「R_CESH」で、『もったいない資源』をリサイクル

ガラス繊維と熱硬化性樹脂から成る「FRP」は、マネキンから船舶まで、昔から幅広い用途で使われている素材ですが、揮発性有機化合物による環境影響や、リサイクルが困難といった課題があります。今回はFRPを代替し得る、新しい「水性環境樹脂」をご紹介します。

廃棄物を資源として活用した造形物

「廃棄物」を巡る問題は、国内外を問わず地球規模の課題となっています。我々の周りでも『資源を捨てずにリサイクル、リユース、アップサイクルをしたい!』や『環境に配慮した素材で、 環境にも人にも「やさしいものづくり」に取り組みたい…。』という声をよく耳にします。
そこで弊社では廃棄物を造形物に再利用することで、この課題を軽減できないかと考え、企業から出される廃棄物を混ぜて造形物を制作する方法を検討しました。

そして開発されたのが、従来のFRPに代わる水性環境樹脂「R_CESH」(リセッシュ)です。

画像提供:株式会社エー・ディー

「R_CESH」とは

水性環境樹脂「R_CESH」(リセッシュ)は、天然鉱物繊維と水系樹脂から成る「完全水系の脱プラチック成形材料」です。
アクリル樹脂の優れた点である、耐擦過性・耐水性・接着性を持ちながら、石膏のような作業性・質感と、優れた「引張強度、弾性」を掛け合わせた特性を持ちます。

FRPは、熱硬化性のポリエステル樹脂やエポキシ樹脂を用いる「油性」である為、作業で使用する道具類を溶剤で洗浄する必要があり、この洗浄工程で使用される溶剤は全て廃液となり、大量の産廃が発生します。一方、水性環境樹脂「R_CESH」(リセッシュ)は、成形時の刷毛洗い等は、全て水洗浄が可能な為、この工程での廃液がゼロになり、全体量としても約60%の産廃削減を可能にします。

バサルト繊維によるガラス繊維代替

ガラス繊維の代わりに用いる「バサルト繊維」は、玄武岩を原料とした天然鉱物繊維です。FRPでガラス繊維を使用する理由は強度アップのためですが、バサルト繊維はガラス繊維に代わる強度を持ちます。
バサルト繊維は、従来からSDGSの観点で建築関係で多く採用されていましたが、形状が太いために、細かな表現が必要になる造形には不向きとされてきました。弊社では、独自製法でバサルト繊維を糸状に紡ぐ等の工夫によって、これを解決し造形活用を可能にしたのです。

ガラス繊維の使用は、再生利用を阻害するだけでなく、皮膚疾患(発疹、かゆみ等)の問題も引き起こしますが、バサルト繊維に代えるこれを解決しています。
また、火災リスク(危険物非該当、耐火)を軽減し、職場環境を改善することにより、若者世代から敬遠されがちな「ものづくりの現場」に興味を持ってもらい、次世代への造形技術伝承に貢献することも期待されます。
更に塗料にも有機成分を含まない「天然水性塗料」を使用することにより、設置後(特に屋内設置の造形物では)、抗菌・抗ウイルスや揮発性有機化合物の吸着除去、二酸化炭素吸収などの副次効果も付加できるのです。

画像提供:株式会社エー・ディー

                                                          

小さな一歩、でも本気の一歩

サステナビリティ・SDGsを目指す中で、世の中からは「中長期な行動計画」や「具体的な成果」への期待が大きく、『何か明確に説明できる段階まではなかなか行かない』ことが多々あるかと思います。
これは私たちの業界でも同じです。
コスト、製造、納品が優先されてしまい、本来取り組むべき未来への投資が、先送りされ、成果を出すことが難しかったように感じています。
しかし、私たちは考えました。仕事を進める仲間たちと議論しました。

『1社では限界があるが、お互いに知恵を出し合えば、新しい価値を生めるかもしれない』

私たちの歩みはまだ実験的で部分的です。しかし、みなさまと共に未来へ進むために、難しい課題にも臆することなく、小さな一歩でも本気で踏み出し、多くの挑戦を続けて行きたいと思っています。​

お問い合わせ

profile

河野 龍也

株式会社エー・ディー 代表取締役


<専門分野>店舗、オフィス、ショールームなどの展示等に係る企画、設計、備品等の企画制作

<紹介文>廃棄されている『もったいない資源』の活用やプラスチック問題を解決するため、サスティナブルなものづくりを目指しております。