大量に発生する食品系廃棄物

農林水産省によると令和3年度の食品系廃棄物は1,670万トンであり、食品製造業が1,386万トンと83%を占めます。食品産業全体での食品循環資源の再生利用実施率は87%に達し、飼料や肥料が主たる用途です。
また、食品ロス量は523万トンであり、その内訳は事業系食品ロス量は279万トン、家庭系食品ロス量は244万トンです。

食品製造業から排出される食品系廃棄物の活用例として、卵の殻をプラスチック用フィラーとして使う試みは多く実施されています。卵の殻の主成分は炭酸カルシウムで、年間26万トンも排出される卵の殻は粉砕されてパウダーにされ、紙やプラスチックに混ぜて使用したり、農業用途で利用されています。
ホタテや牡蠣の殻の主成分も炭酸カルシウムであり、同様の用途が想定されますが、臭い等の問題から利用技術の開発が遅れています。

ホタテ水揚げ量が国内で有数の北海道猿払村では、排出されるホタテ殻が年間4万トンに達します。甲子化学工業は、ホタテ殻とプラスチックの複合新素材「カラスチック」を開発し、これを用いてヘルメット「HOTAMET」を実用化しました。

画像提供:宇山教授


役割を終えたホタテ殻を、PPに複合化することでアップサイクルしています。生物模倣のコンセプトを元に、ホタテ貝殻の構造を模した特殊なリブ構造をデザインに取り入れ、少ない素材使用量で強度が高められています。
HOTAMETは大阪・関西万博万博のの防災用公式ヘルメットの一種として導入される予定であり、海外でカンヌライオンズ2023で金賞を受賞するなど、海外でも高く評価されています。

ソフトカプセル廃材を利用した生分解性プラスチック

ソフトカプセル被膜廃材はカプセル製造時に多く発生し、廃棄物が20~30%を占めます。ソフトカプセル業界では、年間数百トンの被膜廃材が出ていると予想されます。
この廃材は主成分のゼラチン以外の不純物が少ないため、再利用できる可能性が高く、プラスチック成分としての利用が想定されます。
ソフトカプセル被膜にはゼラチンを可塑化させるグリセリンが含まれ、被膜の性質に重要な役割を担っています。私たちはこの特性に着目し、ソフトカプセル製造時に発生する廃材を加熱処理することで廃材を熱可塑化しました。
通常のゼラチン(粉末)は熱可塑性を示しませんが、加熱処理した廃材は単独でシート成形できます。

ゼラチンを熱可塑化することで、ポリ乳酸(PLA)等の生分解性プラスチックに容易にブレンドすることができます。

画像提供:宇山教授


ゼラチンを添加しても、成形加工を工夫することで、生分解性プラスチックとしての性能は変らず、フィルムの延伸処理により靭性に優れた高性能フィルムが得られました。
ゼラチンを含むことで生分解性プラスチックの分解性向上が期待されます。また、廃ゼラチンの新たな利用手法として、ゼロエミッションや資源循環に貢献します。

廃棄物利用の促進に向けて

水産業を含めた食品産業分野では、同じ種類の廃棄物が排出されることが多いため、これらの利用技術の開発が今後、望まれます。
製糖産業で大量に発生する「バガス(さとうきびを圧縮したあとの搾りかす)」は、砂糖製造工場のボイラー用燃料に使われていますが、CO2排出削減の観点から焼却以外の利用法が模索されています。
バガスには大量の茎や葉などの繊維質が含まれるため、適切な処理をしてプラスチックに複合化する試みが多くなされています。脱炭素・脱プラ、化石資源の枯渇対策等の観点から環境保全に役立つことが期待されますが、バイオマスを添加することによる複合材料の着色や物性の信頼性等の課題から、実用化できている例は限定的です。

バガスのように植物繊維が主で、他に特徴的な物質が含まれないバイオマスと異なり、特徴的な成分を含む廃棄物には付随的な機能が期待できます。例えば、コーヒー搾りかすは粉体状で取り扱いが容易なうえに、カフェ酸といった天然フェノール類を含むことから、コーヒー搾りかすを含む複合素材には抗菌性、抗酸化性が期待できます。

また、私たちはソイプロテインを多く含む「おから」に着目し、食品に利用できる素材と混合して押出成形し、おから含有の可食熱可塑シートを作っています。

おからシート
画像提供:宇山教授


おからシートには現時点で具体的な用途は見つかっていませんが、資源循環・再生利用の観点から機能成分を含む食品廃材には無限の可能性があると信じています。
廃棄物の排出量に捉われすぎることなく、HOTAMETに見られるようなアップサイクルから、廃棄物利用の技術開発・製品化を始めませんか。

大阪大学 宇山教授と考える
「プラスチックのこれまでとこれから」全6編+番外編

  1. 1.どうしてプラスチックが使われているの?
  2. 2.プラスチックの問題と課題
  3. 3.課題解決技術(1)生分解性プラスチック
  4. 4.課題解決技術(2)バイオマスプラスチック
  5. 5.課題解決技術(3)ケミカルリサイクル
  6. 6.プラスチック資源が循環する社会に向けて【完】
  7. <番外編>

  8. ■ ゼロカーボン社会とごみ処理
  9. ■ ベトナムにおける廃プラスチック活用の現状
  10. ■ プラスチックごみに関する小学生向けの環境教育
  11. ■ 自然豊かな島に漂着する海ごみの視察
  12. ■ 革命的な衣類のリサイクル技術