「欧州バッテリー規制」が与える日本企業への影響とは?

欧州連合(以下EU)は、バッテリーの回収、再利用、リサイクルを確実に行なうための新たな法律「欧州バッテリー規制 (New Batteries Regulation) 」を23年8月に発行しました。
今回のコラムでは、欧州バッテリー規制の概要と成立の背景、具体的な規制の内容について解説したのち、日本企業への影響について考察します。

欧州バッテリー規制とは

欧州バッテリー規制とは、簡潔に表すと「電池の環境負荷を低減するための法律」であり、電池資源の調達・製造・使用・リサイクルまでのあるべきサイクルを法的に定め、ライフサイクルにアプローチしよういう、初のEU法です。

昨今、電池自動車(EV車)へのシフトが主な要因となり、バッテリー需要は急激に増加しており、2030年には世界全体で今の14倍にまで増えると言われています。
この需要増に連動し、バッテリー製造に不可欠な原材料の必要量も増加しており、EUが掲げる2050年温室効果ガス排出量実質ゼロ(グリーン・ディール)達成のためには、使用量が増加しつつも、環境への影響を最大限に抑える取り組みが急務となりました。

そこで、EU市場に出回る全てのバッテリーを、持続可能で循環的、かつ競争力あるものとすることを目的に、ライフサイクル全体を可視化できる規則を定めたのです。

規制対象となるバッテリーと具体的な規制内容

さて、CSRDについて詳しく見ていきましょう。まず、下記2つのポイントを押さえていきます。

欧州バッテリー規制は、EU域内で販売される下記のタイプのバッテリーに適用されます。
・ポータブルバッテリー
・SLIバッテリー
・EVバッテリー
・産業用バッテリー

具体的な規制内容と開始時期は下記の通りです。

規制内容・開始時期


また、リサイクルを前提とした、製造業者へのバッテリー回収責任が追加されたほか、家電製品のポータブルバッテリーを、消費者が簡単に取り外し、交換できるよう設計することなども定められています。

日本企業への影響を考察

欧州バッテリー規制によって、日本企業はどのような影響を受けるでしょうか?

まず考えられるのは、自動車産業への影響です。
2026年以降にEU域内でEVを販売する自動車産業の企業は、EV製造後のバリューチェーンについて「環境データ」を開示する必要があります。
また、同時にサプライチェーン上のデータ開示も求められるため、一歩間違えると重要な技術情報が漏れる危険性は否めません。
企業はCFP算定やデータベースの構築など、今からしっかりと対策を練ることが求められるでしょう。

そして、ここからは筆者の私的見解ですが、欧州バッテリー規制施行を受けて、他国も同様の規制を導入することが考えられます。
既に米国や韓国、中国などの主要国でも、バッテリーの開発や製造に対する大規模な政策支援は行なわれていますが、持続可能なバリューチェーン構築を目的とした施策はEUが初です。
しかし、EUのバッテリーに環境面での競争力で劣らないよう、諸外国が同様の規制を導入しても驚きはしません。逆に、想定通りだと感じるでしょう。また、バッテリーだけでなく、その他産業においても同様の規制が課される可能性も充分に考えられます。
つまり、EU域内を市場とする企業や自動車産業の企業に限らず、全ての国と業界が、同様の規制の対象となり得るという意識を持ち、備えておくことが必要なのです。

動向に注視し、事前に対策を

欧州バッテリー規制は、自動車産業を始めとして幅広く産業に影響を及ぼします。
規制が開始される2026年に間に合うよう、関係する日本企業はCFP算定をはじめとした対策をとる必要に迫られるでしょう。
そして、今回は対象外となった産業においても、今後の世界潮流を知る上で、この欧州バッテリー規制の動向に注視しながら、自社が今後どう対応していべきか、考え始めた方が良いでしょう。
本記事が皆様の行動の第一歩となれば幸いです。

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川淵 宥依

長瀬産業株式会社
2023年度入社、同年10月よりポリマーグローバルアカウント事業部グローバルアカウント1課に配属