公開日:2023/08/24

最終更新日:2023/08/29

日本の更なる「環プラ®︎ 」の推進に向けて【後編】

環境問題を背景に世界中でGX(グリーントランスフォーメーション)が進んでおり、プラスチックの資源循環も一つの大きなテーマとして認識されている。
日本でも2022年4月にプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律、いわゆる「プラスチック資源循環促進法」が施行され、事業者・自治体等において様々な取り組みがなされてはいるものの、欧州の環境先進国と日本の状況にはギャップが存在する。
日本がプラスチックの資源循環をさらに促進していくためにはどうすればいいのか。【前編】では日本のプラスチックリサイクルの現在地について紹介したが、【後編】では日本が「環プラ®︎」を推進していくために必要な取り組みについて考察する。

「環プラ®︎」の促進に向けて

プラスチックの資源循環、すなわち「環プラ®︎」は、廃棄されるプラスチックを回収し、再生原料加工を施し、製品原料として使用され、最終製品が消費されることで実現する。これを更に促進していくためには、サプライチェーンに関わるメーカーやブランドオーナーをはじめ、回収事業者やリサイクラー、消費者など、あらゆるステークホルダーの自助努力が必要であることは言うまでもないが、とりわけ、法規制や条約等の策定に関わる国や国際的な機関での意思決定が重要な意味を持つ。法規制や条約等の策定はルールメイキングそのものであり、ルールが変われば事業者はそれに従わざるを得ず、ドミノ倒し的に状況が変わることもあり得る。もちろんルールが変わるだけでこれまで廃棄されていたものが即座にリサイクルできるようになるわけではないが、状況を好転させる契機にはなるだろう。

例えば、現在、国際的な議論が行われているプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)、いわゆる「プラスチック条約」が策定されれば、国際社会の一員である日本としての対応方法も変わる可能性があり、同様に欧州委員会およびEU理事会(閣僚理事会)、欧州議会で協議・審議されている「ELV指令」の改正については、欧州でビジネスを展開する日本の自動車メーカーも欧州基準の対応が否応なく求められるようになる。「ELV指令」の改正案には、(1)部品の再利用や回収を促進する車両設計の推進、(2)新車生産に必要なプラスチックの25%以上の再生プラスチックの利用(うち廃車由来25%)、(3)廃車由来の再生材の増産、品質・価値の向上、(4)廃車回収の増加、(5)事業者間の廃車に係る公正なコスト負担配分などが含まれており、これが動き出せば、世界中の自動車業界における「環プラ®︎」が加速することになる。そして、巨大な自動車産業で「環プラ®︎」が進むことで、他の産業に波及効果を与えることにもなるだろう。
※「環プラ®︎」は株式会社パンテックの登録商標です。

再生プラスチック原料の争奪戦への備え

「プラスチック条約」の策定や「ELV指令」の改正などのルールの変更により、今後、今まで以上に再生プラスチック原料の需要が高まることは容易に想像ができるが、そうなった場合、再生プラスチック原料の争奪戦が世界中で繰り広げられることになる。

日本のメーカーやブランドオーナーは、再生プラスチック原料の導入に際して、トレーサビリティ、品質、価格、安定供給など、多角的に検証を行うのが常であり、海外企業に比べて導入までに時間を要するケースが多い。もちろんそうした検証は否定されるものではないが、再生プラスチック原料の争奪戦が予想される中で、スペックインまでの意思決定の遅れは、事業活動に大打撃を与える可能性がある。つまり、意思決定の遅れから争奪戦に敗れて再生プラスチック原料が調達できない場合、市場からの退場を余儀なくされるということも十分に起こりうるのだ。再生プラスチック原料の用途開発、供給体制の確立は、リスクマネジメントのためにも早期に取り組むことがベターだろう。

画像提供:株式会社パンテック


日本で再生プラスチック原料を取り扱う事業者は少なからずいるものの、幅広いラインナップを有する事業者は限られている。その一つが「『環プラ®︎』プロデュースカンパニー」を標榜する株式会社パンテックである。パンテックは独立系のファブレス企業であることを特徴としており、しがらみなく国内外のリサイクラーとパートナーシップを結ぶことで、あらゆる熱可塑性樹脂のリサイクルスキームの構築が可能で、再生プラスチック原料についても汎用樹脂からエンプラに至るまで幅広く取り扱っている。再生プラスチック原料のラインナップにはプレコンシューマー材料のみならずポストコンシューマー材料もあり、GRS認証を取得しているものや海洋プラスチック由来のものも含まれている。またグローバル人材も多く活躍しており、日本国内で調達が難しい再生プラスチック原料であっても、海外からの調達も可能で、ユーザーの希望に合わせてコンパウンドして供給することも行っている。近年ではこれまで蓄積してきた知見やネットワークを活用することで、循環型スキームの構築支援や環境配慮型製品の企画・販売なども手掛けている。更に2023年10月には新たな拠点を開設し、プラスチックの資源循環を促進するためのデータベースの構築やダッシュボードの開発にも取り組むことを予定している。

「環プラ®︎」は一社では実現できず、パートナーシップによる共創によってはじめて実現する。2050年にはカーボンバジェットに占めるプラスチック経済の割合が15%にのぼると予想される中、業界全体としての「環プラ®︎」の推進には一刻の猶予も許されない状況にある。

参考資料

・みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社「プラスチック条約策定に向けた国際的な議論の潮流」 https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/report/2023/plastic2305_01.html

・独立行政法人日本貿易振興機構「欧州委、循環性の高い自動車設計・生産・廃車に向けた規則案を発表」 https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/07/02dc9a583937f011.html



  1. 日本の更なる「環プラ®︎ 」の推進に向けて【前編】
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大野 賢(おおの さとし)

株式会社パンテック マーケティング部 部長

<専門分野>プラスチックリサイクル/マーケティング/サーキュラーエコノミー
<紹介文>マーケティング戦略の立案から実行のみならず、「で、おわらせないPROJECT」やアップサイクルブランド「ReTA BASE」をはじめ、プラスチックの資源循環を促す共創型プロジェクトにも多数携わる。