マテリアルリサイクル

ベトナムの首都・ハノイに隣接するフンイエン省にあるミンカイ村は、世界中からプラスチックごみが集まる「プラスチック村」として知られています。ミンカイ村を訪れると、道の両端や空き地には沢山のプラスチックごみが見られます(図1)。

図1 画像提供:宇山教授


一部はきちんとパッキングされており、ここでリサイクルがビジネス化されていることが推察されます。比較的きれいな透明フィルムの処理作業が行なわれている現場もありました。多くが小さな工場であり、家内工業的に経営されているようです。
一つの工場を見学しました。中では主にシート・フィルム状のプラスチックごみの処理が行われていました(図2)。

図2 画像提供:宇山教授


プラスチックごみを裁断機で小さくし(①)、水で洗浄し(②)、それを加熱して溶かします(③)。それを押出機に入れ(④)、押し出されたものを水冷し(⑤)、切断することで黒色のペレット(⑥、⑦)が得られます。
これをどのように再利用しているか、を聞くことはできませんでしたが、低品質であることから用途は限定されると思われます。

一部の工場の前には新品のプラスチックペレットの袋が積み上げられており、回収プラスチックとのブレンドが行なわれているのかもしれません。
また、ミンカイ村におけるこのようなリサイクル工場の数は増える傾向とのことです。懸念されることは地域環境への影響です。工場内には換気設備が無く、プラスチックごみの加熱によるものと推測される悪臭が感じられました。建物からは黒い煙が出ており、工場近くの川には多くのプラスチックごみが見られました。

サーマルリサイクル

別の機会には日本企業との合弁企業のRPF(Refuse derived paper and plastics densified fuel)の工場を見学しました。日本企業の優れた技術やノウハウがベトナム企業に提供されています。
RPFはプラスチックごみの減容化技術に位置付けられます。RPFの発熱量が大きく、石炭と同等以上の熱量が得られるため、工場における燃料として優れています。RPFの普及は廃棄物の削減、リサイクルの推進につながり、CO2排出量も減ります。燃料としてみると石油に含まれる硫黄分が少ないことから、SO2排出量が著しく低減できる利点もあります。

先のプラスチックリサイクル工場と異なり、分別されていない様々なプラスチックごみからRPFが作られていました(図3)。設備の規模が大きく、生産規模は2トン/時間で年間1.4万トンのRPFを製造できるとのことでした。この工場ではRPFのみならず、プラスチックを裁断したものを近隣の工場に燃料として出荷していました。
一方でこの工場も環境対策は十分とは言えず、工場内に換気設備が無く、臭気が感じられました。プラスチックごみのRPFへの変換によるサーマルリサイクルは資源循環につながらず、2050年脱炭素社会の達成には不向きですが、過渡的にはプラスチックごみの利用技術として有効であり、CO2排出削減には貢献します。

図3 画像提供:宇山教授

ベトナムのプラスチックに関する状況

世界のプラスチックの生産量は4.6億トンであり、排出されるプラスチックごみは3.5億トンに達します(2019年)。
ベトナムのプラスチックごみは年間310万トンであり、リサイクル率は約20%です。インフラが不足しているために約70%が埋立て処理されており、リサイクルできる量に限度があります。また、収集や分別が不十分であり、急速な経済発展の中でプラスチックの処理コストが課題とされます。

ベトナム政府はサーキュラーエコノミーに熱心に取り組んでおり、プラスチック問題に関する2025年に達成する数値目標を発表しています。プラスチック廃棄物の85%を再利用・リサイクル、商業施設におけるシングルユースのプラスチック包装の全てを環境調和型プラスチックに代替、リゾートや観光地における非生分解性プラスチック包装や使い捨て製品の禁止、海洋プラスチックごみの50%削減が掲げられています。これらの目標を示すことでベトナム国民のプラスチック問題に対する意識の高まりを目指しています。
日本でも政府からこのような具体的な数値目標が提示され、環境問題への取組みが一層推進されることを願っています。

大阪大学 宇山教授と考える
「プラスチックのこれまでとこれから」全6編+番外編

  1. 1.どうしてプラスチックが使われているの?
  2. 2.プラスチックの問題と課題
  3. 3.課題解決技術(1)生分解性プラスチック
  4. 4.課題解決技術(2)バイオマスプラスチック
  5. 5.課題解決技術(3)ケミカルリサイクル
  6. 6.プラスチック資源が循環する社会に向けて【完】
  7. <番外編>

  8. ■ ゼロカーボン社会とごみ処理
  9. ■ ベトナムにおける廃プラスチック活用の現状
  10. ■ プラスチックごみに関する小学生向けの環境教育

profile

宇山 浩(うやま ひろし)

大阪大学 工学研究科

応用化学専攻 工学博士

        

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