公開日:2024/02/29

最終更新日:2024/02/26

AMRIAが実践する、マテリアルリサイクル推進に向けた戦略的アプローチ

処理の難しいプラスチックのマテリアルリサイクル推進においては、技術的要因のみならず法律や各種規格、政治的背景や消費者意識など様々な課題に直面します。そのような状況下で、確実に前に進んでゆくためには「技術的アプローチ」と「戦略的なアプローチ」を両輪で考えることが不可欠です。

回収ターゲットの明確化

包装材料などは、複数の異なる素材を併用することで、求められる機能性を付与しています。
それ故、既存のマテリアルリサイクル方法では、これらの複合素材を回収し、良質で均質な物性の材料に再生することが極めて難しいため、その多くがサーマルリサイクルへ回されていることは周知のとおりです。

しかし排出元によって、回収できる廃プラの事情が少々異なります。
工場から排出される廃プラスチック類は、一般消費者から排出されるものに比べて汚れが少なく、分別が容易で拠点毎の排出量も多いため、衛生リスクが比較的小さいこと、又、回収コストを低減できる利点があります。
そこで私たちは、まず工場から排出される包装材料系の産業廃棄物を最初のターゲットとし、マテリアルリサイクルによる新たな資源循環の仕組み構築に向けた議論をスタートさせました。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

アウトプット先の明確化

本研究での解決手段の1つに位置付けている「MF式混合溶融技術」(2/16掲載記事参照)を用いたリサイクル材料は、様々な成型方法に対応可能ですが、「アルミなどの異物が混ざることもある」、「食品関連に使用できるほど衛生的ではない」、「不透明で色の自由が効きづらい」などの理由で現状は用途が限られています。

そこで、このリサイクル材料を用いた出口戦略を練るなかで、「高い衛生性や意匠性が不要」、「バージンを使用したワンウェイ製品」、「安定した一定量の需要」を条件に検討した結果、「ごみ袋」がターゲット用途になると気付きました。
同じような属性として、工業資材、農業資材、物流資材などがあります。これらの資材も、廃棄されることが前提の製品であり、一般的な製品に比べて、衛生面や品質要求が低いため、製品化しやすく、市場に受け入れられる可能性があると考えています。

但し、「使えるモノが出来た」だけでは世の中に浸透しません。一般消費者がごく当たり前に再生資源を使うことができる社会を醸成するためには、前述の様々な課題をはじめ、クリアしなければならないハードルが山積しているのも事実です。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

既存手法の補完

現在、プラスチックリサイクル技術として様々な方法が検討、導入されていますが、それぞれメリット/デメリットがあります。
私たちは、どの方法が正解かではなく、要求品質に応じてリサイクル技術や材料を使い分けることが重要と考えています。バージン材料と同等の品質が要求される場合には、ケミカルリサイクルが最も有効であることは間違いないでしょう。しかし、現段階では大規模なプラントが必要であるためコスト高となり、設備の普及が中々進まないのが実状です。
一方、マテリアルリサイクルは、原資の品質やリサイクル工程で生じる物性劣化により、バージン材と全く同様に使用することが難しく、パレットや雨水貯留槽など、一部の射出成形品に用途が限定されてしまっています。

そこで、高度マテリアルリサイクル研究会が狙うのは、ケミカルリサイクルと既存のマテリアルリサイクルの中間技術としての位置付けです。
まだ、手を付けられていない領域を我々が担い、これまでマテリアルリサイクル品では実現が難しいとされてきたインフレーション成型、ブロー成型、カレンダー成型、押出成形など、幅広い加工方法に対応することでプラスチック資源循環推進の底上げに大きく貢献できるものと自負しています。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

地産地消の小規模資源循環モデル

研究会活動における「MF式混合溶融技術」活用は、あくまでマテリアルリサイクルの手法の一つです。
しかし、比較的設備導入ハードルが低いこちらの技術を保有する小規模施設を、地域内で複数点在させることが出来れば、輸送CO2低減にもつながり、地産地消の資源循環モデル構築も現実味を帯びてきます。

研究会の発起人でもある「公益財団法人全日本科学技術協会(通称:JAREC)」は、地域社会とのネットワークを有しており、小規模、且つ、低 CO2 でリサイクル可能なこのリサイクルスキームを、参画企業や自治体などと連携して展開することで、全国各地での小規模なマテリアルリサイクルスキームの実装を目指しています。

画像提供:公益財団法人全日本科学技術協会

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齋藤 太郎

<所属>公益財団法人全日本科学技術協会
<専門分野>産官学連携支援、イノベーション創発活動支援
大手住宅設備メーカーなどを経て現職。高度マテリアルリサイクル研究会の発足に携わり、現在も発起人の一人として活動。