GRSとは

GRSはもともと、第三者認証機関である「Control Union」によって開発されたプログラムで、2008年に初版が発行されましたが、2011年1月に所有権が、非営利団体である「Textile Exchange」に譲渡されています。
最新版は2017年7月発効のバージョン4.0です。
規格の最大の特徴は、リサイクル材の含有率50%以上を要求していることです。20%でも条件付きで規格をクリアすることはできますが、その場合は製品への認可ラベル表示ができません。
GRSの適用範囲は繊維、衣類、金属、化学品などあらゆる分野に及んでいますが、運営元がTextile Exchangeに移って以降、「繊維業界における持続可能な実践を加速すること」が規格の目標となっており、化学品分野で実際の認可申請は減少しているものと推測します。

Textile Exchangeが管理・運営している規格を下表にまとめてみました。繊維素材に関する基準作りに重きを置いていることがご理解いただけるかと思います。(ロゴはいずれもTextile Exchangeの商標です)

画像提供:P.M.アドバイザー

認証実績

認証は「Control Union」、「IDFL」、「Intertek」、「Bureau Veritas USA」、「ECOCERT」などの機関が行なっており、認証の有効期間は1年で、毎年更新が必要です。
認可取得済み企業はTextile Exchangeのwebサイトで検索できます。
https://textileexchange.org/find-certified-company/
検索要素としては、上記8つの規格、認証機関、原材料、製造プロセス、製品形状、企業所在地など8つの「検索窓」があります。
規格 : GRS、製造プロセス : メカニカルリサイクル、製品形状 : チップ(ペレット)とした場合の、材質別および国・地域別の認可企業数は以下の表の通りです。

画像提供:P.M.アドバイザー


国別では中国、材質別ではPPを扱うメーカーが多いことがわかります。日本はペレット化される材料に関する登録はありませんでしたが、繊維系(yarns、fabrics)での登録は数社確認できています。いわゆる石化メーカーの登録は韓国のみで、他は全てコンパウンドメーカーでした。ご興味のある方は一度上記URLから検索されてみてはいかがでしょうか。

認証の内容

認証手順の詳細についてはTextile Exchangeでは公開されていませんが、概略は認証機関の一つである (一社)ケケン試験認証センター様のWebサイトで確認することができます。
https://certification.jwif.org/process/

GRSは、規定量以上のリサイクル材が含まれていることを保証するRCS(Recycled Claim Standard)、流通過程の健全性(CoC)を保証するCCS(Content Claim Standard)に、化学物質管理、児童労働排除など労働環境面での管理を加えた、質の高い要求事項で構成されています。

材料面では、CoCにおける企業間での材料の出荷・受領に関する書面要求があります。リサイクル材を含めたすべての材料に対して、製品に至るまでの出荷・受領を追うことにより、正しい含有量を保証することができます。

システム面では環境管理システム(EMS)、化学物質管理システム(CMS)が要求されています。EMSではエネルギー、用水、廃水/排水、排気、廃棄物の管理が求められています。CMSではGRS製品に使用されるすべての化学物質に対して、法規制に対するチェックを求めています。

PCR材に関して、GRS認証に対する私の本音は…

GRSは「リサイクル材含有率50%以上」が、ラベル表示の基準になっています。ただ、他のPCR材規格でも50%での認証は可能であるため、逆に50%以上に縛られるGRSは使い勝手の悪い規格に思えます。

別の面で、射出成形用のプラスチックの場合、リサイクル材50%のグレードを製造することはできますが、この材料を用いた製品を回収してPCR材を製造し、同じ品質(物性、外観)でもう一度再生するというのは、現実的にはかなり厳しいという印象を持っています。「持続可能な材料の使用」を続けていくには、個人的にはリサイクル材含有率の上限は30%程度ではないかと考えており、これであればプラスチックの材料リサイクルを「持続」していくことができると思っています。

PCR材に関する規格シリーズ

  1. 1. リサイクルプラスチックにおけるPCR材の位置付け
  2. 2. PCR材の製造について
  3. 3.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段① 『UL ECVP 2809』シリーズ
  4. 4.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段②『R2』(Responsible Recycling)
  5. 5.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段③『GRS』(Global Recycled Standard)
  6. 6.【解説】リサイクル材の工程・品質管理の手段④『SCS』(SCS Global Services)