公開日:2024/05/28

最終更新日:2024/05/21

【図解付き】CoCモデルの詳細・前編

前回のコラムでは、CoCとは何をするために必要なものであるかを中心に解説し、5つのCoCモデルに分類できると解説してきました。 今回は、5つあるCoCモデルのそれぞれについて、具体例を交えて説明していきます。


画像提供:P.M.アドバイザー



① identity preserved model : ID保存モデル

「Model without mixing」の1つで、特徴として「インプット」と「アウトプット」の特性が同じCoCモデルです。
そのうち、「インプット」が「単一供給源」である場合を、①identity preserved model : ID保存モデル と分類しています。

例えば、1か所の射出成形工場の廃材だけを回収し、再生工場で「INPUT」100%のPIR材を生産する場合はこのモデルにあたります。

<identity preserved model : ID保存モデルの例>
画像提供:P.M.アドバイザー

② segregated model : 分離モデル

同じ「Model without mixing」でも「インプット」の「供給源が複数」の場合、② segregated model : 分離モデルと使い分けます。

例えば、2か所の射出成形工場からそれぞれPPの廃材を回収し、この廃材のみで100%PIR材を生産する場合はこのモデルにあたります。
あるいは、複数のバイオエタノール工場からバイオエタノールを調達し、バイオエチレンを生産した場合もこのモデルになります。

Braskemのバイオポリエチレンが代表的な事例です。
また、広い意味で捉えると、①のID保存モデルも②分離モデルの一部とみなすことができます。

<segregated model : 分離モデルの例>
画像提供:P.M.アドバイザー

③ controlled blending model : 制御されたブレンドモデル

「Model with mixing」の1つで、「インプット」と「アウトプット」の特性が異なるCoCモデルが、③controlled blending modelです。
細かく言えば、ある特性を持つ材料とその特性を持たない複数の材料が「インプット」として混合され、「アウトプット」では「インプット」と異なる指定された特性が得られるCoCモデルです。

例えば、1か所の射出成形工場の廃材だけを回収してはいるものの、再生工場で「バージン材」を一定比率で混合し、PIR材を生産する場合がこれにあたります。
あるいは、市場から回収した家電製品や飲料容器から特定の材料を再生し、バージン材に混合し新たなグレードを生産した場合もこれにあたります。

具体的には、旭化成の変性PPE樹脂「XYRON™」のPCRリサイクルグレードがこれにあたりますが、市場回収したポリスチレンを変性材としてバージンのPPEと混合し、販売しています。
下図で説明すると、「input」としてA:PCR材、V:バージン材をそれぞれ半分ずつ(各50%)混合した場合、「output」はPCR材でもバージン材でもない、「両者が一定比率で混合された」という新しい「特性」の材料となります。

<controlled blending model : 制御されたブレンドモデルの例>
画像提供:P.M.アドバイザー

⑤ book and claim model : 帳簿とクレームモデル

①~④のモデルは、「モノ」と「特性」をセットにして管理しますが、これと異なり「インプット」と「アウトプット」が物理的にリンクしないCoCモデルが、⑤ book and claim modelです。
例えば、再生可能電力(非化石電力)の市場取引がこれに当たります。

具体的には、JEPX(日本卸電力取引所。https://www.jepx.jp)の非化石価値取引市場で、太陽光発電(非化石発電)によって作られた電力に関する「非化石証書」の売買を行うことで、実際の電力供給とは別に、「非化石証書」という「環境的な価値」の売買を行うことができます。
「非化石証書」の売買は、株式売買をイメージしていただければ分かりやすいかと思います。

今回説明していない④mass balance model : マスバランスモデルについては、次回じっくりと解説します。

CoC(Chain of Custody)解説シリーズ

  1. 1. 材料におけるCoC(Chain of Custody)の概要

profile

小池 寧 (こいけ やすし)

P.Mアドバイザー
<専門分野>プラスチック材料、潤滑剤、金属プレス材料、など

<略歴>事務機器メーカにて機構設計及び機構設計の標準化・材料のコストダウン・新人教育などに従事。2018年3月に現業を起業する。