試験的に開始された特定8都市の取引市場

2011年10月、北京・天津・上海・重慶・湖北・広東・深センの7つの省・市が、先行して炭素排出権取引市場の試験都市として選定されました。(2016年12月に福建が追加)
2013年にはオンライン取引が始まり、試験都市企業のGHG排出量削減は効果的に進捗し、全国統一取引市場の構築に向けた、制度試行・人材育成・経験蓄積などの仕組み作りや、システム基盤を固めることも実現しました。

各試験都市では、独自で管理制度や取引制度の構築を行ない、現在20産業(発電、鉄鋼、セメント等)以上を網羅し、導入企業は3,000社以上、累計取引量は5億トンCO2eq(二酸化炭素換算)、累計取引額は115億人民元の市場規模に成長しました。
また各試験都市の取引市場では、売買承諾期限である毎年6月・7月に取引が集中するという興味深い特徴があります。

その後展開された「全国炭素排出権取引市場」

2021年7月16日、上海と武漢で「全国炭素排出権取引市場」が正式始動しました。対象市場となったのは「発電産業」であり、開始時点で2,000社以上の発電企業が重点排出企業として認定され、2022年12月末時点で累計取引量2億2,300万トンCO2eq、累計取引額は101億2,100万人民元の市場規模となっています。

2022年度の取引価格の推移を見ると、年初は59.64元/トンCO2eqでスタートし、日々の終値は年間を通じて55-62元/トンCO2eqの間でわずかな変動に留まり、年間平均取引価格は55.30元/トンCO2eqとなっています。

現在、全国統一取引市場には発電産業しか導入されていませんが、中国の発電産業におけるGHG排出量は年間45億トンもあり、世界最大規模の炭素市場となっています。

「炭素排出権取引管理方法(試行)」について

炭素排出権取引管理方法(試行)」は、全国炭素排出権取引市場の取引ルールを元に「生態環境部」が2020年12月25日に策定し、翌年2月1日より施行した法令で、以下の要点が定められています。

1.対象企業は「発電企業であり、年間のGHG排出量が二酸化炭素換算で2.6万トン以上」と定義付ける。

2.総排出枠は、生態環境部本部が「経済成長・産業再編・エネルギー構造の最適化・大気汚染物質排出の協調制御など」の要素を考慮し決定する。
 地方の生態環境当局は、区域内を「重点排出企業」を選定し、総排出枠を無償で配分し、対象企業へ書面で通達しなければならない。
 区域内で登録された企業は、地方当局より本部への報告し、一般公開しなければならない。

3.全国取引市場の対象企業は、試験都市取引市場への参加はできない。また取引を行なう為に、国家炭素排出権登録システムにて口座を開設しなければならない。

4.対象企業は、生態環境部が規定している「GHG排出量算定と報告の技術基準」に従って、前年度の排出報告書を作成し、毎年3月31日までに主管の生態環境当局に報告しなければならない。

5.対象企業が超過分の排出枠を全額かつ期限内に支払わない場合、主管の地方生態環境当局は、期限内の是正を命じ、さらに2万元以上3万元以下の罰金を科す。
期限内に是正しない場合、翌年の炭素排出枠を同額削減するものとする。

今後の規模拡大への期待

炭素排出権取引市場の立ち上げは、中国の「カーボンピークアウト」と「カーボンニュートラル」を達成するための中核的な政策手段の一つであり、市場メカニズムを利用して、高エネルギー消費企業に、技術革新などによるGHG排出量の削減を強制するきっかけとなっています。

近い将来、取引市場では参入企業の数が初期の2,038社から1万社以上に増え、排出権割当量は100億トンCO2eqに達し、EUの排出権割当総量の3倍以上になると予想されており、市場規模に関しては炭素先物やオプション市場、取引製品の拡充と整備により、1兆元以上に達するとも言われています。

また全国統一取引市場には、現在発電企業しか参入していませんが、化学や電機電子などの産業も順次取り入れられる予定となっており、今後も大きな発展が期待されます。
引き続き関連政策の変更や市場の変革に注視し、皆様へ最新の政策情報をお届けしたいと思います。

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