Scope3を理解しよう

こんにちは、plaplat編集部のTomです。今回はハッキリ申し上げて難しい、「組織のサプライチェーン全域におけるGHG排出量の算定」について紹介したいと思いますが、この難しさは、GHGプロトコルの「Scope3」の複雑さが起因しているといっても過言ではありません。今回は、そのScope3に絞ってレポートしていきます!

改めてScope1、2の内容をおさらいすると、Scope1は「自身が直接排出したGHG」、Scope2は「自身が使用したエネルギーに関連する間接排出」でしたね。これは分かりやすいです。

一方、Scope3は「それ(Scope1、2)以外の排出」とされていて、当然中身はさまざまとなりますので、それらを分かりやすく、算定しやすくする為に、Scope3だけは更に約15項目に分かれています。
以下の表がその分類です。

環境省.「サプライチェーン排出量算定の考え方」,出典_23.7.7.21
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/files/tools/supply_chain_201711_all.pdf

項目の事を「カテゴリー」と呼んでいて、ちょっと詳しい方だと「Cat.(カテ)」と略しています。
「Cat.1」だと、Scope3のカテゴリー1、即ち「調達された部品や原料の事」を指します。
ちょっと玄人になった気分になります。
しかし、15個もある項目を眺めていても、なかなか理解しにくいですよね。では、よく使う二つに絞って見てみましょう。

最も多くの割合を占めるCat.11

私が先ず覚えるべきとお勧めするのが、Cat.11の「販売した製品の使用」です。

実は電子機器メーカーや自動車メーカー等において、もちろん差はあるものの、GHG排出量の最も大きな比率を占める項目がCat.11なのです。特に顕著な例では、Scope1、2、3 を合わせた全体の90%以上がCat.11による排出という企業もあります。

例えばドライヤーを製造する家電メーカーで考えてみましょう。

Cat.11は、「ドライヤーを購入した使用者が、製品寿命が来るまで使い切るために必要な電力を作る際に排出されるGHG」と言い換えられます。
ドライヤーは毎日使われ、しかも製品寿命が10年だとすると、相当な電力使用量になります。その使用する電力が発電される際に、火力発電などでCO2が出ますので、これを「販売した製品が使用される際に排出するGHG」としてカウントする訳です。



上の図はそれをイメージしたものですが、電力総量は計算できていますが、これをGHG量にどの様に変換すればよいか分かりませんね。
その変換係数こそが、カーボンニュートラルを進めるうえで重要なポイントになります。
例えば日本の電力会社さんは、自社が発電を行なう上で発生したCO2量(GHGとして)を公表しています。
また、国立環境研究所地球環境研究センターさんが公表している「産業連関表」から算出された環境負荷原単位データも活用できます。

環境省のホームページからこの公表データが取得できますのでご参照ください。
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html

その他にも、自社で製品別に算出した原単位や、専門の方々や組織が算定したデータもあります。これは「インベントリデータベース」とも呼ばれます。

サプライチェーンでのデータ連携が重要となるCat.1

次には重要な項目はCat.1でしょう。 定義としては「原料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達」とされています。要するに原材料、部品のGHG排出換算値と考えれば良いと思います。

一つの製品を作るには、色々な部品や原料を購入します。プラスチック部品であったり、鉄の板であったり、ゴムパッキンであったり、それは多岐にわたります。
その全てをそれぞれのGHG原単位で換算し、合計したものがCat.1なのです。
そうです。この個々の製品毎のGHG原単位こそが、先日レポートした「CFP」の値という事なのです。

plaplatでは、特にこのカテゴリーにおいて、よりCFP値即ち、GHG原単位の少ない商材をご紹介しようと努めています。 しかし、このGHG原単位は、まだその活用のルールが明確とは言えない状況にあります。
その為、多くの企業は前述の産業連関表から算出された「業界平均値」や専門組織が算定した「代表値」を活用し、自社が排出するGHG量を算定しているのです。

本来は製品メーカーが算出した個々の製品のGHG原単位(一次データ)を使用すべき、と推奨されています。

一次データを使える状況にない今の社会

この世界において、まだ製品個別のCFP値を用いて、自身のGHG排出量を把握できている組織はほとんどありません。
そのルールメイキングが、今後の社会課題と言えるでしょう。
plaplatはその課題解決に向けても、さまざまな活動を企画していきたいと考えています。
ご期待ください。