公開日:2024/06/07

最終更新日:2024/06/04

【図解付き】CoCモデルの詳細②・後編

前回のコラムでは、5つに分類されるCoCモデルの①②③⑤についての説明をしましたが、後編となる今回は「第三者認証」でよく使われ、最もよく耳にする「マスバランスモデル(④)」について、具体例を交えて詳しく解説していきます。


画像提供:P.M.アドバイザー



④ mass balance model : マスバランスモデル

③ controlled blending model : 制御されたブレンドモデルと同じ「Model with mixing」に分類され、「インプット」と「アウトプット」の特性が異なるCoCモデルです。

このモデルのことを、ISCC PLUS認証に関連して知られた方も多いと思いますが、CoCの初回コラムで「インプットは(中略)UL ECVP 2809 に規定があり、リサイクル、リユース、海洋プラスチック、バイオマス原料を例として挙げています」と説明しています。
すなわち、リサイクル材、バイオマス材のどちらでも適用できるCoCモデルであることを謳っています。

マスバランスモデルの具体例

マスバランスモデルの最大のメリットは、実際の含有比率以上の含有率を謳った商品を作り出すことができることにあります。
図は、マスバランスモデルの模式図です。
「インプット」は、PCR材B1:25%=25ton、PCR材B2:25%=25ton、バージン材V:50%=50tonで構成され、「アウトプット」として、パターン1から3までの3種類を挙げています。

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パターン1は、前のコラムで説明した「③controlled blending model : 制御されたブレンドモデル」にあたります。「アウトプット」は全ての混合品F1:100tonとなります。
本来、同じ一つのプロセスで生産された製品であれば、物理的にはこのパターンしかあり得ません。

パターン2は、「アウトプット」をB1とB2という同じ特性の集合体と、Vという別の特性に分けて管理するというモデルです。
この場合、PCR材100%のB:50ton、PCR材0%のV:50tonが「アウトプット」となります。

パターン3は、「アウトプット」をB1という特性と、B2とVとを組み合わせた別の特性に分けて管理するというモデルです。
この場合、PCR材100%のB1:25ton、PCR材33.3%混合品のF2:75tonが「アウトプット」となります。

これ以外のパターンもありますが、「アウトプット」の特性と混合比率については、PCR材の比率が「インプット」と同じであれば、製造メーカが自由に決めることができます。

別の具体例

バイオマス資源を用いた別の具体例を説明します。 図において、「インプット」の構成は、バイオマス資源C1:10%=10ton、バイオマス資源C2:10%=10ton、バージン材V:80%=80tonとしています。

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バイオマス資源を用いたプラスチックの生産の場合、従来からの化石燃料で使われるプラントを用いることができます。
この際、重合工程では未反応物、残渣など、製品にならない成分が残ってしまいます。工程において、これらが生成される場合「変換係数」を用いることになっています。

図の場合、生産された中間体(Intermediate)の変換係数を0.9とすると、バイオマス資源分の「インプット」20tonは、生産量としては18tonとなります。
バージン材Vは、「インプット」80ton、変換係数0.9なので「アウトプット」は72tonになります。
ちなみにバイオマス資源の場合、化石原料と同じ生産プロセスで製造される場合は「特性は維持される」とみなされます。

マスバランスモデルのメリットと是非

マスバランスモデルのメリットとして、実際の含有比率以上の含有率を謳った商品を作り出すことができることを取り上げました。
これ以外にもメリットはいくつもあります。
バイオマス資源では既存設備を流用できるメリットがありますが、1バッチ全部の原資をバイオマス資源で賄えるのはBraskemのPEくらいで、その他は投入できる数量が少ない場合がほとんどです。
マスバランスモデルにより、少量の原資を有効活用する機会を増やしていることになります。

また、PCR材の場合、一般的にバージン材より物性劣化が起きています。 そのため、物性を回復するための添加剤を加えるか、PCR材の含有率を減らしてあるべき物性を保つ必要があります。
マスバランスモデルにより、実際には少ないPCR材の含有率であっても、表面の数値だけは高含有率の製品を商品化することができます。
ただ、実際の含有量以上の製品ができてしまうため、「数字遊び」と揶揄し、敬遠されるユーザーがいらっしゃるのも事実です。

欧州発のクレジットという概念は「モノ」の持つ「価値」に着目し、それらの新しい管理方法を提案しています。 そしてさまざまなメリットを享受しています。

一方でデメリットもあり、「価値」が正しく管理されているかを監視するためには第三者によるチェック、すなわち第三者認証が必要であり、認証のための費用が必要となります。
自社にとってのメリット、デメリットを正しく評価し、制度を有益に活用していただきたいと思います。

CoC(Chain of Custody)解説シリーズ

  1. 1. 材料におけるCoC(Chain of Custody)の概要
  2. 2. 【図解付き】CoCモデルの詳細・前編

profile

小池 寧 (こいけ やすし)

P.Mアドバイザー
<専門分野>プラスチック材料、潤滑剤、金属プレス材料、など

<略歴>事務機器メーカにて機構設計及び機構設計の標準化・材料のコストダウン・新人教育などに従事。2018年3月に現業を起業する。