プラスチックのリサイクル

プラスチックのリサイクルにもさまざまな種類があります。
図はリサイクルの種類を示していますが、大きくマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つに分類できます。さらに細かく分類すると、青字の11種類になります。その中で、もう一度プラスチック材料に戻して成形に再利用できるのは、緑線より上の6種類になります。

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このコラムではこれ以降、ケミカルリサイクル=「原料・モノマー化」として話を進めていきます。
ケミカルリサイクルの中でも「ガス化」「油化」については、ジェット燃料など、プラスチック以外への用途展開が多くなっています。

材料フロー

図はポリスチレン樹脂の生産、および部品の生産、製品のリサイクルに関して、原油を基点とした材料フローを示しています。

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PCR(ポストコンシューマーリサイクル)、PIR(ポストインダストリーリサイクル)、リグラインド、CR(ケミカルリサイクル)が、それぞれどの工程で発生したリサイクル原資を、どの工程に戻してリサイクル材を得るのかを赤字で示しています。
工程の上流に行けば行くほど品質は上がりますが、処理コストは上がっていきます。
またリグラインドは成形工場内、PIRは材料の納品と逆ルートというように、リサイクル原資の回収ルートが限定されているのに対し、PCRとCRは原資を市場から回収する必要があるため、より一層のコスト負荷がかかってしまいます。

リサイクル手法ごとのメリット・デメリット

上述の4つのリサイクル手法ごとのメリット、デメリットを一覧にしました。
表の上から下に向けて、工程としては上流になるので品質は上がりますが(メリット)、コストも上がります(デメリット)。

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コストの要因としてUL94の難燃性がありますが、AC電源に接続して使用する電気・電子製品に使われるプラスチックにはUL94という難燃性が要求されます。リグラインドの場合、リグラインド率(再生材比率)25%未満であれば、UL94の再申請をすることなくリサイクルが可能です。一方、それ以外のPIR・PCR・CRの場合は、UL94の再認証が必要となり、リサイクル材料としてグレード名も新たに取り直す必要があります。
コストの安いリグラインドですが、樹脂粉や異物による「黒点」が発生しやすいので、品質管理にかなり気をつける必要があります。

PCR材の必要性

このコラムでPCR材を取り上げている理由の一つに「環境ラベル」への対応があります。例えば別のコラムで取り上げた「EPEAT」においては、セクターごとにPCR材の最低含有量が定められています。(詳細はplaplat の過去コラムでご確認ください。)

「EPEAT」においては、PIR・CRは基準の対象に入っていませんので、市場では必然的にPCR材の取り合いとなってしまいます。
PCR材の中には、履歴のはっきりとした良質のリサイクル材と、ソースがはっきりとしない品質に不安のあるリサイクル材が混ざっており、ユーザーとしてはこれらを見分ける必要があります。見分ける手段の一つが「リサイクル材料関連規格」です。

次回は「PCR材の製造」に関するコラムになりますが、それ以降は主要な「リサイクル材料関連規格」について解説していく予定にしています。どうぞご期待ください。

PCR材に関する規格シリーズ

  1. 1. リサイクルプラスチックにおけるPCR材の位置付け
  2. 2. PCR材の製造について
  3. 3.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段① 『UL ECVP 2809』シリーズ
  4. 4.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段②『R2』(Responsible Recycling)
  5. 5.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段③『GRS』(Global Recycled Standard)
  6. 6.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段④『SCS』(SCS Global Services)