公開日:2023/11/10

最終更新日:2023/11/10

日本の太陽光発電に世界標準の安全性をもたらす『MLPE技術』

2050年のカーボンニュートラル目標に向けて、日本は2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減する必要があります。代表的な再生可能エネルギーである太陽光発電には、さまざまな課題がありますが、それらを解決し、導入を拡大するためにMLPE(Module-Level Power Electronics)技術が注目されています。

太陽光発電の課題と方向性

1994年から補助金制度により住宅用太陽光発電が増加し、2012年からは固定価格買取り制度(FIT)も導入されたことで、事業用の野立て太陽光発電も急速に拡大しました。野立ての太陽光発電は環境破壊などの課題もあり、再び都市部での屋根上設置がトレンドとなっています。
東京都や川崎市では2025年からは住宅太陽光発電の設置が義務化される予定で、太陽光発電の更なる拡大が期待されるものの、普及に向けては、現状の太陽光発電が抱えるいくつかの課題を解消する必要があります。

2030年の温室効果ガス46%削減に向けて、まず太陽光発電の発電量を増加しなければなりません。また人口減少に伴い、技術者不足の問題もあり、保守の簡易性を高めなければなりません。日本は特に災害も多いため、太陽光発電の安全性を高めることも非常に重要になっています。

MLPE技術

まずは現状の太陽光設備についてですが、日本の約9割が下図左のストリング方式を採用しています。これは直列に繋がっており、直流の部分を止める機能がないため、パネルごとでの電流を切断できません。
その結果、どこかで問題が発生した際に、感電や、アークによるスパークが発生し、火災のリスクが高まります。世界的なスタンダードとして、パネルごとに即時遮断することが求められていますが、日本では太陽光パネルだけでなく、インバーターも日本製がないため、海外と比較して設備が遅れており、導入が進んでいないという現状があります。

画像提供:モバイルソリューション㈱


一方で、MLPEはパネル1枚1枚に小型のインバーターが組み込まれており、1枚1枚を独立して切断できる仕様となっています(ラピッドシャットダウン方式)。左の直列の場合、1枚の発電量が低下すると全体の出力が減少しますが、右のMLPEの場合、1枚の発電量が下がっても他のパネルには影響がないため、発電効率が向上します。また、1枚1枚で発電量が可視化されるため、どのパネルに問題があるのかが分かりやすくなり、保守性も向上します。東西南北の日の当たり方に対しても、1枚1枚で最適化されるため、設計が簡単になります。

総じて、MLPEは太陽光発電の安全性・発電効率・設置/保守性の向上に寄与することが期待されます。

画像提供:モバイルソリューション㈱

国内外での規制・動向

アメリカでは太陽光パネルによる消防士の感電事故が発生し、その対策として2017年にNEC2017(米国防火協会)の規定が導入され、2019年から全米で太陽光発電システムへのラピッドシャットダウン機能の義務化が始まりました。
ヨーロッパでは自主規制にとどまっておりますが、エネルギー価格の高騰もあり、即時遮断方式の太陽光発電の普及が進んでいます。アジアではフィリピン、タイ、シンガポールで義務化が進み、タイは2023年7月から完全に義務化されました。

日本でも大手通販会社倉庫での大規模火災がニュースにもなったかと思いますが、感電防止のため、太陽光パネルへの「棒状放水」は禁止されています。この方法は水を霧状ではなく、棒状にして噴射するもので、完全に遮断するまで時間がかかるため、消火活動も遅れる可能性があります。
屋根上の太陽光の普及率は東京で約10%ですが、今後は増加する見込みであり、それに伴い安全リスクも高まると考えられます。産総研も注意喚起を行っています。

画像提供:モバイルソリューション㈱


また、2023年5月にIEC規格(国際電気標準会議が規格する国際規格)が太陽光発電のアーク保護の規定を発表しました。JEMA(日本電気工業会)でもJIS化の検討が進められています。
アークがどの程度発生するのかについての詳細は、以下の動画をご覧ください。AC(交流)ではほとんどアークが発生しない一方で、DC(直流)の場合はアークが発生することが確認出来るかと思います。


災害が多い日本においては、特にこの即時遮断方式の採用は必要と考えます。
さらなる太陽光発電の普及に向けて、安全性・発電性・保守性の向上は避けられません。MLPE技術について、ご興味があればお気軽にお問い合わせください。

記事制作協力:モバイルソリューション㈱

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専門領域であるプラスチックを基軸に、サステナビリティを実現するためのソリューションと、業界を横断した情報を展開する。