UL 2809とは
「UL2809」は2012年11月に第1版が発行され、2020年3月に第5版が発行されました。規格名称には「Recycled Plastics」とありますが、内容は一般的に知られているリサイクル材だけではなく、「リユース」「リファービッシュ」「海洋プラスチック」なども網羅される、適用範囲の広い規格でした。
規格の中では、赤字で示す規定対象原料のことを「Defined Source」と呼んでおり、材料の由来で区別しているようです。
改訂で項目を増やした影響で、規格の内容が雑多になってしまったのか、2023年4月にUL ECVP 2809-1〜4の4つに分割されました。
画像提供:P.M.アドバイザー
分割前と分割後の規格内容を比較してみます。
分割の基準は「Defined Source」で、新たに「バイオマス材料」という言葉が追加になっています。ただし、製品への表示可能な文言などの規定が発行されていないので、今後UL 2809-5として発行される可能性が高いです。
UL 2809-1の内容は主に「CoCモデル」の定義、用語解説、含有量の計算式、CoCに関わる提出書類となっています。
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CoCモデル
規格運用のキーになるのは「CoC (Chain of Custody)」と呼ばれる、サプライチェーンにおける「Defined Source」の取り扱い方法で、詳細は「ISO 22095」で規定されています。CoCには、
① Identity preserved model / ID保存モデル
② Segregated model / 分離モデル
③ Controlled blending model / 制御されたブレンドモデル
④ Mass balance model / マスバランスモデル
という4つのモデルがあります。
①②はともに「Define Source」が100%の材料のモデルです。以下の図は ② Segregated modelを示しています。
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「Defined Source」である「input」が2つありますが、「PIR」という属性は同一です。同じ属性のものを混ぜるので、「output」も「PIR」とう属性に変わりはなく、「PIR:100%」と宣言可能です。
① identity preserved は、「input」が1つの場合のモデルを指しており、こちらの場合でも「output」は「PIR:100%」になります。
以下の図は③ Controlled blending modelを示しています。
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こちらは「Defined Source」である「input」が、「PCR」と「Virgin材」で構成されています。ブレンドの比率は管理するものとして、「output」の属性は「input」とは異なるものになります。
この場合、「Defined Source」の管理はもちろん、blendの制御の管理も重要になってきます。
このモデルでは「output」が1種類になっていますが、「controlled blending」と「output」間にさらなる工程があり、クレジットで管理する場合は④の Mass balance model が適用されます。
なお、プラスチックのリサイクル材の中でも「押出および射出成形中に発生するリグラインド」は適用除外との記述があります。
UL 2809のPCR材認可に必要な文書要件
認可取得に必要な文書要件については、「UL ECVP 2809-1」に各規格共通の必要文書が、「UL ECVP 2809-2」には個別に必要な文書が記載されています。
共通文書としては以下の記述があります。
・ 製品の設計仕様書
・ 最終製品が設計仕様にしたがって製造されたことを証明する文書
・ 供給材料が所定のDefined Sourceの、含有量を備えていることを保証するメーカーの文書
・ 検証された材料または製品の、属性とソースを説明するメーカーの文書
・ 製造中のDefined Sourceを含むソースの管理を実証するプロセス文書
・ 最終製品に使用されるすべての材料の、化学物質の重量とID、特性(例: リサイクルおよびバージン)付きの部品表(BOM)リスト
同様に、製造工程に関する文書要件の記述もあります。
・ すべての検証済み製品の製造拠点の住所
・ 製造仕様と製造工程の説明
・ 製造工程フローチャート
・ 材料の損失を含む、製造現場での材料のインプット/アウトプット
UL 2809を取得するということ
UL 2809は、規格を整備するにあたり、CoCというサプライチェーンのモデルを作り、リサイクルをシステムで考え、規定を作っているところに特徴が感じられます。
文書要件も、CAS No.を付したBOMなど、有害物質が含まれないかを見分けられる細かなところまで要求しています。
認可取得には、サプライヤーを含めたかなり厳しい環境整備が必要ですので、認可材料はメーカーともども信頼性がかなり高いと言えると思います。
PIR/PCRだけではなくリユース、リファービッシュ、海洋プラスチックまで視野に入れた適用範囲の広い規格ですので、製品メーカー側では今後さらなる活用が広がる可能性があります。