経産省が中心となって構築を推進

日本では、将来的に目指すべき未来社会として「Society5.0」のビジョンを掲げ、これを実現していくため、様々なデータを迅速・安全に繋がりをもたせることで、新たな付加価値の創出や社会課題の解決をもたらし得る「Connected Industries」を実現するための取組が進められています。そのアウトプットの一つとして、企業間でデータを共有して活用する取組が広がり始めてます。

更に、脱炭素や人手不足、災害激甚化といった社会課題の解決や、産業構造変革を加速し経済成長をもたらすには、企業間だけでなく、業界や国境を越えて、広範囲でデータを共有して活用できるようにする必要があります。
海外に目を向けると、欧州では GAIA-X や CATENA-Xといったイニシアティブがあり、データ主権やデジタルプラットフォーム間の相互運用性が確保され、安全にデータを連携することができる仕組みの構築が進んでいます。

これに対し、日本では、経済産業省が中心となって、こうした大量のデータ連携に関する仕組み構築のイニシアティブが形成されており、これを「ウラノス エコシステム)」と命名したのです。
もっとわかりやすく言えば、「これまで別々で管理されていた情報システムを連携する仕組みの設計や開発や導入を、経産省が主体となって進める先進的な取り組み」となります。

「ウラノス・エコシステム」とは、経済発展と社会的課題の解決と産業発展を両立して実現を目指す、国を挙げての取り組みなのです。

目指す姿

このシステムは、国や地域の商習慣や法規制の差異による阻害を受けず、さまざまな企業や団体が連携し、相互にデータを利用できるデータ連携基盤の実現を目指しており、その実現のためには以下の4つの観点が重要であると考えられています。

①汎用的なインターフェース仕様の採用:
国内外のデータ関連政策への整合や既存のデータスペースとの接続、今後普及する可能性が高いConnector技術等の仕様への準拠のために、単一ではなく広く複数の標準に対応できるようにする。
②柔軟なアーキテクチャの採用:
将来普及するであろう新たなConnector技術への対応、法規制やセキュリティー対応、などの社会的要請に対して、既存機能への影響を最小限にとどめながらシステム改修が可能な柔軟性を確保する。
③データ主権の保護:
データ提供者が保有するデータについては、利用相手や利用条件等について、データ提供者自らが決定できる権利を保護する仕組みを実現する。
④エコシステムの形成と新たなビジネス市場の創出:
サプライチェーン上のステークホルダーが、相互に価値創出の源泉となる大量データを、即時かつ円滑、安全に利用可能にすることで、さまざまな企業体・組織が有機的に「つながる」エコシステムを形成し、データの掛け合わせによって新たなビジネス市場が創出できる場とする。

最初のユースケース「EV用バッテリー」、その背景は?

この取り組みの具体的な活動例を説明したいと思います。
蓄電池・自動車業界では「サプライチェーンデータ連携基盤」の構築が進められています。
これは、欧州で先行して進められている「バッテリーパスポート」の登録を日本で行い、欧州の仕組みとの相互認証・接続を目指すものです。

なぜこの分野が先行しているかと言うと、自動車や他のモビリティの電動化において最重要となるリチウムイオン・バッテリー技術は、電化社会のエネルギー貯蔵手段でもあり、2050年カーボンニュートラル実現のカギとなる技術の一つです。
また、再エネを主力電源化するためには、電力の需給調整のための大規模な蓄電池の配置が不可欠となるからです。

しかしながら、その蓄電池に対しても、製造・廃棄プロセスにおける、
①GHGの大量排出
②資源の大量消費・大量廃棄
③鉱物の採掘・加工プロセスにおける人権・環境リスク
といった解決すべき課題が、クローズアップされてます。

2023年8月17日に欧州バッテリー規則が発効され、蓄電池のライフサイクル全体に様々なルールが課されることなりました。具体的には、ライフサイクル全体の温室効果ガス排出量による規制(カーボンフットプリント規制)、責任ある材料調達(デュー・ディリジェンス)、リサイクルに関する規制等が盛り込まれました。
このような欧州電池規則への対応を背景として、自動車業界における電動車向けバッテリーの情報連携を注力ユースケースとして位置づけ、サプライチェーン全体での利用が可能なデータ連携基盤のアーキテクチャやデータモデルの策定等が、「ウラノス・エコシステム」の活動に取り入れられ、進められているのです。

社会実装への期待

上記のように、「ウラノス・エコシステム」の活動の最初のユースケースとして、自動車業界における電動車向けバッテリーの情報連携に関する、サプライチェーンデータ連携基盤の開発が進められ、実証が進められtています。

「ウラノス・エコシステム」は、人間中心で、社会的課題の解決と産業発展を同時に実現可能とする社会(Society5.0)の実現に向けて、貢献していくものと大いに期待されています。