公開日:2023/11/09

最終更新日:2023/11/10

サーキュラーエコノミー:リスクを機会に

「サーキュラーエコノミー」の必要性は近年ますます高まっています。
資源調達リスクや温室効果ガス(GHG)排出量への対応など企業活動における負担が増す一方、これらを成長機会としてとらえる企業も現れ始めています。

サーキュラーエコノミーに関するリスクが増大

 企業にとって、サーキュラーエコノミーに関するリスクは増しています。
例えば、新興国の需要拡大や相次ぐ大型鉱山の閉鎖による供給不足などを背景に、資源価格の上昇や変動が激しくなっています(資源調達リスク)。また、Scope3(*1)も含めたGHG排出量の開示基準の整備が進む中では、CO2 排出削減効果が高い循環資源の活用は急務となっています(GHG排出量・環境リスク)。
さらに、EUプラスチック税のように、日本国内よりも厳しい制度や規制が導入された地域や国では、これらがビジネス上の制約となることもあります(規制リスク)。
 こうしたサーキュラーエコノミーに起因するリスクへの対応が遅れることは、ビジネスにおいてはコスト増・売上減などの直接的な損害や機会損失につながります。
また、グローバル市場におけるシェアを失うことや、企業価値の棄損といった長期的なダメージを負うことにもつながりかねません。これらのリスク回避のためには、市場・規制動向のいち早い把握と先んじた取り組みが求められます。


(*1)Scope3:事業者が自ら排出している温室効果ガス(Scope1、Scope2)以外の、事業者の活動に関連するサプライヤーなど他社の温室効果ガスの排出量

サーキュラー経営へのシフト

多くの企業は、リスクへの対応としてサーキュラーエコノミーへの対応に取り組んでいます。それらは、「再生可能原材料の優先的な使用」、「製品使用の最大化」、「残渣物および廃棄物の回収」の3つの大原則に基づく、10個の循環型戦略のバリューチェーンに整理されます(図1)。

図1 サーキュラリティの原則と戦略
画像提供:PwCアドバイザリー合同会社


 また、前述のリスクを機会ととらえ、サーキュラーエコノミー型のビジネスモデル構築といった先進的な取り組みを進める企業もあります。
主な取り組みは以下のとおりです。
■ リサイクル材利用によるサステナブルブランド構築
■ 顧客取引先のScope3におけるGHG排出削減効果に基づいた評価・取引拡大
■ バージン材(*2)依存からの脱却による将来の価格高騰リスクからの回避・安定調達の確保
■ 廃棄物の再利用による費用削減


(*2)バージン材:新品の素材。再生材よりも品質の安定した製品を製造しやすいが、一般的にはGHG排出量などの環境負荷が高い

他社とのアライアンスやM&Aによる新規事業参入

 自社の既存事業をサーキュラーエコノミー型のビジネスモデルへシフトさせる取り組みに加え、他社とのアライアンスやM&Aによるパートナー企業との連携を通じて、新規事業としてサーキュラーエコノミー関連事業に参入する動きもあります。
例えば、石油会社が化学会社とともに、廃プラスチックを活用したケミカルリサイクル(*3)事業に新たな機会を見出し取り組んでいる事例や、エネルギー会社が資源循環事業を展開するリサイクル会社の株式を取得し、M&Aを実施した事例などがあります。
これらの企業は、他社との連携による技術獲得やバリューチェーンの補完を行うことで、自社だけでは難しい事業へ挑戦しています。


(*3) ケミカルリサイクル:廃棄物に化学的な処理を施し、他の物質に転換してから再利用すること。 具体的には、廃プラスチックを油化やガス化して、化学工業原料する方法などがある

リスクを機会に

 企業活動におけるサーキュラーエコノミーに関するリスクが増大する中、先進的な企業はこのリスクを機会と捉え、サーキュラーエコノミー型のビジネスモデルの構築に取り組んでいます。
さらに、M&Aや企業間連携を効果的に取り入れながら、新たな事業創出に挑戦している企業もみられます。
サーキュラーエコノミーに向けた変化に対応するためには、より広い視野をもって事業戦略を検討することで、自社の成長の機会につなげることが求められています。
 本記事が貴社のリスクを機会と変えるきっかけの一助となれば幸いです。
【関連サイト】
さらにご興味がある方は、下記のサイトを是非ご覧ください。
【エネルギー業界における資源循環ビジネスへの挑戦】―地域課題のソリューションプロバイダーとしての新たな取り組み―
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/newsletters/electricity/20230531.html

「サーキュラー経営」を実現するM&A戦略~4つのステップによるトランスフォーメーションの実現~
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/ma-circular-management-report2022.html

サステナビリティ経営へのシフトとM&Aの関係(2022年版)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/sustainability-ma-report.html

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profile

末廣 多恵子

<所属>PwCアドバイザリー合同会社、マネージャー  
<専門分野>資源循環/廃棄物処理・リサイクル、ESG DD・PMI、官民パートナーシップ

<紹介文>資源循環事業に係る戦略策定、ディール、実行支援業務やESGデューディリジェンス・PMIなど、ESGに関連する案件に幅広く携わる。 博士、技術士(衛生工学)