小売業界の「3分の1ルール」

農林水産省によると国内のフードロスは20年度で約522万トン発生し、そのうちメーカーや小売業を含む事業活動を伴って発生する食品ロスが275万トンと半数以上を占めております。小売業界ではメーカーが定める賞味期限の3分の1を過ぎるまでに納品する「3分の1ルール」が慣習となっており、賞味期限が3分の2以上残っていないとスーパーなどに置いて貰えない「3分の2残し」がメーカーへ要求されております。メーカーや卸による納品期限を過ぎると賞味期限まで数カ月残っていても商品はメーカーなどに返品され、大半が廃棄されておりフードロスの一因となっております。
海外における小売業者への納品期限を見てみると、イギリスは最も長い「4分の3ルール」、フランス・イタリアは「3分の2ルール」、アメリカは「2分の1ルール」と日本と比べ小売業者への納品期限が長く設定されております。
日本でも大手コンビニ・スーパーで賞味期限が6カ月以上の常温保存できる加工食品全ての納品期限を「3分の1ルール」から「2分の1ルール」に変更し、フードロスを抑える取り組みが始まってきております。また製造日から賞味期限までの期間が3カ月を超える商品については、「年月」で表示することが認められており、大手コンビニでもPBの7割で「年月」表示への切り替えが始まっております。

食のロングライフ化事例

上述の通り、小売業界での納品期限の延長化により、フードロスを抑える取り組みがなされておりますが、そもそもの賞味期限を延長化させるための手段としてパッケージを改善することもフードロスを減らすことに役立ちます。農林水産省は、フードロスの削減につながる容器包装の高機能化に関する事例を集め、同省のホームページで公表しており、密閉した容器包装内の空気を除去、ガス(窒素・⼆酸化炭素)を充填し、⾷品の酸化と菌の繁殖を抑制した容器包装や、パウチに脱酸素包材を使⽤し、製造時と保管時の製品中の酸素を吸着させたレトルトパウチや、脱酸素剤や脱酸素フィルムを使って二重包装し鮮度保持を実現した包装切り餅の事例など、多くの事例が公的に紹介されております。詳しくは下記リンクに写真と共に72事例が掲載されておりますので、ご覧ください。

農林水産省.「食品ロスの削減に資する容器包装の高機能化事例集」,参考_2023.4.11.https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/attach/pdf/index-67.pdf

微生物と水分活性について

食品の品質変化に最も大きく関与しているのは微生物であり、人間にとって栄養素となる成分は微生物にとっても生育に必要な栄養素として利用できるので、食品はほとんどが微生物の生育によって、腐敗または発酵が起こります。一般的に食品を作る目的で微生物を利用する場合には「発酵」と呼び、目的としない微生物が繁殖し、好ましくない変化が起こる場合には「腐敗」と呼んで区別されております。

微生物の繁殖は多くの環境要因により影響を受けます。細菌の繁殖は、水分と温度、pHに大きく影響を受けますが、温度では一般に人間の体温付近の温度(30~40℃)で繁殖しやすいものが多くなっております。ただし細菌の中には低温(0~10℃)でも繁殖するものがあるので注意する必要があります。
水分も微生物の生育に大きな影響を与えます。食品中の水分は食品成分と結合した結合水と、微生物が利用可能な結合していない自由水とから成っており、この自由水の含有量を示す水分活性(Aw)という尺度があり、水分活性が高い程、微生物が増殖しやすくなるのでその食品の保存性は低下します。水分が多くても、食品の中に食塩や砂糖のような水に良く溶ける溶質が多く存在すると、微生物に利用される自由水が減り、水分活性が低下し、微生物が育ちにくくなります。細菌は水分活性の高いところで生育する微生物で、食品にとって最も恐ろしい中毒細菌のボツリヌス菌は水分活性0.93以下では生育しなくなりますが、水分活性0.94以上でかつ、pH4.6を超える内容物の場合は中心部の温度を120℃で4分間加圧加熱殺菌する方法もしくはこれと同等以上の効力を有する方法で加熱殺菌を行う必要があります。

パッケージ改良によるロス削減

酸素の有無も重要で、カビなどの好気性菌は、包装内を真空にしたり、酸素バリア性の高いパッケージに脱酸素剤を封入したりして酸素のない状態にすると、食品の保存性が画期的に良くなります。さきほどの致死性の高いボツリヌス菌は偏性嫌気性菌で酸素がない状態で繁殖する微生物であり、缶詰やレトルト食品のような酸素がない状態で長期に保存する食品では、ボツリヌス菌が死滅する条件で殺菌する必要があります。食品のロングライフ化を図るために脱酸素剤を封入する場合でも、上記の加熱処理を行うレトルトパウチにおいても外部からの酸素を遮断するためにアルミや透明蒸着フィルムなどの高い酸素バリア性を持つパッケージを採用する必要があります。当社ではパートナーのフィルムメーカー様、パッケージ製造メーカー様と協働で食品パッケージの開発を行っております。また以前のコラムで取り上げました通り、自社の研究開発センターでは環境対応包材の開発も行っておりますので、ご興味のある方はお気軽にお問合せください。