプラ「ポリ乳酸樹脂」を提案したいと思います。

ポリ乳酸樹脂とは?

さとうきび等の植物から得られた「糖」を、乳酸菌で発酵させることで「乳酸」を作り、乳酸のエステル結合によって重合された天然の高分子物質が「ポリ乳酸樹脂(PLA)」です。
製造過程で二酸化炭素を吸収する植物を原料として使用するため、石油由来のプラスチックと比較して、二酸化炭素の排出量を約70%削減できるとして、近年高い注目を浴びています。

2022年の世界のバイオプラの生産能力は222万トン/年で、全体の約21%をPLAが占めています。2027年の予測では、生産能力の合計は630万トン/年、全体の約38%がPLAとなっており、バイオプラの生産能力内訳から見ても群を抜いています。
PLAの歴史は古く、1930年代に最初に合成されたと言われています。1990年代後半にはさまざまな分野で使用され、用途展開はある程度確立されたものの、一部の市場でしか需要がなかったため数量は減少していきました。
そういった背景からも、昨今のバイオプラへの注目が奏功し、すでに技術確立されたPLAの工業的利用が進む可能性は高そうです。なお、PLAには生分解性がありますが、コンポスト環境でのみ分解されるということを付け加えておきます。

溶剤可溶型による用途の拡がり

ポリ乳酸樹脂(PLA)には「結晶性」と「非晶性」があります。一般的に知られているPLAは結晶性であり、さまざまな用途で利用されており、たとえば、食品容器・農業資材、・繊維・衣料品・フィルム・シートなどの用途が挙げられます。しかし結晶性のPLAは、酢酸エチルなどの汎用溶剤には溶けないため、塗料・インキ・粘接着剤等の樹脂として使用することが出来ませんでした。

今回私たちは、特殊な重合技術を用いて「非晶性ポリ乳酸樹脂」を開発しました。こちらの開発品は汎用溶剤に溶けることから、今まで適用できなかった塗料・インキ・粘接着剤などの「コーティング分野」で検討することが可能となりました。
さらに本樹脂は、ポリ乳酸フィルムやポリ乳酸シート等との密着性も良好なので、最終製品全体で植物由来の比率を高めた製品作りを推進することも可能です。容リサイクル設計による資源循環の観点から、多層ラミネートフィルムは層数を減らすもしくは単層にする「モノマテリアル化」の流れがありますが、本樹脂を応用することで、基材となるフィルムから、層間に使用する接着剤・印刷するインキまでを、全てポリ乳酸樹脂系にすることも可能となります。
また、本樹脂は結晶性PLAよりも分子量を下げた非晶性であるため、改質剤や可塑剤といった、今まで適用されなかった添加剤用途への展開も期待できます。

非晶性PLAは課題も多いが未来は明るい

非晶性PLAはまだ開発段階であり、いくつかの課題も抱えていますが、2023年度中には量産化の目途が立つ予定です。その量産化を円滑に進めるため、多種多様な用途で可能性を模索するべく、さまざまなお客様にサンプル評価をいただいています。
結晶性PLAと比べると需要数量は少なく、従来の石化樹脂と比べるとコストも高いですが、同じ生分解性バイオプラと比べると、溶剤可溶型であり、原料の調達安定性、耐久性が高いといった観点から、十分に差別化できる樹脂材料であることは間違いありません。

先ほど少し触れた、ポリ乳酸フィルムに非晶性PLAをベースとしたインキで印刷するという、最終製品をモノマテリアル化する試みも、試作品が完成しています。持続可能な社会の実現に貢献できる製品として、筆者は拡げていきたいと考えています。
本樹脂にご興味のある方は、こちらまでお問い合わせください。