背景や目的は?

現在、世界のデジタルデータの多くは、米国のGAFAMや、中国のBATJなどが提供する巨大プラットフォーム上に集積され、その上で解析や活用が行われています。
欧州も例外ではなく、欧州で発生したデータもこれらの巨大プラットフォーマーの新たなビジネスに利用され、欧州自体のデジタル経済の拡大に結び付いていないことが懸念されてきました。
このため、欧州がデジタル経済での巻き返しを図るには、蓄積・処理・活用されるデータの管理を欧州外の企業に依存せず、欧州自身で実行できる技術環境の整備が必要であるという気運が高まり、デジタル主権の確立を最大の目標に、欧州独自のデータインフラを構築するGAIA-Xプロジェクトが発足されました。

欧州は基本的に、プラットフォーマ―がデータを独占するのは独占禁止法違反に相当し、データ主権はデータの発生源にあるという、一般データ保護規則の考え方を踏襲しています。
GAIA-Xは、GAFAMのようにデータとコンピュータ資源、アプリケーションを統合的に提供するのではなく、3つの機能を一旦分解し、データについてはデータの発生源がデータ主権を保有しつつ保持、自律分散の連邦型の構造により企業間でデータ連携を図る仕組みです。
これは、欧州域内外の企業のさまざまなクラウドサービスを単一のシステム上で統合し、業界をまたがるデータ交換を容易に行える標準的な認証の仕組みを通じて、相互運用性を実現するもので、必ずしも既存のクラウドベンダーを置き換えるものではなく、その補完的な役割を担うものと考えられています。

The Gaia-X European Association for Data and Cloud AISBL.「Gaia-X Framework」,出典_2023.12.27.https://gaia-x.eu/gaia-x-framework/

データ連携が重要な理由は?

近年、欧州で進む「インダストリー5.0(第5次産業革命)」の議論は、企業間を超えたデータ共有基盤の取り組みを後押ししています。従来のインダストリー4.0は、企業とそのエコシステム間におけるデジタル化を目指したものですが、インダストリー5.0時代では、よりオープンにサプライチェーンや国/企業/業界を超えたデータ連携を通じて新たなイノベーションを創出することへ力点がシフトしつつあります。

更に、インダストリー5.0のキーコンセプトの1つの「サステナビリティ」に関して、自社のみならずサプライチェーン全体でのCO2排出のマネジメントが求められ、今後、人権などのコンプライアンス遵守のトレーサビリティが重要となります。
新たなイノベーション創出とともに、規制対応はじめ企業が存続し事業を行うための必須要件の双方からも、国/企業/業界の垣根を超えたデータ共有・連携の仕組みが重要な要素となります。

GAIA-Xの具体例

GAIA-Xでは、産業別に分化・組織された「IDS(International Data Spaces)」というコンソーシアムで、モビリティ/エネルギー/ヘルス/金融など10 分野で70 以上のユースケースが提案され、詳細な応用領域や業務プロセスの検討がされています。
既に航空産業では「Skywise」というデータ連携サービスが稼働しています。航空機材のユーザーである全世界のエアライン、航空機メーカー、各種の部品メーカー、ソフトウェア企業などが、各機材の運航ごとの航空機材・部品などの状態変化と、通過した天候情報等、運航状況の詳細な情報を共有できる仕組みです。

CATENA-Xも、GAIA-Xのユースケースのひとつで、自動車産業でのバリューチェーンを全体で共有する取り組みです。GAIA-Xのデータ連携方式は、CO2排出量の把握についても機能し、サーキュラーエコノミーの基盤ともなります。
GAIA-XやCATENA-Xの目的は、単にCO2排出量の把握だけではありません。バッテリーの再利用を考慮したトレーサビリティ(利用履歴データを信頼できる形態で共有できる仕組み)などへの応用はもちろん、循環経済や設計品質向上などへの多様な応用が検討されています。

広がるデータ共有の動きと国際標準化の傾向

GAIA-Xのように、欧州を中心としたデータ共有基盤構築の動きは、さらなる広がりを見せており、これらに協調する動きも世界中で進みつつあります。 今後、これらのデータ共有基盤では、データ共有の仕組みを国際標準とする動きが進む見込みです。対応が遅れた場合に欧州やグローバルでデータの活用や連携に支障が生まれ、既存のビジネスへも影響が出る可能性があると考えられています。欧州域外の企業についても、今後、国際標準のものを使いこなす姿勢が、増々求められることになるでしょう。