地球にやさしいプラスチック利用環境へ向けた課題
循環型プラスチック経済の実現に向け立ちはだかる問題点をシンプルに大別してみましょう。
・再生プラスチック製品は従来のプラスチック製品製造よりコストがかかる
・再生プラスチックは品質が劣化する(ダウンリサイクル)
・使用済みプラ回収制度が確立されていない
・再生可能プラと不可プラの選定が困難
「再生プラスチックはコスト高=新しいプラスチック製品の方が製造コストが低い」
プラリサイクルが広まらない何よりの原因はコスト面だと言えます。採算が取れないのが現状です。また回収・選定における制度・技術が確立されていないこともプラ再利用が進まない原因のひとつです。
食品パッケージや色のついたペットボトルなどは混合プラスチックと呼ばれ、マテリアルリサイクルでは対応できず、焼却されるか投棄されてきました。
画像提供:エカート(株)
課題解決のための欧州戦略~法規制と技術開発~
欧州では、人々の意識変革や、政府による課税など、さまざまな分野でプラスチック問題解決に向けた取り組みが行われています。
循環経済行動計画(CEAP)が2020年に採択され、持続能な成長のためのアジェンダが公開されました。
欧州委員会は2030年までにヨーロッパのすべての梱包材を再利用またはリサイクル可能にする計画を打ち出しています。またヨーロッパでは、「リサイクルプラ製品の方が高くても環境のために選ぶ」といった購買意欲が生まれています。
地球環境に配慮した経済行動はより”Cool”だと感じる風が吹いているのです。
欧州のプラスチック問題に対する戦略は政治主導で推進
・プラスチックの使用量を減らす=習慣・意識の改革
・シングルユースプラスチックに対する課税
・マイクロプラスチック添加の禁止
・プラスチック製品における再生可能/不可など明確な表示の義務
・リサイクル制度の整備
法規制や意識改革に後押しされ、技術開発も進んでいます。欧州では毎年約3000万tのプラ廃棄物が発生し、そのうち約70%がリサイクルされていません。
従来のリサイクル技術ではカバーできない70%の廃プラをリサイクルできる技術がケミカルリサイクルです。
プラスチック廃棄物には、多くの不純物、多層フィルム、金属、染料、添加物が含まれています。これらの混合物をリサイクルループに戻すには、大規模なケミカルリサイクルプロセスを確立する必要があります。
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ケミカルリサイクル・製品品質を左右する技術とは?
先進的リサイクルとも呼ばれるケミカルリサイクルは、プラスチックを元の分子に戻すことができます。
プロセスとして加溶媒分解、熱分解、酵素分解の3種類があり、可溶媒分解と熱分解は実証され生産プラントもあります。
3つ目の酵素分解に関しては研究開発段階なので、加溶媒分解と熱分解について簡単にお話ししたいと思います。
可溶媒分解は試剤を使用しポリマーを分解・モノマーの状態に解重合します。
PET、PA、PLA、PUなどヘテロ原子を持つポリマーに有効なプロセスで、熱分解に比べてプロセス温度が低いのが特徴です。対して熱分解は無酸素・超高温下(450°~700°)でポリマー鎖を外しオイルの状態に還元するプロセスで、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)など、ポリオレフィンのリサイクルに適しています。
そしてどちらのプロセスも、プロセス中に変化する粘度に応じた攪拌や確実な熱伝達など、多段階で非常に高度な攪拌技術が必要とされます。EKATOは、稼働中のケミカルリサイクルプラントの実績や、CFDによるプロセス研究を通してケミカルリサイクル成功に欠かせない混合技術の研究・提供を行っています。
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プラスチックのクローズドループ実現に向けて
環境問題は課題山積、途方もない道のりに思えます。ですが、私たち一人ひとりが身近な問題としてプラスチック問題を認識することで、大量消費社会に変革を望む流れ加速していくことでしょう。
加溶媒分解と熱分解プロセスに対する需要は高まり続け、既存のプロセスやライセンスの購入に加えて、現在多くの企業がこれらのプロセスの開発と改良に取り組んでいます。EKATOはプロセス開発のテスト~スケールアップ、生産用撹拌機の製造など、プロセス開発のパートナーとしてプロジェクトのサポートを提供します。