日本のごみ処理の歴史

都会ではごみの焼却が当たり前ですが、昔はごみを埋立処分していました。東京都の「夢の島」はその象徴的な存在であり、ごみの島として有名でした。夢の島は東京湾を埋め立てて作られた人工島で、1938年に作られました。高度経済成長期になると国民の生活が豊かになり、1957年からゴミの埋め立て処分場として使われ始めました。
東京で出たごみの7割が夢の島に集まり、夢の島はゴミで覆われました。ごみから発生したハエの大群による近隣住民への被害が出る事態になり、1971年に当時の東京都知事が「ごみ戦争」を宣言し、各区で発生したごみは区内で処分することを約束しました。

1963年制定の「生活環境施設整備緊急措置法」のなかで策定された「生活環境施設整備五カ年計画」において、ごみの焼却施設の整備方針が定められ、各都市でごみ焼却施設の導入が促進されました。
一時期、ごみ焼却施設からのダイオキシンの発生が問題になりましたが、技術開発によりダイオキシンの発生量は大幅に減り、2011年の廃棄物焼却施設からのダイオキシン類排出量は1997年に比べ 約99% 減少しました。

世界の多くの国では、今でもごみ処理は埋立が主流ですが、日本は世界の中で群を抜いて焼却炉の数が多いです。環境省資料(2021年)によると日本の焼却炉数は 1,067 であり、ごみのリサイクル率は 20% に満ちません。人口50万人以上の都市で最もリサイクル率が高いのが千葉市ですが、それでも 30% 程にすぎません。

大崎町の取り組み

ごみリサイクル率日本一を14回獲得(うち12回は12年連続)、リサイクル率「83.1%」(2020年度)を誇る、鹿児島県大崎町を視察しました。
大崎町は人口13,000人余りで、農業が主幹産業です。大崎町には焼却施設がなく、近隣の町と焼却炉を設置することを計画しましたが、焼却炉が高価格であることに加え、維持費による財政負担も大きいため見送られました。
一方で残余年数が逼迫するごみの埋立処分場を延命化させるため、町をあげてリサイクルの取組むことになりました。取組み前の1998年は埋立ごみ量が 4,382トン であり、ごみのほとんどが埋立処分されていましたが、2017年には埋立ごみが 708トン まで減りました(約84%削減)。大崎町のGHG(Greenhouse Gas)排出量(Greenhouse Gas)は、同規模でごみを焼却処理する自治体と比べて4割ほど少ないそうです。
大崎町ではごみの分別が細かく決まっており、当初はシステム構築や町民の教育が大変であったとのことです。今では軌道に乗り、リサイクル率日本一が町民の誇りになっていると感じました。大崎町はすべての資源がリユース、リサイクルされて循環する「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」を掲げ、2030年までに「使い捨て容器の完全撤廃・脱プラスチック」を実現することを目指しています。

画像提供:宇山教授

「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」

リサイクル率日本一の鍵は、生ごみと農業廃棄物(バイオマス)の堆肥化にあります。これにより発生するごみの半分以上がリサイクルされます。農村部特有のこととはいえ、資源循環に求められる根本を突き付けられた思いでした。堆肥工場で生産される堆肥は農家へ安価で販売され、好評を得ています。分別をしっかりとしているため、堆肥中の不純物(プラごみ、金属ごみ)は極めて少ないのです。尚、堆肥の生産量が限定されるため、地域外には販売されていません。

画像提供:宇山教授


生ごみ以外は分別されてリサイクルセンターに運ばれます。再資源化できるものは、手作業を含めて細かく回収されます。プラごみは近隣の製鉄施設に運ばれ、コークス炉にて鉄の生産に利用されています。最終的に残ったごみは埋立処分されます。埋立処分場は通常、一般人が立ち入れないのですが、大崎町では見学させてもらえました。埋立ごみに生ごみが含まれないので悪臭を感じませんでした。

画像提供:宇山教授

資源循環型社会に向けた課題

参考までに、隣国の韓国のおけるごみ処理の現状をお伝えします。韓国は日本と同様に国土が狭いですが、ごみの焼却率が 25% と低いです。韓国では1997年に生ごみの分別が義務化され、2005年にはごみの埋立が禁止されました。
2011年からは「スマート生ごみ回収箱」が設置され、生ごみの処分費用が月極で決済されます。このシステムにより生ごみが大幅に削減され、家庭ごみのリサイクル率は「86%」に達します。

日本でも生ごみを別途回収するシステムを、焼却によるごみ処理と並列できないのでしょうか。ゼロカーボン社会の達成にも関連して、今後の資源循環に向けた重要な社会課題になると思われます。

大阪大学 宇山教授と考える
「プラスチックのこれまでとこれから」全6編+番外編

  1. 1.どうしてプラスチックが使われているの?
  2. 2.プラスチックの問題と課題
  3. 3.課題解決技術(1)生分解性プラスチック
  4. 4.課題解決技術(2)バイオマスプラスチック
  5. 5.課題解決技術(3)ケミカルリサイクル
  6. 6.プラスチック資源が循環する社会に向けて【完】
  7. <番外編>

  8. ■ ゼロカーボン社会とごみ処理
  9. ■ ベトナムにおける廃プラスチック活用の現状
  10. ■ プラスチックごみに関する小学生向けの環境教育

profile

宇山 浩(うやま ひろし)

大阪大学 工学研究科

応用化学専攻 工学博士

        

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