プラスチックの難燃性規格「UL94」
プラスチックの難燃性は、「UL94 燃焼性試験」によって測定され、その結果により「HB」や「V-0」といったランクと、1.5mm、3.2mmといった「厚み」が難燃性能として物性表に記載されています。
試験方法は「UL94」で規格化されています。「UL」は、
UL社が策定した規格は1,600以上あり、その中の94番が「プラスチックの難燃性」に関するものとなります。
ULは政府機関ではありませんが、世界的に認知度が高く、プラスチック製電気製品を製造・輸入・販売するメーカーは、製品に対してUL746Cを取得しています。このUL746Cを取得するためには、UL94・746A・746Bで認定されたプラスチック材料を使用する必要があります。
UL94で決められる燃性のランク
先ほど「HB」「V-0」などの難燃性能ランクと書きましたが、UL94には以下の6つのランクがあります。
「燃えやすい」HBと「燃えにくい」5VAでは、実施する試験内容が異なります。
また「HBは燃えやすい」とはいうものの、燃焼の進み方が一定の速度以下であった場合に認証が取得できます。
「燃えにくさ」のランク付けとなる「V」試験は、バーナーで試験片に着火し、燃え続けた時間が何秒かや、溶け落ちたプラスチックによって下に設置した綿が燃えるかどうか等の試験結果から、V-2、V-1、V-0 が判定されます。
「HB」と「V」とでは同じサイズの試験片を使いますが、燃える速度を測る「HB」は試験片を水平に設置し、一方「V」では垂直に立てて着火・燃焼・滴下の試験を行ないます。
「5V」試験ともなると、V試験を過酷な条件で実施することから始まり、それにクリアした場合のみ、平板状の試験片を使った試験で5VA・5VBを判定することができます。
百聞は一見にしかずということで、模擬試験と併せて試験条件等をご覧いただくことで、HBがどのくらいの燃えやすさなのか、5VAがどのくらい燃えにくいのかを感じていただけると思います。
2分半ほどの動画となっておりますので、是非ご覧ください。
もう一つの「燃えやすさ」の指標
物質の燃えやすさを表す一般的な指標として「酸素指数」があります。
こちらは、JIS K7201-2、ISO4589-2、ASTM D2863 で規格化されており、試験片に着火した状態で試験機内の酸素を徐々に減らしていき、火が消えた時の酸素濃度(%)を「酸素指数」とするものです。
大気中の酸素は約21%ですので、酸素指数21以下の物質は、着火すると大気中で燃え続けやすくなると言えます。
以下は、試験の簡易図と、各プラスチックの酸素指数(OXYGEN INDEX:OI)です。
ちなみに物質ごとの酸素指数の違いは、その物質を構成する原子や分子構造の違いにより生じます。
分子中に酸素や水素原子を多くもつプラスチックは酸素指数が低く、燃えやすく、一方で分子中に塩素やフッ素原子を多くもつプラスチックは酸素指数が高く、燃えにくくなります。
冒頭で「一般的に目にする石油由来プラスチックは良く燃える」を書きましたが、住宅建材に多く使われていて、目にする機会も多い PVC(塩ビ)は、分子中に塩素原子をもち、難燃性能を備えた汎用プラスチックなのです。
材料研究・製品開発をお手伝いします
今回ご紹介した「UL94 燃焼性試験」の動画も、ナガセアプリケーションワークショップ(NAW)の設備を使い、同所の技術者による試験デモの様子を撮影して作成しております。
NAWは、兵庫県尼崎市にある、NAGASEグループの樹脂材料・コーティング材料の開発施設です。これまで数多くのお客様とともに材料研究を行ない、新製品開発を支援して参りました。
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