公開日:2023/12/01

最終更新日:2023/12/21

「捨てるもの」からビジネスをつくる
アップサイクルな古民家・古木利活用術

plaplatではこれまでプラスチックに関連するサステナブルな取り組みを中心に紹介してきましたが、プラスチック以外の素材にも焦点を当てることで新たなヒントが得られるのではないかと考えました。今回は一風変わって、古民家・古木を活用して循環型社会の実現を目指す「山翠舎(さんすいしゃ)」の取り組みを取り上げたいと思います。

古木とは※

山翠舎の定義する古木とは、戦前に建てられた築80年以上の古民家の解体から発生した柱、梁、桁、板の木材のこと。社内に在籍する古木スペシャリストが、虫喰いや水漏れのない状態を確認し、保管状態が良く、古民家の建てられた年代や場所、木材など入手ルーツが明確でトレーサビリティが確保されているものと定義しています。
※「古木/こぼく/KOBOKU」は山翠舎の登録商標です。


山翠舎の3つの「古木」の定義方法

古木スペシャリストの確認

戦前80年以上前

トレーサビリティの確保

<画像提供:株式会社山翠舎>

状態が良い古木は新材にも勝る強度

法隆寺昭和大修理の際に伐採後200年が1番の強度と証明
木材は伐採後、時間の経過と共に乾燥が進み強度が増します。
法隆寺昭和大修理の際に出た木材を試験材に実験した結果では、曲げ・圧縮・硬度などの強さはいずれも200年位までに段々増大し、最大30%近くも強くなり、その後1000年以上を経過して伐採当時の新材と同じ強さに戻ることがわかりました。
西岡常一、小沢二郎.「法隆寺を支えた木」.P143_1978年,(参考_2023_12.21)

<画像提供:株式会社山翠舎>


含水率が低く、硬くて長持ちする新月伐採
古民家が建てられた時代では、新月伐採が基本。新月伐採とは、冬季の下弦から新月までのおおよそ2週間で伐採した木のこと。
この時期に伐採する木は含水率が低く、デンプン濃度が下がっているため、虫喰いやカビが発生しづらく、硬くて長持ちすると言われています。

<画像提供:株式会社山翠舎>

歴史やストーリーが引き継がれる古木

ほぞ穴
昔は釘を使わず木材を凹凸に組み合わせて木を接合していました。片方の木材につくる突起部分を”ほぞ”といい、”ほそ”を差し込む穴を”ほぞ穴”といいます。

生活や手仕事の跡
囲炉裏から立ち昇る煙や煤で真っ黒く燻された木肌、表面に残る鉞(まさかり)や釿(ちょうな)による規則的な凹凸模様、古木の加工や組む際に記された職人直筆の墨文字の跡など。一つひとつに長い歴史がしのばれます。

釿(ちょうな)
荒々しくダイナミックな波状の削り肌。電動ノコギリが無い時代は、釿を振り下ろすことで木材の表面を削りだしていました。

曲がり
昔は屋根と天井の間など人目に触れない位置に曲がった癖のある木を上手く組合せて使用していました。真っ直ぐな建材が基本の現代。色艶のいい曲がった木材は希少です。

煙や煤に燻された木肌と色合い
表面が黒いのは、囲炉裏から煙や煤に含まれる脂が経年劣化でじっくりと染みこんだもの。汚れを取り除いて磨きあげると、艶のあるダークブラウン色の木肌が現れます。

ほぞ穴

生活や手仕事の跡

釿(ちょうな)の削り跡

曲がり

煙や煤に燻された木肌と色合い

<画像提供:株式会社山翠舎>

人と環境に優しいエシカルな素材、建材

体と暮らしに優しい
自然素材の古木は人体に有害な化学物質の発生がありません。強度が強く風合いのある国産古材は木材のリサイクル品として活用されています。また木質部に再・未利用材を100%使用し、接着剤・塗料と木材保存材を使用していないことで、エコマーク認定を取得しています。

<画像提供:株式会社山翠舎>


国際認証「FSC COC認証」を取得
FSC森林認証は責任のある森林管理とその森林から産出された木材を使用し、その木材が適切に加工・流通されていることを証明する国際的な認証制度です。古木は2019年に古材としては初となる「FSC COC認証」を取得しました。

<画像提供:株式会社山翠舎>

常時5000本以上の在庫

「日本の建築技法・文化を守る取り組み古民家・古木サーキュラーエコノミー」で、2020年度グッドデザイン賞を受賞している、古木を使った建築物の設計・施工を主力事業とする山翠舎は、長野県大町市に古木専門の倉庫工場を構え、一本一本の入手地や年代、古民家のどこに使われていた部分かなどを記録し、古木のトレーサビリティを管理。オフィスや商業施設、什器や家具も含めた店舗空間の設計・施工から古木のアート作品に至るまで、お客様のご要望に合わせ、様々な形体での古木の利活用提案を行っています。

それを実現するために、古木・古材の扱いを熟知した大工や職人が伝統技術の習得や向上に努めるだけではなく、近年、外部の専門家もプロジェクト毎に加わり、実証実験を通した3Dスキャニングやデータ生成、NFC※技術など、デジタル技術の習得にも積極的に取り組んでおり、変化する時代にも対応した提案ができる取り組みも進めています。
※NFC:「Near Field Communication」の略で、近距離無線通信の意味。トレーサビリティ担保のための技術

<画像提供:株式会社山翠舎>

大工たちの技術

一本一本の形状が異なる古木。一般的な建築資材と比べて「直線が取れない。硬い。重い。加工しづらい。」古木の扱いを図面で表すのは難しく、理想の設計を形にするためには、経験と知識を持った大工の技術が不可欠です。山翠舎には、匠の技を受け継ぎ、現在のデザインに活かせる熟練大工やそれを取りまとめる現場監督が多数在籍しています。

目下山翠舎では、全国的に大工が減少傾向にある中、長野県大町市の古木工場を「大工の学校」とし、職人を養成し日本伝統の技術を継承していくプロジェクトを進めています。

海を越えての挑戦

山翠舎は、古木の素晴らしさを世界に伝えていくため、古木の海外ブランド『SANSUI』を立ち上げ、2023年1月のフランス・パリで開催された世界最高峰のインテリア・デザイン関連見本市「メゾン・エ・オブジェ」への出展を皮切りに、アメリカ・ニューヨークのギャラリーやカフェへ、古木のベンチを納品するなど、認知と価値向上のための取組みに挑戦し続けています。

古木を使ったプロダクトの一つ「KOBOKUベンチ」
展示店舗:LECLAIREUR Hérold(レクレルール エロルド フランス・パリ)
<画像提供:株式会社山翠舎>



記事制作協力:株式会社山翠舎

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plaplat編集部

化学品専門商社:長瀬産業グループのメンバーを中心に構成。
専門領域であるプラスチックを基軸に、サステナビリティを実現するためのソリューションと、業界を横断した情報を展開する。