若い世代に対するプラごみ問題へのアプローチ

プラスチック問題は、今や重要な社会課題となっています。マイクロプラスチックに関する多くの報道により、一般市民にもプラスチックの安全性に対する危惧が高まっています。
一部の自治体では熱心な取組みが行われていますが、プラスチックのリサイクルに対する市民の意識は未だ低いのが現状です。海岸に行くと、多くのプラスチックごみが散見されます。環境意識の高い日本であっても海岸の汚染状況は放置できない状況です。

子供たちに対してプラスチック問題を座学だけで理解してもらうことは難しく、何らかの体験を含めた学習を企画しました。私の研究室では、開発したプラスチックのサンプルの物性評価のために、熱プレスを使ってシートやフィルムを作製します。簡単に作れるので企業でもよく使われると思います。
プラスチックの熱可塑性を利用することで、プラスチックごみを溶かしてプレスすればシートが簡単にできることは容易に類推できます。研究室に小学生を招いて熱プレス工程を見せることで、プラスチック製品の製造方法が理解できるのでは、と考えました。
また、カラフルなごみを断片化し、熱プレス工程でプラスチックがいったん溶けることで予想外の模様が生み出され、子供たちの興味を高められます。

環境教育の教材開発

プラスチックごみから、オシャレな、あるいは可愛いアップサイクル品を作ることを目指しました。教材として具体的な製品イメージがあったほうが良いとのご指摘があり、コースターを提案されました。
通常の研究で作製するシートやフィルムの厚みは0.5ミリ以下であり、コースターには薄すぎます。また、熱プレスで用いる型は物性評価サンプル用に準備したものであり、研究室では正方形のものしかありませんでした。そこで2ミリの円形型を新たに準備しました。

画像提供:宇山教授



最初はPE・PP・PS・ABSといった汎用プラスチックのみならず、環境教育を意図してPLA(ポリ乳酸)やPBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)を用いて、コースターに適したプラスチックと成形条件を探索しました。熱可塑性プラスチックならどれでも作れるであろう、との安易な予想と異なり、厚みのあるコースターを熱プレスで作るのは容易でなく、反ってしまうなど色々な課題が見つかりました。 また、プラスチックごみをベースに使いたく、安定的に入手できるものとして比較的汚れの少ない成形現場でのプラスチック廃材が好適と考えました。OEMメーカーから健康食品用途等のブローパック(ポリエチレン)の製造時に発生する廃材の有効利用について相談を受けており、多くの色の廃材が入手できることもあり、これを活用することにしました。
コースターのベースとしてPBATも使いやすく、生分解性プラスチックの教育教材として利用できるかもしれません。また、熱プレス機で簡単にできる薄めのシートはスマホ用インナーシートとして使えます。プラスチックごみを小さく切ってプレスすると思いがけない模様ができます。

子供たちのコースター作り体験

2023年8月21日に吹田市の後援を得て、小学生対象の体験学習を実施しました。小学生以下の子供たち20人と保護者が大阪大学工学研究科に来られました。
ブローパックの色とりどりの成形廃材を予め使いやすいように切断しておき、子供たちはこれを型に好きなように置き、コースターのベースを準備します。各自でプラスチックごみを持参しており、それを切って、トッピングして模様を作りました。
続いて研究室に移動し、熱プレスの装置の説明を聞き、コースターができるのを待ちました。約10分で型からコースターを取り出し、完成です。
当日の様子をyoutubeで公開しています。是非ご覧になってください。


自分が準備した溶かす前のものと得られたコースターが大きく異なり、子供たちは大変喜びました。そして『もう1枚作りたい』と希望する子が大半でした。希望者には2枚のコースターを作ってもらい、全員が笑顔で帰路につきました。

コースター作りの空き時間には研究室の大学院生がプラスチックに関する教材やクイズを用意し、プラスチックに関する学習の場を設けました。また、リコー社の「樹脂判別ハンディセンサー」を子供たちに使ってもらい、プラスチックに多くの種類があることを学びました。 今回のイベントを通じ、子供たちがプラスチックの性質や製品の作り方を少しでも理解できたことを願っています。

画像提供:宇山教授



型から外して自分の作ったコースターを見たときの子供たちの輝く目と笑顔、これをプラスチックの未来につなげたい、と強い感じました。プラスチックの良さを知っているからこそできる環境教育の教材開発を通じて、今後も地球環境を守る活動を継続したいと考えています。

大阪大学 宇山教授と考える
「プラスチックのこれまでとこれから」全6編+番外編

  1. 1.どうしてプラスチックが使われているの?
  2. 2.プラスチックの問題と課題
  3. 3.課題解決技術(1)生分解性プラスチック
  4. 4.課題解決技術(2)バイオマスプラスチック
  5. 5.課題解決技術(3)ケミカルリサイクル
  6. 6.プラスチック資源が循環する社会に向けて【完】
  7. <番外編>

  8. ■ ゼロカーボン社会とごみ処理
  9. ■ ベトナムにおける廃プラスチック活用の現状
  10. ■ プラスチックごみに関する小学生向けの環境教育