公開日:2024/03/12

最終更新日:2024/03/11

実証報告!プラスチック成形品のカーボンフットプリント算出

2050年のカーボンニュートラルを目指して、サプライチェーンにおけるカーボンフットプリント(CFP)算出と、そのデータのグローバルでの共有が議論され始めています。IAF(産業オートメーションフォーラム)は、昨年の国際プラスチックフェア(IPF2023)にて、実際の成形現場を対象とした、成形工程におけるCFPデータの計測・算出の実証実験を行ない結果を報告しました。

カーボンニュートラルとサプライチェーン

地球温暖化にストップをかけるため、カーボンニュートラルへの取り組みはグローバルな課題として広く認識されるようになりました。
温室効果ガス(Green House Gas: GHG)の削減のためには、誰がどこでどれだけの GHG を排出しているかを計測・集計する必要がありますが、これは容易ではありません。
特に産業界において、サプライチェーンを遡って集計することは大変な困難を伴います。この課題に取り組むため、ヨーロッパでは、GAIA-X、Catena-X と呼ばれるデータ連携のルールづくりが始まっており、日本でも同様の動きが活発化しています。

各企業が自社の原単位(製品一個あたり)の信頼できる CFPデータを納入先に提供することが求められる風潮が生まれつつあります。

Green x Digital コンソーシアム ルール化検討SWG.「Green x Digital コンソーシアム CO2可視化フレームワーク Edition 1.0」,出典_2024.3.11. https://www.gxdc.jp/pdf/CO2_VisualizationFrameworkEdition_1.0.pdf
画像提供:Green x Digital コンソーシアムCO2可視化フレームワークバージョン 1 から抜粋


プラスチック成形品についても同様で、調達した材料のCFP に自社が排出した CFP を足し合わせ、成形品1個あたりの CFP を顧客へ提供することが求められるようになると予想されます。

GHG の排出量を議論するために用いられる基準を「GHGプロトコル」と呼びます。このGHGプロトコルでは、自社で直接に排出するものを SCOPE1、消費した電力に依存するものを SCOPE2 と呼び、サプライチェーン等に依存するものを、上流側・下流側を含めて SCOPE3 と呼びます。
この SCOPE3 はさらに分類され、購入した部素材に由来する排出分を SCOPE3 カテゴリー1 と呼び、サプライチェーンを遡る際には極めて重要です。また、GHG には CO2 以外にもさまざまな種類があるため、これらをすべて CO2 に換算した排出量で扱うことになっています。この CO2 に換算した GHG排出量が、その対象の CFP となります。

画像提供:(株)@bridgeテクノロジー

簡単ではない製造現場のデータ計測

プラスチック成形品の CFP を算出するには、どうしたら良いのでしょう。
原料プラスチック材料の原単位CFPは今後、材料メーカが提供してくれるようになるでしょう。しかし、実際には、それが自社の個々の成形品にどれだけ使用されているのか、リサイクル率は何%なのか、そして集計単位は年度毎か月度毎か、あるいは生産指図(ロット)毎かなど、考慮すべきことはさまざまです。

さらに自社でのGHG排出量を計測集計しなければなりません。
成形工程のエネルギー源は主に電力です。すべての製造設備とユーティリティ設備の電力、照明・空調等の電力を集計し、製品原単位に直課できるものは直課し、直課できないものは按分比率で配賦する必要があります。
また、消費電力を計測するためには計測器が必要です。正確にリアルタイムに計測するには、各設備装置一台ごとに電力計を設置しなければなりません。いったい何台の電力計が必要になるでしょう。
このように、製造現場のCFPデータの計測は簡単ではありません。

画像提供:(株)@bridgeテクノロジー

「これなら」出来るを実証実験してみました

IAF(産業オートメーションフォーラム)では、中小製造業が自力で導入、立ち上げ、実践できる DX/IoTプラットフォーム「ia-cloud・Node-RED」を開発し、普及に取り組んでいます。

昨年、国際プラスチックフェア事務局やプラスチック機械メーカーと協働して、IPF2023でカーボンニュートラルに挑戦する実証実験(PoC:Proof of Concept)を実施しました。
具体的には、実際の成形工場に、ia-cloud・Node-REDプラットフォーム対応の計測器や通信機器を設置し、GHG排出量をクラウドに収集し、成形品一個あたりの CFP を算出してみました。
成形機・乾燥機・温調機は無線電流計を設置して、リアルタイムでの簡易的な電力計測を行い、待機電力や運転時の消費電力などが事前に計測できる設備には、三色灯から運転状態を検出し消費電力の推定を行いました。
さらには、工場のユーティリティ設備や空調・照明等の消費電力を、ia-cloud・Node-RED対応の電力計で計測し、占有面積や生産額等による按分を行い、その値を配賦しました。

これらの消費電力量から CO2換算計数を用い、SCOPE2 の GHG排出量を算出しました。この値と、段取り時間、時間当たりの生産個数、生産管理情報を合わせて、製品原単位の SCOPE2 に対する CFP を求めることができました。
また、使用材料のCFPと、ランナー部分も含む材料使用量・キャビティ数・リサイクル率および成形品の生産数(生産ロット毎)から購入材料由来のGHG排出量(SCOPE3カテゴリー1)を算出し合算することで、生産ロットごとの成形品原単位のGHG排出量を求めてみました。

画像提供:(株)@bridgeテクノロジー

現実解を求めて

近い将来、納入先から個々の成形品の原単位CFPデータを求められる時代がやってくるでしょう。しかしながら、製造現場はまだその準備ができていません。
計測精度や集計単位についての枠組みすらまだ決まっていません。

我々は「ia-cloud・Node-RED」プラットフォームを使い、実施可能な「現実解」を求めて、PoCを実施しました。
個別の設備の消費電力を、簡易的な電流計測により求めたり、運転状態からの推定したりして計測してCO2排出量に換算しました。建屋単位や生産ライン単位で消費される電力は、面積や生産量などの過去の実績値を基に按分して配賦しました。
そして、これらを合算することでSCOPE2のGHG排出量を算出することができます。
一方、SCOPE3カテゴリー1の値は、上流の素材メーカから入手したデータを基に算出することができます。

生産現場における生産管理では、どの品番の成形品を、いつから、いつまで、何個生産(良品数)したのかを、記録しなければなりませんが、これもCO2排出量の算出を複雑にします。
今回報告した実証実験結果は、中小企業も含めた製造現場がギリギリ実施可能な「現実解」を想定して提案したものです。

まだまだ課題は山積しています。ともに挑戦していただける、ユーザさんや機械メーカさんを広く募集しております。

なお以下に、IPF2023での展示内容やパネルを掲載しております。
また、ia-cloud・Node-REDに関する情報へのリンクもありますのでご覧ください。
https://ia-cloud.com/ipf2023pocdemo/

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橋向 博昭

<所属>IAF(産業オートメーションフォーラム)幹事、(株)@bridgeテクノロジー代表取締役
<専門分野>製造業DX/IoT専門家・中小企業診断士
製造業中心の中小企業診断士であり、DX/IoT分野での企業支援活動と、コンサルティングやソフトウエア開発を行っています。