バイオマスプラスチックの原資

バイオマスプラスチックを製造するための原料は、石油や天然ガスなどの化石資源ではない「バイオマス」(有機資源、代表的には植物)です。
バイオマス原料はさまざまな産業で利用が検討され、進化していますが、プラスチックの原料として活用できるのは「グルコース(糖)」「「ひまし油」という、いわゆる「第一世代」のバイオマスがいまだに主流です。
バイオマスプラスチックの世代定義については、環境省 プラスチック資源循環戦略小委員会(第2回)での、日本バイオプラスチック協会発行資料を参考にしています。
日本バイオプラスチック協会.「中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環戦略小委員会(第2回) 議事次第・配付資料」,参考_2023.11.16.URLhttps://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-02b.html

このコラムではグルコース、ひまし油をそれぞれ基点とする「バイオマスプラスチック」の製造方法について解説していきます。

グルコースを基点とするバイオマスプラスチックの製造工程

グルコースは、ブドウ糖とも呼ばれる六炭糖(Cが6個)の単糖で、炭水化物を加水分解することによって得られるほか、「血糖」として動物の血液中を循環しています。運動や飲酒で水分が奪われた際の回復手段の一つとして、ブドウ糖溶液の点滴を受けられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

グルコースは非可食のサトウキビ、ビート、とうもろこしなどを精製、糖化して得られます。
とうもろこしは単糖類のため、比較的効率よくグルコースを得ることができますが、サトウキビとビートは六炭糖と五炭糖が組み合わさった二糖類であるため、プラスチックの原料とならない五炭糖のフルクトースを排除する必要があります。この作業をせずに二糖類のままで発酵などのプラスチック生成処理を行なうと、発酵の際にフルクトースが障害となって、発酵の収率が落ちてしまいます。
二糖類における課題に対しては、(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)が開発した「RITE Bioprocess®」を用いて、Green Earth 研究所により実用化の検討が行なわれています。
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE).「増殖非依存型バイオプロセス」,参照_2023.11.16.https://gei.co.jp/ja/technology.html#Technology

画像提供:P.M.アドバイザー


グルコースを基点としたバイオマスプラスチックの系統図を以下に示します。
図の中で白地の化学品は「化石資源由来」の化学品を示しており、うす緑地の化学品は「バイオマスベース」の化学品を示しています。最終製品(プラスチック)に付記している数値は「バイオマス度」を示しています。
図でわかるように、グルコース起点であっても発酵酵母を変えることにより、様々なバイオマスプラスチックを生成することができます。

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ひまし油を基点とするバイオマスプラスチックの製造工程

ひまし油を基点とするバイオマスプラスチックのほとんどはポリアミドで、PA11、PA610、PA1010、PA1012、PA10Tなどが以前から量産されています。
これらの系統図を以下に示します。
この中でPA11は、ARKEMA社により70年以上の市場実績があり、自動車の排出ガス規制システムやエアブレーキチューブではスタンダードな材料になっています。
PA11を含め、バイオマスポリアミドは自動車部品の用途に幅広く展開されています。

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世界の主なバイオマスプラスチックに関する規格

バイオマスプラスチックの場合、リサイクル材以上に原資の調達がブラックボックスであるため、第三者認証による運用が広まってきています。
バイオマスプラスチックに関する第三者認証としては、「ISCC PLUS」「REDCert2」「RSB」などがあります。次のコラムからは、これら第三者認証について、認証団体、認証基準などを一つずつ解説していきます。