世界を本気にさせた「1.5度特別報告書」

plaplat編集部より先日レポートさせていただいたように、2015年COP21で採択された「パリ協定」は、新興国も含めた参加国全てがGHG(温室効果ガス)削減目標を設定し、世界の気温上昇を2℃未満に抑えることに合意した、世界がカーボンニュートラルへと向かう転換点となりました。これを受け日本は、2016年5月13日に「2030年までに2013年度比で26%」、長期的目標として「2050年までに同80%」のGHGの排出削減を目指すことを閣議決定しています。

しかしその後、2018年に「気候変動に関する政府間(IPCC)」が「1.5℃特別報告書」にて、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるには、GHGを2030年までに2010年比で45%削減し、2050年前後に実質ゼロにする必要があると発表しています。
要するに、それまでの日本の目標では足りないとされたワケです。

そして2020年10月に、当時の菅義偉首相が「2050年でのカーボンニュートラル」を表明しました。コロナ禍で混乱する中でのこの発表に、もしかしたら『なんでこんな時に?』と思った方もいたかも知れません。
しかし、コロナと同じように気候変動も、地球存続にかかわる重要問題だったという事でしょう。

経済産業省.「世界の温室効果ガス排出量(2018年)」,出典_2023.4.11.https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/html/1-2-3.html

警鐘を鳴らした「排出ギャップ報告書」

次のターニングポイントは、2021年4月22日の米国主催「気候サミット」です。
ここで日本は「2050年でのカーボンニュートラル」と整合性のある野心的な目標として、「2030年にGHGを2013年度比46%削減」することを目指し、さらに50%の高みに向け挑戦を続けることを表明しています。
そして半年後の2021年10月22日に、上記の新たな削減目標を反映した「NDCNationally Determined Contribution=国が決定するGHG排出削減貢献)」を決定し国連へ提出しています。これが今日のさまざまなGHG削減目標の元になっている数値という事ですね。

続いて、2021年10月26日に国連環境計画(UNEP)が発表した「排出ギャップ報告書」もかなり重要です。
翌月のCOP26で決定されることとなる「グラスゴー気候合意」の前にはこの報告があり、その内容は、同年の9月末までに提出された各国の更新版NDCを集計した結果、NDC設定以前の2030年GHG排出量予測に対して7.5%しか削減することができず、温暖化を1.5℃に抑えるために必要な55%削減とは大きなギャップが生じていて、このままでは、今世紀中に産業革命前と比較して2.7℃以上の気温上昇が起こるというものでした。

4年間を締め括った「グラスゴー気候合意」

前段のUNEP「排出ギャップ報告書」を受け、COP26はより強い危機感を持って臨まれ、気温上昇を1.5℃未満に抑えるパリ協定の目標を達成可能とするべく「NDC」を再検討する旨が盛り込まれた「グラスゴー気候合意」が採択されました。
しかし、国連のグテーレス事務総長は、閉幕に当たりこのように語っています。
『重要な進展があったとはいえ、まだ不十分だ。私たちは、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという目標の維持のために、気候変動対策を加速させなければならない。』

その理由の一つに、この気候合意では初めて「石炭火力発電の段階的な削減(phasedown)」が盛り込まれているのですが、当初目標であった「段階的な廃止(phase-out)」という表現は、インド・中国などの反対などにより盛り込まれなかったことがあります。

とはいえ、2018年のIPCC「1.5℃特別報告書」から、2021年のCOP26での「グラスゴー気候合意」までの間で、確実にカーボンニュートラルの動きは加速された印象です。
この間に2030年までの削減目標の積み増しがなされ、これが今、私たちが行なっているサステナビリティに向けた取組みの基礎になっており、世界的なやる気を引き起こしたのではないかと思うのです。

注目の「G7 気候・エネルギー・環境大臣会合」

さて4月15-16日には、札幌で「G7 気候・エネルギー・環境大臣会合」が開催されます。
昨年ドイツで開かれた同会合では、日本以外の欧米6カ国から年限を区切った石炭火力発電廃止が主張されましたが、日本は30年以降も石炭火力を活用する計画だったため、これに抵抗している構図となっています。

今回ホスト国となる日本は何を主張し、どの様な対応を迫られるのか。Tomも現地に入りその雰囲気を感じて来たいと思います。(後日レポートします!)