市民の声で「脱プラ」に向かう、香港の今②
~ 審議が進む 「製品環境責任(改正)法案」~

香港では今、使い捨てプラスチック食器を実質的に禁止とする「製品環境責任(改正)法案」が審議中です。生分解性プラスチックやラミネート紙を使用した食器も規制対象とする、世界的に見ても厳格な本法案は、2023年中の成立が待たれています。

規制対象となる「使い捨て食器」

香港の「製品環境責任(改正)法案」の規制対象となる「使い捨てプラスチック食器」の詳細が、香港環境保護省の特設ページ(https://www.greentableware.hk/en-US/Home/Index)により明らかになりました。

まずは規制の対象となる食器の種類について、下記の9種類であることが明記されています。

1)ストロー、2)マドラー、3)カトラリー(フォーク、ナイフ、スプーン)、4)お皿、5)カップ、
6)カップの蓋、7)食品容器(ボウル、ボックスなど)、8)食品容器の蓋、9)EPS(発泡スチロール)製の食器

後述しますが、規制開始後は食器の材質が原則紙製のみとなります。ある程度強度が要求されるカトラリーやボックス食品容器などについては、かなり高いハードルになる印象です。

緑色餐具 Green Tableware,出典_2023.9.15. https://www.greentableware.hk/en-us/

「食器」や「プラスチック」の定義

さらに本法案における「食器」の定義と、「プラスチック」の定義や禁止とされる素材についても説明があります。

■ 使い捨てプラスチック食器とは、一般に、全体または一部がプラスチックでできており、1回または短期間の使用を目的とした食器を指す
■ プラスチックとは、添加剤またはその他の物質が加えられたポリマーからなる材料を指す
■ 以下の素材の使用を禁止とする
① 従来のプラスチック(例:発泡ポリスチレン[EPS]、ポリエチレンテレフタレート[PET]、ポリプロピレン[PP]、ポリスチレン[PS])
② 酸化分解型プラスチック
③ 生分解性プラスチック (例: ポリ乳酸 [PLA]、ポリヒドロキシ酪酸 [PHB])
④ プラスチック内貼り (例: ポリエチレン [PE] 内貼り、ポリ乳酸 [PLA] 内貼り)

しかし、以下の素材は除かれるとあります。
・化学修飾されていない天然ポリマー(植物繊維など)
・単に添加剤(接着剤、インク、バインダーなど)として使用され、主要な構造成分として機能しないポリマー

広範囲で厳格な規制

規制される内容が、かなり厳しいものになったという印象です。
「酸化分解型プラスチック」については、2017年に欧州化学品庁が使用規制の共同宣言を挙げていましたので、規制されることはある程度予測されましたが、PLAを含む生分解性プラスチックまで規制対象になるというのは、世界的に見てもかなり広範囲ではないでしょうか。

この理由について、環境保護省のページでは以下のように説明されています。
『規制スキームは、海洋環境と人間の健康に対するプラスチック汚染の影響を最小限に抑えることを目的としています。(中略) その理由は、これらのプラスチックは、ほとんどの場合、紫外線や熱への曝露などの特定の条件下でのみ、マイクロプラスチック破片への断片化を加速する、または生分解することができ、それらの必要な条件が自然の海洋には存在しないことが多いためです。』

これまでの内容から、環境保護省では可能な限り再利用できる食器を持参し、使い捨て食器を使用しないことを奨励、または非プラスチックの使い捨て食器の代替品、植物繊維材料(木材パルプ、わらパルプ、バガスなど)などで作られる食器を推奨しています。

想定されるマイルストーン

製品環境責任(改正)法案は、非常に大きなスキームの変化を伴う法律となり、未だ審議中ではありますが、2023年中までには可決されることが見込まれています。
可決後の実施フェーズは二段階に分かれます。
第一フェーズでは、発泡スチロール製容器とストロー/マドラー/カトラリー/皿の、販売および店内・テイクアウトでの提供が禁止されます。
第二フェーズでは、第一フェーズではテイクアウトで容認されていたカップと蓋、容器と蓋までもが合わせて禁止がされるようになります。

第一フェーズは早ければ2024年第二四半期中に、第二フェーズの規制は2025年には実施される見込みとなります。
かなり具体的な内容が見えてきた香港の脱プラ規制ですが、このまま年内に可決、施行されるようになるでしょうか。継続モニタリングして情報をお届けします。

「脱プラ」に向かう香港市中の様子を伝えた前回のコラムも是非御覧ください。
市民の声で「脱プラ」に向かう、香港の今

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古山 亮太(ふるやま りょうた)

長瀬(香港)有限公司
        

2013年長瀬香港入社。香港在住10年目を迎え、香港・中国華南をベースに開発提案を行う。
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