本モジュールの目的

新基準のDraftは「GEC-CCM-2021」として、2021年10月4日に発行されています。
基準制定の目的は、「電子製品の製造および使用に起因する、炭素およびその他の温室効果ガスの、排出に対処するパフォーマンスベースの基準を確立すること」となっています。

2015年12月の「COP21 : 第21回気候変動枠組条約締約国会議」で採択された「パリ協定」において、気候変動に関する国際的な枠組みが決められて以降、各国それぞれ、あるいは国を超えて、地球温暖化の低減を実現するための施策が立ち上がり、実行に移されています。
新基準策定の事前調査にあたる「State of Sustainability Research」では、基準の対象となる製品を、テレビ・デスクトップPC・ノートPC・タブレット・などに分類(この分類をセクターと呼んでいます)し、どのセクターが、気候変動のどの要素にどれくらいの影響を与えているかを数値化し、基準開発のための科学的な証拠を提供しています。
他のモジュールもそうなのですが、今回の新基準は事前調査で現状を数値化し、目標に対する難易度を見極めた上で基準として公表しているのが特徴です。

本モジュールの概要

新基準の4つのモジュールの一つである「気候変動の緩和」は、6つの中項目と、それぞれの中項目に紐づく小項目から構成され、全部で19の基準から成り立っています。

各基準は従来通り、「Required:必須」と「Optional:任意」に区分されています。「Requred」を全てクリアして、初めて「Bronze」のランクが得られるのは従来と変わりませんし、「Silver」「Gold」とのランク分けが「Optional」の達成数で決まることも従来と同じです。
中項目の表題と「Required」「Optional」の区分の数は以下の表の通りです。

画像提供:P.M.アドバイザー

主な内容

数が多いので、「Required」の基準を中心に解説していきます。
以下の表と併せて読み進めていただけたらと思います。

#4.1.1
 従来からある基準ですが、規制対象のGHGを二酸化炭素(CFP : カーボンフットプリント)に限定しています。ただし従来も対象は二酸化炭素だけでしたので、実質変更はありません。
#4.2.1
 GHGの最終目標値を設定することを要求しています。この数値はSBTiによる検証も求めており、場合によってはSBTi認証を考慮する必要があります。
#4.3.1
 最終組立工場のエネルギー管理システムを要求しています。具体的にはISO 50001または同等規格の取得です。
#4.4.1
 再生可能エネルギーの調達を求められています。対象は「※Scope内の施設の総電力消費量の25%」です。
#4.6.1
 ENERGY STARを要求しており、これは従来でも規定されています。
#4.6.2、#4.6.3
 外部電源、およびバッテリー充電システムの効率測定になります。こちらは完全新規ですが、測定基準と要求が明確に記載されており、比較的対処し易いと考えます。

画像提供:P.M.アドバイザー



※「Scope」はサプライチェーンにおけるすべての温室効果ガスの合計排出量の分類を指します。「4.4」での対象は「Scopeは、製造業者が使用するGHG会計および/または報告慣行に含まれる施設のサブセット」とされていますが、少なくともScope1、Scope2は含まれるものと考えておいた方が良いと思います。
「Scope」に関する詳細は、以下の環境省情報が参考になります。

環境省.「サプライチェーン排出量算定の考え方」,参照_2023.3.20.
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/supply_chain_201711_all.pdf

難易度が高いと思われる基準

今回解説した新基準の中で、最も難易度が高いのは「#4.4.1 再生可能エネルギーの調達」ではないでしょうか。
再生可能エネルギーは、自社で生成したり、外部から供給を受けたりといった調達方法はもちろんですが、クレジットを使ったバーチャルな再生可能エネルギーの調達という手段もあります。
しかし、このバーチャルな仕組みにも供給量の制限はあるため、幅広い情報収集が必要だと思います。

本コラムとは直接関係ありませんが、plaplatでは、再生可能エネルギーやカーボンクレジットに関するソリューションの紹介も予定されているそうです。
機会がありましたら是非そちらもご覧ください。



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【解説】改訂版「EPEAT」の新基準
0. EPEAT及び改訂の概要
1. 気候変動の緩和
2. 資源の持続可能な利用
3. 懸念化学物質の削減
4. 企業のESGパフォーマンス