公開日:2023/12/15

最終更新日:2023/12/18

脱炭素目標達成の鍵「移行計画」の策定ステップ ~ACTを例に解説~

2021年、TCFDが新たにガイダンスを提示して以来、「移行計画」という言葉が広がっています。
また、CDPの質問内容に移行計画に関する事項が増加していることや、TPTにおける移行計画の開示要求など、様々な機関で移行計画が求められるようになってきています。
今回のコラムでは、そもそも移行計画とは何か、なぜ必要とされているのか、どのように策定すれば良いのかについて解説します。

なぜ、移行計画の策定に取り組む必要があるのか?

なぜ、移行計画の策定に取り組む必要があるのでしょうか?背景には金融機関・投資家の投融資判断が厳格化していることが挙げられます。
企業が脱炭素化に向けた取り組みを進めた場合において、当該企業の事業は継続可能なのか、その具体的な道筋を示すことが求められています。
環境省は脱炭素経営のフェーズには4つがあるとしています。
この内、多くの企業ではサプライチェーン排出量の算定と排出削減目標の設定までを着手または完了している印象です。
一方、「排出削減計画の策定」については開示を行っている企業は少数にとどまっています。

脱炭素ポータル.「脱炭素経営の手順とは?」,出典_2023.12.15.
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20220728-topic-29.html


しかし、CDPの質問内容に移行計画に関する事項が増加していることや、TPTにおける移行計画の開示要求など、国際的には移行計画の開示要求が高まっています。
2030年、2050年の期限が迫る中、企業に求められる移行計画の内容は精緻化しており、経営戦略と整合した合理的かつ実現性のある移行計画の策定が求められていると言えます。

カーボンニュートラルの実現に向けた課題と、対応に関する考え方

多くの企業は脱炭素施策として、太陽光パネルの設置や、高効率機器への切り替えなどを進めています。
しかし、これまでに検討した再エネ・省エネ施策をすべて実施しても、CO2削減量には限りがあり、2030年、2050年の目標達成には程遠いというお声も耳にします。また、経営戦略と脱炭素取り組みの紐づけ方がわからないといった方もおられるのではないでしょうか。

これらの課題に対応するためには、カーボンニュートラルの実現に向けた戦略を「守り」と「攻め」の2つの視点で捉えることが重要です。
守りの領域とは、現在の事業の存続を脅かすリスクへの対応と言い換えることが可能です。たとえば先程述べたような電力や機器の切り替えに加え、調達リスクのある原材料を海外産から国内産に切り替えることでサプライチェーン全体のCO2排出量を削減する施策などが該当します。
他方、攻めの領域とは、顧客や社会の将来リスクや潜在ニーズを解消するための施策です。言い換えると、貴社が主体となり脱炭素に貢献する新たな事業やサービスを創造・提供することです。
この両輪を同時に回すことで、現在のCO2排出量の削減と、脱炭素を基軸とした経営戦略に基づく、自社の企業価値の向上が可能になります。

画像提供:Codo Advisory

ACTによる移行戦略

では、具体的にどのような手順で移行計画を策定すれば良いのでしょうか?
ここでは、移行計画の策定を求めている国際機関のうち、最も網羅性が高く、企業の移行計画策定に特化したツールを唯一提供している「ACT」を例に実効性の高い移行計画の策定方法を紹介します。

ACTは、主要なグローバル環境団体であるCDPと、フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)によって開発された脱炭素移行戦略イニシアチブです。上述したツール提供に加え、CDPが定義する移行計画の要素を網羅している点が強みとして挙げられます。
ACTでは移行計画のポイントを「9つの要素」で定義しており、とりわけ移行計画にはビジネスモデルの変革が欠かせないということを強調している点や、脱炭素化に向けた投資計画、顧客・サプライヤー・政府/業界団体に対するエンゲージメントなど、社外との関係が重要であると示している点は特徴的です。

画像提供:Codo Advisory


次に、ACTにおける移行計画の策定ステップを見ていきましょう。大きく5つのステップで構成されています。

①現状把握
質問に回答することで、移行戦略に必要とされる9つの要素の実施度合いを可視化します。

②戦略分析
2030年、2050年の脱炭素目標に対する自社の現在・将来の排出量予測を可視化します。また、気候変動に関する自社のリスクと機会を洗い出し、マテリアリティを特定します。

③ビジョンと戦略の検討
2030年、2050年の脱炭素目標と整合した自社のありたい姿を言語化します。また、ありたい姿を実現するための戦略を9つの要素を用いて検討します。

④戦略プランの立案
③で検討した戦略を「つくる」「なくす」「増やす」「減らす」の4軸をふまえて、アクションの素案を検討します。

⑤アクションプランの策定
④で検討した施策の実施における効果と、実施に必要な事項を詳細に検討します。例えば、当該アクションの実施によるCO2削減効果、実施にかかる費用、自社における実施部門、実施にかかる工数・必要メンバー数などを可能な限り詳細化します。


画像提供:Codo Advisory


以上がACTにおける移行計画の策定ステップです。なお、これらのステップの実施に当たっては、担当取締役を含む部署横断型のプロジェクトチームを構成することが推奨されています。
実施期間の目安としてはScope1,2,3の算定が完了している企業であれば半年〜1年程で脱炭素化に向けた経営判断を促す計画を策定することが可能です。

まとめ

脱炭素に関する企業への情報開示要求や、法規制の動きは全世界で拡大しています。
排出削減目標を設定していても、その実現に向けた具体的な計画が開示されていないと「グリーンウォッシュ」と言われかねません。
移行計画の策定は未来の計画を策定することでもあります。
そのため、現時点では予測不可能な事象が多々あると思いますが、まずは可能な範囲から策定・開示を行い、数年ごとに経営計画に合わせてブラッシュアップを繰り返す方法が推奨されています。

本記事が皆さんの移行計画策定の第一歩となれば幸いです。
次回は、具体的なアクションを実施する際に課題となりやすい、社員のサステナビリティ理解浸透についてお伝えしたいと思います。

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野田 英恵(のだ はなえ) 

<所属>Codo Advisory 株式会社 https://codo.jp/  
<専門分野>脱炭素関連全般

<紹介文>移行計画策定、GHG算定、情報開示、社内教育に加え、
     貴社状況に合わせたコンサルティングも実施しております。
     お問い合わせはこちらへ【 https://codo.jp/?page_id=1862