公開日:2023/05/09

最終更新日:2024/04/01

【Draft解説】改訂「EPEAT」の新基準
モジュール④企業のESGパフォーマンス

このコラムでは最後にリリースされたモジュール「企業のESGパフォーマンス」について説明していきます。
ESGの「E」はEnvironment:環境、「S」はSocial:社会、「G」はGovernance:企業統治 を意味します。具体的には温暖化や水不足などの環境問題、人権問題や差別などの社会問題、それらに対して企業がどのように社内統制し対応していくのか、を問われる基準になります。

本モジュールの目的

基準のDraftは GEC-ESG-202X として、2022年11月10日に発行されています。
基準制定の目的は、「エレクトロニクス サプライ チェーンにおける、労働および職業上の健康と安全に関する懸念を軽減するための、パフォーマンスベースの基準を確立すること」となっています。
平たく言い換えると、製造業者=労働者が、より安全で衛生的な環境で持続可能な労働を行なうことを可能にし、労働者が保護されることによって、購入者が、より持続可能な製品を安定して購入できるようにすることを目的としています。

本モジュールの概要

「企業のESGパフォーマンス」モジュールの基準は、3個の中項目と、それぞれの中項目に紐づく小項目から構成され、全部で13の基準で成り立っています。
中項目の表題と「Required」「Optional」の区分の数は表の通りです。

画像提供:P.M.アドバイザー



#7.2.1を除いた項目は、「Required」「Optional」の区分に関係なく、どれも全く新しい要求です。
ただし「#7.3 責任ある鉱物調達」は、米国で2010年に法制化された「金融規制改革法第1502条」、EUで2021年に開始された「紛争鉱物取引規制」と関連する基準であるため、EPEATでは新規基準になりますが、実際には対応済みの内容と思います。

主な内容

数が多いので、「Required」の基準を中心に解説していきます。

画像提供:P.M.アドバイザー



#7.1.1
 製造業者に対して、労働及び労働安全衛生に関するマネジメントシステムを要求しています。4S(整理・整頓・清潔・清掃)のような安全衛生ではなく、主に人権や賃金などの労働条件に関するマネジメントシステムの要求です。
 代表的なシステムに「SA8000」があります。詳細は次のリンク先にまとめられています。


 SAI(Social Accountability International).「SA8000® standard」,参照_2023.5.9.
 https://sa-intl.org/programs/sa8000/

#7.1.2
 「付属書B」とは、本モジュールDraftの「付属書B」を指しています。具体的にはこちらになります。(クリックすると別ウインドウで表示します)

#7.1.3
 #7.1.2が「付属書Bの内容をサプライヤーへ要求する」ことであったのに対し、#7.1.3はサプライヤーが「付属書B」の内容を実行しているかの監査を要求しています。

#7.1.7
 労働関連の傷害や疾病の予防、安全で健康的な職場の提供といった、主に職場環境に対するマネジメントシステムを要求しています。従来「OHSAS 18001」でカバーされてきた内容になります。OHSAS 18001 は2021年3月11日をもって失効になっており、ISO 45001 へ発展的に移行されています。

#7.2.1
 製造業者に対して ISO 14001への対応を要求しています。

#7.2.2
 最終の組立業者に対して ISO 14001 への対応を要求しています。

#7.3.1
 3TGと呼ばれる、すず(tin)・タンタル(tantalum)・タングステン(tungsten)・金(gold)の取り扱いに関する注意義務です。これらの鉱物資源は外貨獲得の重要な手段となっており、これらを巡って反政府団体による国内紛争や国家間の紛争が起きています。また採掘に関わる労働者に対しても非人道的な扱いが度々報告されています。
 この状況を改善するために、OECDにより「Due Diligence(適切な注意)」が公開され、これに基づく年次報告を義務つけています。詳細は次のリンク先にまとめられています。


 OECD 「OECD Due Diligence Guidance for Responsible Business Conduct」,参照_2023.4.12.
 https://www.oecd.org/investment/due-diligence-guidance-for-responsible-business-conduct.htm

#7.3.3
 3TGのサプライチェーンに関する要求です。リサイクルされた3TGであれば流通経路は問われません。一方、新規採掘の場合は、採掘国含めて流通経路を問われます。

 #7.3.1、#7.3.3 は、米国で2010年に法制化された「金融規制改革法第1502条」、およびEUで2021年に開始された「紛争鉱物取引規制」と関連する基準であるため、EPEATでは新規基準になりますが、3TGを含む製品を取り扱っている製造業者は、実際にはすでに対応済みの内容と思います。

注目すべき基準

新規の基準が多いため、本モジュール全体が注目の基準になります。
ただ、SA8000 や ISO 45001、ISO 14001のように、規格認証を取ることによってクリアされる基準がほとんどですので、内容的に対応が不明瞭なところはないと思われます。認証基準に沿って課題を一つずつクリアにすることが肝要になります。

改訂概要についての回でもお伝えしましたが、現段階での完全移行予定日は、2025年12月31日となっています。本コラムが皆様のお役に立てば幸いです。個別のお問い合わせやご質問は、以下のボタンよりお寄せください。



↓↓ その他のモジュールの改訂についてはこちら ↓↓
【解説】改訂版「EPEAT」の新基準
0. EPEAT及び改訂の概要
1. 気候変動の緩和
2. 資源の持続可能な利用
3. 懸念化学物質の削減
4. 企業のESGパフォーマンス

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profile

小池 寧 (こいけ やすし)

P.Mアドバイザー
<専門分野>プラスチック材料、潤滑剤、金属プレス材料、など

<略歴>事務機器メーカにて機構設計及び機構設計の標準化・材料のコストダウン・新人教育などに従事。2018年3月に現業を起業する。