和歌山県友ヶ島の視察

友ヶ島は和歌山県和歌山市沖の紀淡海峡に位置する島で、地ノ島、神島、沖ノ島、虎島の無人島群の総称です。友ヶ島は紀淡海峡を塞ぐような位置にあり、明治時代には旧日本軍が大阪湾への敵艦隊侵入を防ぐために砲台や防備衛所を建造しました。これら施設の多くが徐々に風化しつつも良好な状態で残っており、独特の廃墟群を形成しており、友ヶ島が「ラピュタの島」と呼ばれる所以です。友ヶ島は瀬戸内海国立公園に指定され、毎年、多くの観光客が訪れる自然豊かな地域です。
一方で海岸には多くのごみが散乱しています。2023年10月に友ヶ島のクリーンアップ活動とごみ調査を行っている(一社)加太・友ヶ島環境戦略研究会(KATIES)の協力で友ヶ島を視察しました。

友ヶ島の無人島群のうち、沖ノ島には和歌山市加太港から船で行くことができます。最初に沖ノ島の北側に位置する北垂水に向かいました。海岸にはPETボトル、発泡スチロールの破片、漁具、スリッパ等の多くのごみがあり、驚くばかりの光景でした。北垂水は小さな入江でありごみが溜まりやすい場所のようで、大阪湾からのごみが主であると伺いました。
次に沖ノ島の南側に位置する南垂水に行きました。中国語の書かれたPETボトルなど、日本以外のごみも見受けられ、太平洋からのごみが溜まるそうです。このように友ヶ島は島の場所によって異なる地域からのごみが漂着するため、海洋プラスチックごみの調査ポイントとして重要です。

画像提供:宇山教授


沖ノ島以外は上陸できないため、加太漁協のご厚意で他の無人島を魚船から視察しました。船から素晴らしい景色が堪能できますが、入江に近づくと多くのごみが散乱していました。風光明媚なところまでもプラスチックごみが汚染していることがわかり、愕然としました。海洋プラスチックごみの問題は主たる発生源であろう都会のみならず、無人島のような場所に及んでいることを実感する機会となりました。尚、今回の視察の様子はYouTubeで公開しています。

友ヶ島や大阪湾でのプラごみ調査

KATIESは定期的に友ヶ島でのごみ量の定点調査を実施し、2020年9月以降、約11万個、2500kgの漂着物を回収しています。
ごみにおけるプラスチックの割合は約60%で、元の形状が不明な破片やかけらが多いとのことです。大阪公立大学と国立環境研究所の共同研究によりプラスチックごみの材質が調査されました。約3/4がポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン類で、続いてポリスチレンやPETです。

また、陸域からの大阪湾へのプラスチックごみ流出量が、大阪府と大阪大学工学研究科中谷祐介准教授の共同研究により推計され、以下のサイトで公開されています。
https://www.pref.osaka.lg.jp/kankyohozen/osaka-wan/gomisuikei.html

防災用河川カメラを活用し、ごみ検出AIで定量化して大阪大学のスパコンSQUIDを用いた大規模な数値シミュレーションが行われました。2021年のごみ流出量は1,030 m3、59トンと推計され、25mプール約3杯に相当します。大阪府のプラごみ排出量(76万トン、2019年)と比較するとごみ流出量は0.01%以下ですが、大阪湾にこれだけ多くのプラスチックが流入していることを痛感します。

世界の美しい海に広がるプラごみ

このようなプラスチックによる海洋や海岸の汚染は世界的に見られます。
2023年11月にマレーシアのLangkawi島での学会に参加しました。Langkawi島はマレーシア北西部のアンダマン海に位置し、地球科学的に貴重なジオ多様性とその上に形成されている生態系や地域文化に高い価値があることから世界ジオパークとして認定されています。

学会のエクスカーションでは船からのジオパークの見学とともに、島の入江に上陸し、ごみ回収のボランティア活動も行いました。普段は人が踏み入れない場所であることから、非常に多くのプラスチックごみがあり、ごみ量の多さは友ヶ島を大きく上回りました。
友ヶ島と同じく、非常に美しい景色と入江に多くみられるごみの共存に驚愕するとともに、このような状況への迅速な対応の必要性を改めて実感しました。

画像提供:宇山教授

海洋プラスチック問題の解決に向けて

2023年11月には(公財)ブルーオーシャンファンデーションの主催のもと、NPO法人「海未来」やNPO法人「大阪海さくら」等が協力して、阪南市箱作自然海岸でプラスチックごみの回収イベントが開催されました。(イベントの様子がこちらのwebサイトで公開されています。)

画像提供:宇山教授


小学生を主たる参加者とし、海岸のごみを回収するとともに、ダイバーのボランティア団体である「海未来」の方々は海底のごみを回収しました。その後、小学生には集めたごみについて学習してもらい、活動の理解を深める工夫をしました。こうした合同イベントは団体間の横連携の構築につながり、地域での活動強化に重要であると強く感じました。

海洋プラスチックごみを回収する船舶や装置が開発されていますが、世界的には普及しておらず、現時点では海洋へのプラスチックごみの流出量を上回る回収は困難です。私たちは技術の進歩や回収装置の普及を待つのではなく、少しでもごみを減らす活動を地道にすべきと考えます。

大阪大学 宇山教授と考える
「プラスチックのこれまでとこれから」全6編+番外編

  1. 1.どうしてプラスチックが使われているの?
  2. 2.プラスチックの問題と課題
  3. 3.課題解決技術(1)生分解性プラスチック
  4. 4.課題解決技術(2)バイオマスプラスチック
  5. 5.課題解決技術(3)ケミカルリサイクル
  6. 6.プラスチック資源が循環する社会に向けて【完】
  7. <番外編>

  8. ■ ゼロカーボン社会とごみ処理
  9. ■ ベトナムにおける廃プラスチック活用の現状
  10. ■ プラスチックごみに関する小学生向けの環境教育