公開日:2024/04/10

最終更新日:2024/04/15

「欧州電池規則」がもたらすインパクト①
-概要とCFPの算定要求-

「欧州電池規則」(以下、同規則)は、EUの新しい電池規則として、2023年8月17日に施行され、バッテリー製品のライフサイクル全体を規定しています。
2025年2月18日には、対象企業は、カーボンフットプリント(CFP)に対応する必要があります。(※今後公表される電池規則細則如何で変更の可能性あり)
同規則は、EU域内で販売される全てのバッテリーに適用されますが、この規則に対応するために残された時間は、多くはありません。自動車業界では、この規則に焦点を当てた議論が、現在、活発に展開されています。

欧州の電動車販売動向

同規則では、「EU域内で生産されたか輸入されたかにかかわらず、域内で上市または使用されるすべての種類の電池に適用される」とあります。
EU域内の電動車販売動向を見ると、バッテリー式電気自動車(BEV)の台数は増加し、年間100万台を超え、総数内構成比も10%を超えました。ドイツ、フランス、スウェーデンがBEVの販売数でトップ3を占めています。
また、他の電動車では、ハイブリッド式電気自動車(HEV)とプライグインハイブリッド車(PHEV)も増加しており、BEV・HEV・PHEVの合計が総数の40%を超えています。
これら3つの電動車と、燃料電池自動車(FCEV)を加えて4種が同規則の対象となります。

出典: 欧州自動車工業会(ACEA)



一方、ピュア内燃機関車であるガソリン車とディーゼル車の合計は約490万台で、未だ市場の大きなシェアを占めていますが、前年比で減少しています。
欧州の自動車、とりわけ内燃機関車をめぐる方針の揺れ動きにより、今後の販売動向は変わってきますが、その話題は別の記事に譲り、ここでは割愛します。

出典:JETRO


「欧州電池規則」のアウトライン

改めて同規則は、BEV・HEV・PHEV・FCEVに関する規制であり、環境への影響を低減し、内部市場の効率的な機能を促進することを目的としています。
同規則は、製品のライフサイクル全体を対象とし、温室効果ガス排出量の表示義務や責任ある材料調達、リサイクルに関する規制を含んでいます。
欧州の産業競争力向上やカーボンニュートラル達成に向けた戦略アイテムとして位置付けられており、欧州の思惑・期待が反映されています。
また、EUの製品規制として、初めて製造から廃棄までの全プロセスを規制するものであり、電池の欧州域内生産と循環を促進することを目指しています。

同規則の各章のタイトルを抜粋すると以下の通りです。

<CHAPTER>
1. General provisions 総則
2. Sustainability and safety requirements 持続可能性と安全性の要件
3. Labelling, marking and information requirements ラベリング、マーキングと情報要件
4. Conformity of batteries バッテリーの適合性
5. Notification of conformity assessment bodies 適合性評価機関の届出
6. Obligations of economic operators other than the obligations in Chapters VII and VIII 第7章・第8章の義務以外の経済事業者の義務
7. Obligations of economic operators as regards battery due diligence policies バッテリーデューディリジェンス方針に関する経済事業者の義務
8. Management of waste batteries 廃棄バッテリーの管理
9. Digital battery passport デジタルバッテリーパスポート
10. Union market surveillance and Union safeguard procedures EUの市場監視とセーフガード手続き
11. Green public procurement and procedure for amending restrictions on substancesグリーン公共調達と物質規制変更手続き
12. Delegated powers and committee procedure 権限委譲と委員会手続き
13. Amendments 修正
14. Final provisions 最終規定

出典: 欧州電池規則を基にゼロボード作成


「欧州電池規則」で求められるCFP

同規則は、前の章で紹介した14のCHAPTERと、それらに連なる96の条項からなるボリュームのため、全てを取り上げることは出来ませんが、今回は、自動車業界関係者の方々との議論で、特に話題となるCFPについて取り上げたいと思います。
該当箇所は、CHAPTER1の第7条「Carbon footprint of electric vehicle batteries, rechargeable industrial batteries and LMT batteries」と、附属書の2「ANNEX II CARBON FOOTPRINT」等となります。

ポイントを列挙すると以下の通りです。
・ スタートは2025年2月18日から
・ CFPの算定は、製品環境フットプリントカテゴリールール(PEFCR)に準拠する
・ 各ライフサイクル(原材料、製造、流通、使用後)において算出する
・ 使用段階はメーカーの直接的影響下にないため計算から除外する
・ 第三者機関によるCFP値の認証が必要
・ 2026年8月18日からはCFP性能クラスの記載
・ 2028年2月18日からは設定されたCFPの最大閾値を下回る必要あり。NGの場合EU域内での販売ができない

出典: 欧州電池規則を基に(株)ゼロボード作成


迫る適用期限、次回は日本での対応策を紹介

欧州で電動車を販売する自動車OEM各社は、蓄電池サプライチェーン(SC)から情報を収集し、2025年2月18日までに対応する必要があります。車両輸送に時間がかかることや、CFPデータの集計に1年程必要なことから、迅速な対応が求められます。 しかしながら、目下、SC情報の収集が最大の難関であり、多くの企業は現在、CFPを算出出来ているとは言えません。 次回は、日本政府や自動車業界が進める「Ouranos Ecosystem」についても取り上げ、さらに詳しく掘り下げていきます。
<出所先>
欧州電池規則原文URL(参照:2023/9月)
欧州自動車工業会ACEAURL(参照:2023/9月)
日本自動車販売協会連合会(自販連)URL(参照:2023/9月)
全国軽自動車協会連合会(全軽自協)URL(参照:2023/9月)
JETRO地域・分析レポートURL(参照:2023/9月)
OROVEL Li-on Battery Gigafactories in Europe (January 202)

(株)ゼロボードの「欧州電池規則」シリーズ

  1. 1.「欧州電池規則」がもたらすインパクト①-概要とCFPの算定要求-
  2. 2.「欧州電池規則」がもたらすインパクト②- サプライチェーンを繋いだCFP算定 -
  3. 2.「欧州電池規則」がもたらすインパクト②- 上市までのプロセスと適合性評価 -
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profile

小野 泰司

<所属>株式会社ゼロボード 営業本部 本部長/Zeroboard(Thailand)Co.,Ltd. 取締役
<専門分野>自動車領域

<紹介文>トヨタ自動車にて新型車企画・労働組合副執行委員長・豊田前社長のトップサポート渉外チーム等経験。2022年7月より現職