包装材の新標準!? 印刷可能で100%植物油由来の
PLA(ポリ乳酸)フィルム

100%植物由来で、環境の負荷を最小限に抑えると同時に、印刷が可能な包装材があります。自然と調和し、持続可能な未来を実現するこの新しい包装材は、社会全体の環境意識の高まりと共に、企業や消費者にとって理想的な選択肢になるものであると考えております。

PLA(ポリ乳酸)で出来た包装材の特長

その理想的な包装材の基材となるのが、高い延伸技術をもつメーカーが製造した「二軸延伸PLAフィルム」で、昨今の環境配慮が求められる製品の包装材料として使用することが可能です。

特長:
① 植物由来原料を用いたPLA樹脂を延伸したフィルム
② 100%植物由来であり、バイオマスマーク認証品
③ コンポスト生分解性も有しており、生分解性認証マークを取得済
④ 防曇処理も施されており、食品包装用途への使用も可能
⑤ 透明性が非常に高いことから視認性に優れ、光沢もあり高外観

用途:
1⃣ 粘着テープの環境対応フィルム化
2⃣ 窓付き封筒や箱の「窓」フィルムの環境対応化
3⃣ 紙とフィルムの保護用ラミネート
4⃣ 食品への直接包装
5⃣ ドリンク、化粧品などのラベル
6⃣ 家電製品の保護フィルム

プラスチック資源循環法の概要と最新動向

日本では今、海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化等への対応を契機として、国内におけるプラスチックの資源循環を一層促進する重要性が高まっています。
こうした背景を踏まえ、プラスチック使用製品の設計からプラスチック廃棄物の処理に至るまでの各段階において、プラスチック資源循環の取組み(3R+Renewable)を促進するための措置を講じた法律が成立し、2022年4月に施行されました。
これらの基本方針は、プラスチック資源循環戦略(2019年5月)、G20大阪・ブルーオーシャンビジョン(2019年6月)、2050年カーボンニュートラル宣言(2020年10月)から成っております。


環境省「circulation of plastic resources プラスチック資源循環」,出典_2023.10.27
https://plastic-circulation.env.go.jp/about



これらの社会要請を受け、現場レベルでは具体的に何がなされているのでしょうか。

■プラスチックの減量・減肉化
■包装の簡素化
■長期使用化・長寿命化
■単一素材化(モノマテ)
■分解・分別、収集・運搬、破砕・焼却の容易化
■プラスチック以外への代替検討
■再生プラスチック、再生利用が可能な材料、バイオプラスチックの利用

などの技術開発・仕組み導入が推進されています。

注目される、PLA(ポリ乳酸)の展望

まず植物由来のでんぷんを乳酸菌で発酵させることにより「乳酸」が作られます。そして乳酸をエステル結合によって重合させると、天然の高分子物質である「ポリ乳酸樹脂」になります。
製造過程でCO2を吸収する植物由来の原料を使用するため、石油由来のプラスチックと比較して、CO2の排出量を約70%削減するとして、近年高い注目を浴びております。



2027年のバイオプラスチックの世界生産能力予測では合計数量が630万トン/年、その中の約38%がポリ乳酸樹脂となっており、バイオプラスチックの生産能力内訳から見ても群を抜いています。参考までに2番手はバイオPAで約18.7%となっています。


European Bioplastics e.V.「Bioplastics market data」,出典_2023.10.27
https://www.european-bioplastics.org/market/



ほかにもポリ乳酸樹脂が注目されている点として、サーキュラーエコノミーの観点から見た「リサイクル性」があります。
・マテリアルリサイクル(製造工程で発生した対象材料を粉砕後に一定比率でバージン樹脂に混練して使用)
・ケミカルリサイクル(研究中)
・メタンガス回収によるサーマルリサイクル(嫌気性菌を使用した、微生物分解による発生ガスのエネルギー利用)
といったアプローチから、市場でのリサイクル実装が検討されております。

包装業界の新常識になる?PLA(ポリ乳酸)フィルム

ポリ乳酸フィルムは、今後の包装業界における新常識となる可能性を持っています。
環境問題への対応が求められる現代において、生分解性とCO2削減効果を持つポリ乳酸フィルムは、サステナブルな包装材料としての役割を果たすことができます。
ただし、その利用を広げるためには、産業界においてポリ乳酸フィルムの認知度を高めるとともに各用途で使用検討を推進する必要性があります。



こうした課題を解決するためポリ乳酸フィルムは、素材や加工、その他の周辺技術においても様々な開発が進められており、今後の進化に期待が寄せられます。

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profile

寺谷 亨(てらや とおる)

<所属>長瀬産業株式会社
<職務>塗料・インキ・粘接着業界向けサステナ素材の開発および用途開発

<紹介>前職では塗料メーカーで製品開発を行うエンジニア。長瀬産業の中でもコーティングにおける技術知見はトップクラス。