日本の更なる「環プラ®︎ 」の推進に向けて【前編】

環境問題を背景に世界中でGX(グリーントランスフォーメーション)が進んでおり、プラスチックの資源循環も一つの大きなテーマとして認識されている。
日本でも2022年4月にプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律、いわゆる「プラスチック資源循環促進法」が施行され、事業者・自治体等において様々な取り組みがなされてはいるものの、欧州の環境先進国と日本の状況にはギャップが存在する。
日本がプラスチックの資源循環をさらに促進していくためにはどうすればいいのか。【前編】では日本のプラスチックリサイクルの現在地について紹介する。

プラスチックの資源循環「環プラ®︎」が必要な理由

身の回りを見渡せば分かるように、現代の暮らしはプラスチックに溢れている。そしてプラスチックが環境への負荷を与えていることは周知の通りである。廃棄物の適切な処理がなされないために、プラスチックごみの海洋溜出量は年間1,100万トンにのぼり、海洋生物や生態系にダメージを与えている。更に2022年に80億人に到達した世界人口は、2058年には100億人にまで増加するとの推計がされており、人口の増加はあらゆる需要を拡大させる。プラスチックも例外ではない。現在、プラスチックの生産量は年間4億トン程度だが、2050年には16億トンにまで飛躍的に増加をするとの予想もある。言うまでもなく、それだけ生産量が増えるということは、石油資源の使用やGHGの排出、廃棄物量が増加することを意味する。プラスチックが地球環境に与える負荷は、今後ますます拡大するのである。

そうした中でプラスチックの使用量を低減しようとする「脱プラ」や「減プラ」は世界中で取り組まれているものの、それだけでは十分ではないことは明らかである。プラスチック需要を満たしつつ、環境負荷の低減を実現していくためには、プラスチックを廃棄せずに資源として循環させること、つまり「環プラ®︎」がより一層重要な意味を持つ。
※「環プラ®︎」は株式会社パンテックの登録商標です。

日本のプラスチックリサイクルの現状

しかしながら、日本は欧州の環境先進国と比べて、「環プラ®︎」が進んでいない。2021年の日本の廃プラスチックの総排出量は824万トン。このうちマテリアルリサイクルされたのが21%(177万トン)、ケミカルリサイクルされたのが4%(29万トン)であった。すなわちこれらを合わせた25%(206万トン)が日本のプラスチックのリサイクル率となる。一方、欧州の環境先進国ではプラスチックのリサイクル率が30%を超える国も多く、特に先進的な国では40%を超えている。日本は欧州に比べると、かなり遅れをとってしまっているのである。

加えて、マテリアルリサイクルされている177万トンのうち、日本国内で循環しているのは47万トン。残りの131万トンは海外に輸出され利用されている。廃プラスチックの総排出量のうち、国内循環しているのはわずか6%程度に過ぎず、海外依存度が高いことが伺える。

一般社団法人プラスチック循環利用協会.「2021年 プラスチック製品の生産・廃棄・最資源化・処理処分の状況 マテリアルフロー図」,参照_2023.8.22. https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf 画像提供:株式会社パンテック


日本は国内で発生した廃プラスチックの大部分を中国に輸出してきた経緯があり、2017年末に中国が廃プラスチックの輸入禁止を行ってからは、東南アジア各国に輸出先を振り分けてきた。その後、東南アジアの国々においても輸入基準の厳格化が行われ、国内での処理が求められるようになる。さらに2021年1月1日に改正バーゼル条約附属書が発効したことに伴い、バーゼル条約の国内担保法であるバーゼル法においても、リサイクルに適さない汚れたプラスチック等が新たに規制対象となり、廃プラスチックの国外輸出が厳しく制限されるようになった。

このように廃プラスチックの輸出入に関して規制が強化されているものの、国内循環は限定的であり、以前としてマテリアルリサイクル品の利用先としては海外依存度が高い状況が続いている。つまり、バーゼル法の規制対象外となるリサイクルに適した素材はこれまでと変わらず海外に輸出されており、廃プラスチックが国内のリサイクル工場にて再生プラスチック原料に加工され、国内で使用されることなく、海外に輸出されているのである。プラスチック製品が作られる工場が海外、特にアジアに多く立地しているので、それは致し方ない部分があるものの、日本には再生プラスチック原料の利用先が限られていることの裏返しとも言えるだろう。

2022年4月に施行された「プラスチック資源循環促進法」は、モノづくり、流通、消費、回収などのサプライチェーンに関わるステークホルダーごとに取り組みを促進する枠組みは評価される一方、欧州のような強制力を伴った規制にはなっていない。対して欧州では拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility)に基づき、リサイクルできないプラスチック包装資材について税金を課すいわゆるプラスチック税の導入や、使い捨てプラスチック製品の流通禁止、再生プラスチック原料の使用の義務化など、より強硬的な政策が取られており、国としての対応にも大きな違いがある。このような法律面での制度設計上の差も、日本が欧州に比べてリサイクル率の遅れをとっている要因の一つと言えるだろう。

【後編】では、日本が「環プラ®︎」を推進していくために必要な取り組みについて考察する。

参考資料

・公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)「深刻な海洋プラスチック問題の原因『ゴーストギア』を無くそう!」(2023年7月24日閲覧) https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4452.html

・国連人口基金駐日事務所「世界人口は今年11月に80億人に:国連が『世界人口推計2022年版』を発表」(2023年7月24日閲覧) https://tokyo.unfpa.org/ja/news/wpp2022

・OECD(経済協力開発機構)「Improving Markets for Recycled Plastics Trends, Prospects and Policy Responses」 https://search.oecd.org/environment/waste/Policy-Highlights-Improving-Markets-for-Recycled-Plastics-Trends-Prospects-and-Policy-Response.pdf

・一般社団法人プラスチック循環利用協会「2021年 プラスチック製品の生産・廃棄・最資源化・処理処分の状況 マテリアルフロー図」 https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf2.pdf

・独立行政法人日本貿易振興機構「特集:どうする?世界のプラスチック 行き場を失う日本の廃プラスチック 増加する国内処理量とプラスチック抑制の動き」 https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2019/0101/fceb0360455b6cdf.html



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大野 賢(おおの さとし)

株式会社パンテック マーケティング部 部長

<専門分野>プラスチックリサイクル/マーケティング/サーキュラーエコノミー
<紹介文>マーケティング戦略の立案から実行のみならず、「で、おわらせないPROJECT」やアップサイクルブランド「ReTA BASE」をはじめ、プラスチックの資源循環を促す共創型プロジェクトにも多数携わる。