香港のごみ処理の現状

東京の約半分の面積しかない香港では、どれくらいの都市ごみが発生しているのでしょうか。
香港環境保護署の発表(香港固形廃棄物監視報告書-2021年の統計)によると、2021年に埋立地で処分された固形廃棄物の量は567万トンで、1 日あたり平均15,533トンで、2020 年と比較して5.4%増加しており、
その内、埋立処分された「都市固形廃棄物」の量は415 万トン、1日平均11,358トンで、2020年と比較して5.1%増加しています。
また、回収された都市固形廃棄物の31%はリサイクルされ、69%は埋立処理されています。

香港にはごみ焼却施設がないため、リサイクルされないごみは全て埋立処理されるという特殊事情もあり、今の埋立施設が満杯になるのも時間の問題で、非常に逼迫した状況です。

街なかのごみ箱(分別ごみ箱はあまり多くない)

使い捨てプラスチックへの規制

プラスチックごみについて更に見てみましょう。
香港のプラスチックごみは年間で約85万トンを超えていますが、その内リサイクル処理されているのは約10万トンであり、再資源化率は約12%足らずに留まっています。これは香港全体のリサイクル率31%からも大きく乖離しており、プラスチックの再資源化が香港では進んでいないことを示しています。こうした現況を香港政府でも憂慮しており、さまざまな施策が打たれています。

例えば、2015年4月から有料レジ袋が義務化され、一枚0.5HKDになり、その後2022年12月末からは、一枚1HKDに引き上げられています。レジ袋有料化を受け、現在では香港市民がエコバックを持参している姿が多く見られます。(筆者もその一人です^^)
また、コロナ規制中にフードデリバリーとテイクアウトが多く利用されたことも引き金となりましたが、環境保護署は、使い捨てプラスチック食器の規制案に関する意見公募(パブリックコメント)を2021年夏に実施しました。
二ヵ月間の意見公募の結果、8,000件以上の提出があり、そのうち90%以上が使い捨てプラスチック製食器を法律で段階的に規制することを支持しました。

※環境保護署.「Hong Kong Waste Reduction Website」,参考_23.4.12.
https://www.wastereduction.gov.hk/tc/assistancewizard/waste_red_sat.htm

「製品環境責任(改正)法案」が審議中

上記のパブリックコメントの結果を受け、「製品環境責任(改正)法案」が2022年10月に公示されました。本法案は2022年3月15日に香港の立法評議会に提出され、現在審議が行われている最中ですが、概ね可決が見込まれており、早ければ2023年度中から一部規制が実施される可能性があります。
この法案では、使い捨てプラスチック食器(ストロー・マドラー・カトラリー・カップと蓋・容器と蓋)の店内提供及びテイクアウトを、2025年までに全廃することを目指しており、特徴的な点としては「オキソ(酸化型)分解性プラスチック」の禁止も含まれていることです。
具体的には2段階での規制に分かれていて、第1段階では、発泡スチロール製容器・ストロー・マドラー・カトラリー・皿の、販売と店内・テイクアウトでの提供が禁止されます。第2段階になると、第1段階ではテイクアウトで容認されていた、カップと蓋・容器と蓋も合わせて禁止がされるようになります。第1段階は早ければ2023年中に、第2段階は2025年には実施される見込みです。

以下のサイトで審議状況が公開されています。
※香港特別行政区立法評議会.「製品の環境責任(改正)法案 2023」,出展_23.4.12.
https://www.legco.gov.hk/en/legco-business/council/bills.html?bill_key=10010&session=2023

社会を変え得る市民の声

「製品環境責任(改正)法案」はまだ審議中ですが、大きなスキームの変化を伴う法律となりますので、やや審議に時間がかかることが予測されます。しかし可決された場合は、香港内のプラスチック規制はもちろん、世界各国にも影響を及ぼすことになるのではないかと思います。
先述した通り、香港では埋め立て処理のみとなりますので、ごみの削減は緊急かつ重大な課題であることは間違いありません。ご紹介した使い捨てプラスチック食器の規制は大きな一歩となりますが、その他の施策でも、ごみの分別化の推奨や「リサイクルポイント」の制度化など、再資源化を高める活動を同時に進行しています。(蛇足ながら、ステーションに持ち込むとポイントが付与され生活必需品と交換できるという制度です)
香港の環境施策が今後も注目されます。

街なかにあるリサイクルステーション