公開日:2024/04/22

最終更新日:2024/04/19

自動車のカーボンニュートラルと、難燃に関わる規格・規制

持続可能な社会の中で、自動車は引き続き重要な役割を担うことになるが、自動運転、CO2低減、安全運転サポート、リサイクル等、課題は多くある。その中でも、CO2低減に関わるカーボンニュートラル(以下、CN)施策は、使用、物流、製造、エネルギー供給の4分野で実施されており、使用においては、ガソリンの燃焼を主とする、ユーザーの車両利用による排出割合が約8割と突出して多いため、電池利用の拡大は最重要課題となっている。

自動車の「ネットゼロ」に向けた取り組み

CNと同様の考え方で、「ネットゼロ」という概念がある。その中の目標設定イニシアチブである「SBT」は、ネットゼロに向けた目標を、科学に基づいて設定する際の、世界的な基準となっている。
多くの企業が2030 年までに排出量を半減し、2050 年までにネットゼロ達成をコミットするために、5~10年先の削減目標を立て、取り組んでいるが、CO2削減の具体的な手段として、車両分野では、軽量化、異種接合、電池、CCS・CCUS等の技術がある。

画像提供:一般社団法人 難燃材料研究会(SFRM)

電池の難燃性を測る試験

ネットゼロのための重要な手段である車両用電池の環境試験の中に「燃焼試験」がある。そのため難燃材料が重要な技術として関連してくるのだが、現在下記の2つの試験が注目されている。

(1)バッテリー式電気自動車に係る国連協定規則(UN-ECE R100.02 Part2、通称;燃えさし、external flame)

(2)Electric Vehicles Safety Global Technical Regulation(GTR 5.4.12 Thermal propagation、通称;internal hot gas)

各国の法制状況と試験項目が以下の図となる。

画像提供:一般社団法人 難燃材料研究会(SFRM)


横軸の試験項目に、燃えさし(external flame)とinternal hot gasの2種類があるが、現在の UN-ECE R100.02 Part2 は、燃えさし試験のみだが、過充電による internal hot gas 試験と燃えさし試験の併用が今後予定されており、中国の GB規格と GTR 5.4.12 に記載されている 。
また、上記2試験以外にも internal hot gas の簡易試験的な位置づけで、UL 2596(Electric Vehicle Battery Enclosure Material Safety)があり、バッテリーエンクロージャー材料の熱的、機械的性能を評価するための試験方法となる。

リサイクルを推進する規制

リサイクルに関しては課題が多い。欧州委員会は、廃棄物削減に向けて設定している再使用やリサイクルに関する2025年目標に関して、過半数のEU加盟国がいずれかの目標を達成しない恐れがあるとする報告書を発表した。
この影響かどうかは不明だが、特に自動車産業に向けてリサイクル促進に関する法制化が進んでいる。
その代表的な事例として、自動車設計・廃車(End-of-Life Vehicles:ELV)管理における持続可能性要件に関する規則がある。この規則自体は20年以上前に施行されているが、上記の現状を受け、今も改正の最中にあり、以下にその概要を記す。

(1)部品の再利用や回収を促進する車両設計の推進
(2)新車生産に必要なプラスチックの25%以上の再生プラスチックの利用(内、廃車由来25%)
(3)廃車由来の再生材の増産、品質・価値の向上
(4)廃車回収の増加
(5)事業者間の廃車に係る公正なコスト負担配分などに重点を置く

改正案が社会実装されていくことで、2035年までに1年当たり1,230万トンの二酸化炭素(CO2)の排出削減や、廃車から540万トンの原材料の価値が生まれるほか、レアアース等の重要原材料の再利用の増加と域外への依存の低減、長期的にはエネルギー節約といった環境、経済面での効果が期待されている。

需要増加が見込まれる難燃技術の支援

CO2低減は、製品の効率化手段の一つであり、品質特性の一項目に過ぎない。今はクローズアップされているので、その効果をうまく利用し、日本製品の優位性構築に用いるのが我々の当面の施策と考える。
一方で、難燃材料市場は、社会基盤材料として各分野に幅広く使用されている。E&Eの消耗品からインフラまで、それぞれの難燃規格に保護されており、需要は確保されている。
今後難燃材料の需要増加が見込まれる分野の一つに、車のEV化に伴う電池周辺樹脂部品の難燃化がある。

SFRMは、主に下流産業での難燃技術支援を中心とした活動を行なっており、国際学会、国内シンポジウム、教育講座などを開講している。
近年は、EV部材を中心としたセミナーを開講しており、興味のある方は当研究会のwebサイト(https://sfrm.or.jp/)を参照いただきたい。

画像提供:一般社団法人 難燃材料研究会(SFRM)

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大越 雅之

一般社団法人 難燃材料研究会(SFRM)
<専門分野>高分子化学、燃焼
SFRMは、EV部材を中心としたセミナーを開講しており、URL(https://sfrm.or.jp/)より参照願う。